魔王城のアウトソーシング

シバ・タツキ

第1話 あうとそーしんぐ


 魔王城は危機に瀕していた。


「どうにかならんのか」


 魔王城の最奥の玉座の間にて、怒りを顕にするコレは、マオ・U・リックス。

 魔物を束ねる第20章目の(大)魔王である。


「吾輩が魔王になってから早数ヶ月、知らない間にこんなことになっているとは」


 マオは手元にある資料を見ながらため息をついた。

 資料には四天王は形骸化し、魔王軍は勇者を打倒せんとする正義の組織ではなく、不正と賄賂と酒に塗れたと化してしまったと記載されている。


「魔王様が自堕落な生活をしているからですよ」

「むむむ」


 マオのすぐ隣にいる冷静沈着で片眼鏡を掛けた彼女の名前はヒショ・n・イート。

 一ツ星大學を卒業し、秘書国家資格を持ちながら、長年に渡ってという体を張った職に就いていたとされる美人魔王秘書。


「自堕落いうても、ちょっと休養をしていただけじゃ。」


「その言葉、NEETが良く使うやつですよ。」


「うぐっ、ヒショは何かとNEETとやらに詳しいし厳しいのぉ。」


 ヒショは黙った。

 話を振ったのは自分だが、そこは余り言及されたくない話題だ。


「とりあえず対策について考えを出していきましょう!」


 ヒショは話を逸らした。

 内心ビクビクで冷や汗タラタラである。


「じゃあヒショ、役に立つやつらを呼ぶのじゃ」

「思い当たる方がいませんが」

「……名を馳せた奴らがいたじゃろう。ほら、ダースノヴァドラゴンとかシルバニアファミリッチとか」

「彼らは皆、一人残らず殉死してしまいましたので」

「そんな、おかしいじゃろ……」


 マオの知る限りでは殉死までする部下は過去にはいなかったはずだ。


「お父様の人望が伺えますね」

「先章である19章魔王であったお父様は圧倒的なカリスマがあったからの!」


 マオは控えめな胸を張った。

 そして、それを可哀想な目で見るヒショは先代魔王の胸(板)の方が大きいのではと心で思った。


「鷹がトンビを産むとはこのことですね。」

「うるさい、逆じゃぞそれ。」


 ヒショにビービー言いながら、脳内をフル回転させるも残念ながらマオには何も策など思い付かない。

 そもそも休養していたせいで、魔王城のことなんて何も知らないのだ。

 だからマオはとりあえずヒショに放り投げることにした。


「ヒショよ、なにか秘策は無いのか」

「もう諸共滅べばいいんじゃないですか。」

「あほ、怖いこと言うのはやめるのじゃ」

「冗談です、安心してください。私にはとっておきの秘策があります。」

「ほう!」


 前述の通りヒショは一流大学卒の国家資格持ちエリートである。

 そんな彼女にマオはとても期待した。


 その秘策とは……!?











「外注してしまいましょう。」


「はふ?」

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魔王城のアウトソーシング シバ・タツキ @tatuki-24

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