第9話 束の間の休息 鬼殺しは人殺し?
鬼たちが目の前からいなくなり、再び奥の方で鬼のうめき声が聞こえてくるようになった。
「鐘の音とともに鬼が来たり引いたりしている。閻魔大王は7日間という猶予を与えていたが、この鐘の音を一区切りにしているかもしれないな。」
「確かに、確証はないけれどそう考えるのが妥当でしょうね。」
「”ボックス”」
そういうと、カイは床に転がっている針を拾い集めアイテムボックスの中にしまい始めた。
「一応俺らも拾っておくか、鬼にはかなり有効みたいだしな。」
4人がそれぞれ針を拾っているなか、ふとアイカが口を開いた。
「ねえ、そういえば、鬼って元々は人間だったんだよね。鬼を殺すことは人を殺すことにはならないのかな?」
「その可能性は俺も考えた。でも仮に鬼殺しを人殺しに含めるとすると、俺らはもうとっくに鬼になっていてもおかしくない。なのに俺らは人間のままだろう?」
「確かにね」
「すると、俺らが鬼にならない理由は二つ考えられる事になる。」
リュウは右手の指をピースの形からトゥースの形に変え、淡々と話し始めた。
「一つ目は鬼を生物としてカウントしない。この場合、鬼には生物を殺したという罪が適用されないため、いくら殺しても許されるということになる。」
「そして二つ目、地獄では生物の殺しが許されている。というのも、生前のおこないが裁きの対象であるならば、もうここでは判決が下されていて魂の状態が決まっている。即ち、罪という概念がない可能性があるという事。」
「うーん、聞いた感じだと後者の可能性が高いと思うんだけど?」
「ああ、俺もそう思う。だが、後者は前者よりも幾分たちが悪い。」
「なんで?別に鬼を殺すという観点で見れば私たちのやる事に大差無いと思うけど?」
「"鬼"を殺すという観点で見ればな。」
アイカは一瞬の沈黙の後、ハッと何かに気が付いたかのように目を見開いた
「そっか、もしかすると人同士の殺し合いも可能になるかもって事?」
「そう、その通り」
「でも、それって私たちに取ってメリットが無くない?」
「ああ確かにな普通の人間ならそう思うだろう、だがこの場所はなんせ地獄だ、心情の変化もあるだろうし、自爆を考えているかも知れない、何があるかわからないぞ」
「あんまりそんな事が起こると思いたくないなー、少なくとも生前善い行いをした人たちの集まりだろうしね。」
「俺もそう思いたいよ。」
リュウとアイカが物騒な話し合いをしている一方で、カイとミサキはスキルを使う練習をしていた。
「スキルに対して、消費するMPが明らかに多すぎる。なんとか効率よく鬼を倒していきたいな。とりあえず今の時間はHPとMPが全回復するようだし、今のうちにスキルを試しておこう。」
「”
カイが床に向かってそう唱えると、地面が以前より少し大きめの直方体型に隆起した。
「うん、少しはパワーアップしているようだが、まだこれでは鬼は倒せないか。」
「ねえ、そのスキルってさ、大きさを変えることは出来ないの?」
「大きさの上限と下限はあるが一応変えることは出来る。」
「じゃあ大量の鬼を攻撃する目的なら大きい方が良いけど、一体の鬼に攻撃するだけなら小さい方がダメージは大きいんじゃない?」
「まあ力の加わり方で見れば、当たる箇所の表面積が小さい方が良いのかもしれないがそもそもそんな小さい岩盤で攻撃したところで鬼の皮膚を傷つけることは出来ないと思う。」
「武器錬成で針と組み合わせてもダメ?」
「ああ、やはり小さい鉄柱のようなものを当ててもあまり効果はないな。それなら針のまま投げた方がダメージは通ると思う。」
「でも、それだと避けられちゃうよね。やっぱり不意打ちみたいな形で針を与えられるといいんだけどね。」
「うーん、不意打ち、地面隆起、錬成、、、」
カイは考えを巡らせ、ある一つの解を導き出した
「あっそうか、直方体を作ることばかり意識していたが鉄板のように薄くしてみるのはどうだろう?」
それを聞いてから少し間をおいてミサキもカイの考えを理解した
「なるほど、まず武器錬成で隆起させる岩盤と針を組み合わせてそれをギロチンみたいに下から突き上げるのね。」
「そう、それを上でなく斜め前に向ければ、近づく前に鬼を戦闘不能に出来るかもしれない。試してみる価値はあると思う。」
「うん、じゃあ早速練習してみよう」
「いやその前にまずはやることがある。おーいそっちの二人、ちょっとこっちに来てくれ」
カイはアイカとリュウを呼び戻して話を始めた。
「次鬼が来たときより安全に鬼を倒せるように、今から複数の家を建てる。一つは本拠地、そして残りはトラップタワーだ。」
地獄で鬼討伐・これぞまさしく地獄級 ワンダルピー @tako800
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