まずは恐れを捨てることから

シヨゥ

第1話

「恐れるからこそ敵だと思うんだ。だからまずは恐れることからやめないといけない」

 老人はそう言う。

「でも恐れを捨てたら身を護れなくなる」

 剣士はそれを受け入れない。

「敵がいないのに何から身を護るんだい?」

「それは――」

 と答えようとして剣士は口ごもる。

「それでも身を護ろうとするならそれは思い込みだ。弱いから護りを固めなきゃならないっていう思い込みだ」

「思い込み」

「お前は強い。強いからこそ護りを解いて今度は受け入れることをしなくちゃな。それが成長っていうもんだ」

「俺は強いのか?」

「強い。誰より強い。だから自信を持ちなさい」

「……そうか」

 剣士の体から力が抜ける。見るからに無防備。だが隙がない。

「それでいい」

 老人はその姿に満足のようだ。

「そうか」

 剣士はそれだけ言うと立ち上がる。

「もう行くのか?」

「ああ。待っている奴らがいるからな。いい気付きを得ることができた。感謝する」

 一礼すると剣士は歩き出した。その顔には自信がみなぎっていた。

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まずは恐れを捨てることから シヨゥ @Shiyoxu

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