推しだった配信者の正体は一目惚れしたクラスメイトでした。〜“推し”と“好き”はべつなんだよぉぉぉぉ〜

バベル

第1話 推しと好きはべつなんだよぉぉぉぉ!

 初めてのラブコメです! 短編です! 大目にみてくださいm(_ _)m 


 すんごい文字数ですが読んでくれると嬉しいです!


ーーーーーーーー*****ーーーーーーーーーー


 『今日コンビニで買い物したんだけどさぁ〜。

 会計する時、小銭出そうと思ってたのに出す前に会計されたんだよねぇ〜。そのせいかすごいモヤモヤするだー笑笑』


 《わかるわかる笑笑》 《あるあるやなww》 《俺もよくする〜笑笑》 《みんなのコンビニ定員せっかちなやついすぎで草》


 「マジで共感しかできん。」


 真面目な顔してスマホに呟いている男がいる。


 「共感の……極みっと。送信。」


 《共感の極み》


 『日向も!? やっぱり!? そうだよねぇ〜。んで、会計し終わられたら、もうどうしようもないよねぇ〜」


 「ーーーはぁ……なんて可愛い声なんだ! 俺を尊死されるつもりか!?」

 「お前が配信聞かなければいいんだよ!」


 俺が悶え苦しんでいるところに横槍を入れてくる奴がいた。


 「推しの配信やぞ! 見ないって選択肢なんて存在しんやろ!?」


 「……そうかそうか……ハァ……どうしてそんなふうになっちまったんだよ……日向ひゅうが」

 「いや、こ・れ・に沼らせた元凶は陸兎りくとな。」


 「いや、まぁ……そうなんだが。」


 スマホと睨めっこしている俺は【須藤日向すどう ひゅうが】。進路先が決まっている中学3年生だ。

 んで、俺の至極の時間を潰してきた男。こいつは【早瀬陸兎はやせ りくと】。こいつも俺と同じく進路先が確定している中学3年生だ。


 「んで、またあれか? 【一ノ瀬花凛いちのせ かりん】か?」

 「おう! 当たりまぁーよ! 逆に最近花凛の枠しか行ってないし、花凛以外のフォロー外した。別にそんな行ってなかったし」

 「マジかよ笑笑 一途すぎやろ笑笑」


 俺は最近ハマってる配信アプリのイリアムでた・っ・た・1・人・の推しがいる。

 そのたった一人が今まさに俺が配信を聴いている彼女。一ノ瀬花凛である。

 一目一声聞いて確信したんだ。俺はこの人に貢ぐためにイリアムを始めたんだと。


 「……んなことより、OBとの試合だ。配信見るの切り上げて早よ行くぞ」

 「嘘!? 早くね?」

 「早くねぇーよ! なんなら遅れとんねん! 早よしろ!」

 「……あ、ほんまやん。花凛の枠が尊すぎて時間忘れてた!?」

 「今はそんなんどうでもいいから! OB待たしてるって聞いてたか!?」

 「わかったって! ちょい待て。」


 俺は陸兎を制してスマホと向き直る。


 「え〜と……用事で落ちます。また来るねー。おつりん! っと」


 《用事で落ちます。また来るねー。おつりん!》


 『日向落ちるの!? 寂しいけど、用事いってらっしゃい! 夜枠するから来てねぇ〜! おつりん!』


 《アニキ落ちるの!? おつりん!》 《用事かぁ〜またね〜アニキィー》 《おつりん》 《用事いってらー。おつりん》


 俺が枠落ちするコメントをすると、一ノ瀬花凛はしっかりと反応してくれた。俺以外のリスナーも反応してくれた。


 「ハァ………尊い!」

 「終わったやろ! 行くぞ!」


 俺はそのまま陸兎に引っ張られる感じでOBとの試合に向かった。



ーーーーー****ーーーーー



 「ハァ……疲れたわ」

 「ほんまな。あのOBどんだけやれば気がすむねん」


 俺と陸兎はOBとの試合を終え家へと帰宅してる最中だ。


 「けど、俺たちス・ポ・ー・ツ・推・薦・で高校行くからな。他の人が勉強頑張ってるとき、俺たちは部活がんばらんとあかんしな」


 俺たちはテニス部に所属しており、俺が前衛。陸兎が後衛でダブルスを組むペアでもある。

 俺たち2人で大会を優勝したり、全国まで駆け上がったこともある。

 その結果なのだろう。超名門進学校からスポーツ推薦をもらったのだ。


 「別に俺は一般でも受かるけどな!」

 「まぁ、日向ならありあるけどさぁー」


 ちなみに俺は勉強もできる。いつも定期テストは学年10位以内をとり続けているし、全国模試も上位に組み込むレベルである。

 陸兎は……まぁ、触れないでおこう。


 「……そうだよ! なんで日向は急にスポーツ推薦で入学することにしたんだ? なんか頑なにスポーツ推薦は嫌なこと言ってなかったか?」

 「あ、それか……俺がスポーツ推薦で入学するなら一人暮らしさせてやるって言ってきたから折れたぜ。」

 「…………はぁ?」

 「詳しく説明すると……」


 俺は陸兎の頭でもわかりやすいように説明した。(圧倒的に説明が足りないので補足)


 「俺はスポーツ推薦で入学するやつは陸兎みたいに頭悪いやつだと思ってる!」

 「言い方ひどいな! オブラートに包めよ!」


 いたって事実なので気にしませんと。続ける。


 「俺がスポーツ推薦で入学したら陸兎と同じ部類になっちゃうじゃん? それが嫌だったんだよ。」

 「………続けろ。」


 すんごい形相をしている陸兎。けど気にしない。笑笑


 「けど、頭が悪いってことを示すスポーツ推薦……」

 「日向? もうそろそろシメルゾ?」


 最後までまたなかったようだ。もうそろそろやばいので、ここからは真面目に話そう。陸兎は脳筋……なんもない。


 「ここからはマジの話だけど、そのスポーツ推薦には【学費免除】とか色々家庭に優しい特典があるわけよ。」

 「あぁーだから母さん、スポーツ推薦取ったって言ったとき喜んでたのか。」

 「そ! それに俺の親もまんまと乗せられたわけ。だから条件として俺の夢だった一人暮らしさせろって言ったら余裕だったよ。ま、けどそのスポーツ推薦の特典に【生活資金負担】もあるから、両親は即決で俺の提案に乗ったんだわ。」


 要するに、スポーツ推薦で入学することによって、念願の一人暮らしを手に入れたってことだ。


 「一人暮らしか〜俺は寮に入ることになってるな。一人でまだ生活できそうにないし。

 それに比べて日向はたしかに一人でも……いや……日向! お前【イリアム】のせいでダメ人間になってないか!?」

 「はぁ? なんでそこでイリアムが出てくんだよ。」

 「だってお前、さっきの試合前もイリアム見てたから遅れたじゃねぇーか!?」


 説明しよう! “イリアム”とは、イラストさえ用意すればスマホ一台で配信ができるというアプリである。

 そのイリアムで日向はリスナーとして沼っている。


 “リスナー”とは、そのままの意味で聞く人。配信する方ではなく、配信を見・る・方である。


 「流石にそこらへんは自重するよ。さっきだってちゃんとやめたしな。

 それより逆にお前こそ! お前、推し活はどうしたんや! 最近ログインもしてへんみたいやん! イリアムに沼らせたのお前やろ!」


 そう、日向をイリアムに沼らせた元凶はここにいる陸兎に間違いない。


 「あぁ……なんか推してるライバーがTwitterで酔いの勢いで顔晒しちゃってさ……」

 「そんなリアルはブサイクやったんか?」

 「違う違う! 逆に美人すぎたというか……その人、立ち絵は可愛い妖精だから……ギャップが凄くて……」

 「……どんまい。新しい恋見つけろよ」

 「いや、恋に落ちてへんからな! あくまで推・し・や・!・笑笑」


 そんなたわいもない話をしながら家へ帰っていた。



ーーーーー****ーーーーー



 本日は入学式。俺と陸兎はスポーツ推薦で入学を果たす。


 「……やっぱでかいな。」

 「そやな。流石って感じだな。【帝翔高校ていしょうこうこう】」


 帝翔高校。通称【帝高】。日向と陸兎がこれから3年間通う高校である。

 数々の難関大学の進学実績を持つ超進学校である。さらに加えて、スポーツにも力を入れており、存在している部活動全てがなんらかの実績を残している。

 まさに文武両道を極めし学校である。


 「こんなすごいとかから推薦来たんだな……日向も推薦受けてよかっただろ? 聞いた話によるとこの学校って推薦枠ないらしいぜ? 俺たちのために特別に設・け・た・らしいよ。」

 「すごい、光栄だな。なんかアホそうに見られるとか言ってた自分を殴りテェーよ。」

 「俺がやったるけど?」

 「俺が殴らないと意味がない。残念だったな。」


 そんなこんなしながら俺たちは帝高の門をくぐった。






 「マジかよぉぉぉぉ! 日向とクラスがちげぇぇぇぇ!」

 「マジやん。なんか同じクラスなると思ってたから安心だわ笑笑」

 「ほんまな! って安心ってなんだよ!」

 「まぁ、隣は隣だし良くね? 校舎違うよりかはマシだろ。」


 俺と陸兎はクラスがバラバラになってしまった。

 けど、逆に中学は毎年同じクラスだったからなんか新鮮に感じる。


 「あっ、俺ここだ。んじゃ! またぁー」

 「おう! ちゃんとクラスに馴染めよ〜日向!」

 「流石に努力はするわ笑笑」


 自分のクラスの前についたので陸兎と別れる。


 (……俺の先は……一番後ろか……ないポジ!)


 教室の中は結構人がいた。なんかみんなもらった教科書を読んでいた。真面目か!


 (ん……馴染めるかな?)


 若干高校生活に不安を感じながらも自分の席に行く。




 そこで見つけてしまった。


 (う、美しい!)


 俺の席の隣で本を読んでいる人。外見だけしか見てないのだが……惚れた。

 これが俗に言う一目惚れなのだろう。


 彼女は薄紫のロングヘアの女の子。キリッとしたツリ目が特徴的なクールな見た目をしている。


 そんな感じで自分の席に座らず、彼女を見てフリーズしていると本を読んでいた彼女が睨みを効かせて喋りかけてきた。


 「……そんなとこに立ってどうしんたんだ? 座席なら前に貼られてるぞ?」


 (うわぁ!? 声かっこいい! やばい!)


 彼女の声は思った通りのかっこいい声をしていた。


 「え、えっとここが俺の席で。周りどんな感じかと思ってな。」


 苦しすぎるけど、これしかまともな返しないだろう。


 「そうか隣だったのか。 【月城凛つきしろ りん】だ。これから1年間よろしく頼む。」

 「あ、ああ! こちらこそよろしく!!」


 これが俺と凛の最初の出会いだ。





 「それでは、初日のガイダンスを終了する。明日から通常授業だ。以上。」


 流石の帝高も入学式から授業はないらしく、初日はガイダンスだけのようだった。

 明日は土曜だが、私立なため学校がある。

 学校に来るまでは土曜も授業あるのか……憂鬱。だったが今は違う!

 俺には学校に行きたい思わせる人がいる。


 「月城さん!」


 隣で帰る準備をしている月城さんに声を掛けた。


 「ん? なんだ? 須藤?」

 「え!? 名前!」

 「これから隣なんだ。名前ぐらい覚えるよ」

 「そ、そっか! (ヤベェ! 名前覚えられて嬉しすぎる!)」


 先程の月城の発言で体が無意識にのけぞってしまう。それほどの破壊力があった。

 隣同士でよかったと本当に思う。


 それが嬉しすぎて俺はとんでもない行動をしてしまう。


 「この後予定空いてるか? 親睦会みたいなのも兼ねて昼とかどう?」


 あった初日からご飯に誘うとかどうかしてるが、仕方がないのだ。

 日向は女と関わることはあったが、恋愛は一度もしたとこがない。

 だが、顔は悪くないしどっちかというと美形だ。推薦をもらうほどのスポーツ少年でもあるためすごくモテていた。


 なんなら、誰に対しても距離が近かく思わせぶりな態度だったため、かなりの人数の女性を虜にした。


 「別に予定もないしな。一緒に食べようか。……私も須藤のこと知りたいからな」

 「ん? なんか言った?」

 「いや、なんでもない。では行こうか」




ーーーーー****ーーーーー



 あれから二週間、俺は月城とよく放課後の共に過ごす仲となった。

 月城曰く、自分のことをすごい見てくるやん。なんやこいつ? みたいな印象だったらしい。あの時は見つめすぎてすいやせん! 

 それに隣だったからちょっと話したりはしたけど、いきなり昼に誘ってくることにびっくりしたようだ。……すみません。今考えたら流石にいきなりはなかったよな……。


 けど、逆に初日から仲良くなろうと頑張っている俺が気になって、入学式の後も付き合ってくれたようだ。まじで女神! 当たって砕けろとかいうけど、そういう精神も大事だと思った次第だ。


 ま、まとめると入学式アタックが決まって初日から月城と仲良くなれた。

 なんなら、今では………




 「はぁはぁはぁ……ごめん! コート整備長引いた!」

 「別に気にしてないぞ。それに須藤はこうして部活で疲れてるのに走ってきてくれたんだ。逆にポイント爆上がりだ。」


 スポーツ推薦のため、部活に強制的に入らされた。ま、それが条件だからしかたないが。

 月城は俺の部活が終わるまで、学校の自習室や図書館で勉強する。

 そのあと、終わる頃に合わせて校門前で待っている。これが俺の部活がある時の放課後だ。


 「月城を待たせてるんだから当たり前だろ?」

 「そういう須藤に本当に好感持てるよ。では、行こうか?」


 さっきまで校門にもたれかかりながら読んでいた本を閉じて、月城が問いかける。


 「あ、あぁ! 帰ろう!」


 俺は月城と2人で帰るほどまでになった! 神様ありがとう! 俺は世界一の幸せ者です!!






 ちなみに月城には俺が月城に一目惚れしたことを初日に伝えてある。(今思い返せば、初日にいろいろやらかしてんな……)


 【恋は盲目】; 恋は人を夢中にさせ、理性や常識を失わせるものだというたとえ。


 ほんと身をもって感じたよ。


 初日から告白してるようなもんだ。普通の人なら引く。けど月城は普通の人でない!


 流石に驚いたり、動揺してたり、こんがらがったりしていたけど、最終的には……


 『わ、私はまだ須藤のことをあまり知らない……お前もそうだ! 一目惚れなのだから、内面はまだ知らんだろう。だからここでは答えられない。私のためでもあり、須藤のためでもある。だから、これからお互いのことを知りそれでも私を好きと思うならもう一度伝えて欲しい。……須藤の気持ちを伝えてくれてありがとう。う、嬉しかったぞ……』


 こういう返しをできる人が内面終わってわけねぇーだろ。あぁ……好きだ。けど、月城の意見ももっともだ。それに好きな人がそう言ってるんだ。俺の答えは決まっていた。


 『わかった! これからお互いについていろいろ知ろう! そして……絶・対・ま・た・告・白・す・る・。待っててくれ。』


 その言葉を聞いて月城はコーヒーの入ったカップに手を取りすすった。


 『あぁ……待ってる』






 これが、初日出来事だ。ハァ……思い出すだけで……


 「須藤? 聞いてるか?」

 「ん? ごめん、ぼーっとしてた」

 「須藤は部活で疲れたしな。家でゆっくり休めよ」

 「ありがとう月城」

 「けど今更だが本当にすごいな。スポーツ推薦って。学校史上初なんだろ?」

 「らしいな。あんま実感湧かないけどな。」

 「学校中でかなり噂されてるぞ? 須藤ともう一人の……早瀬だったか? その二人の話題でもちきり状態だ。……それに須藤を狙う輩もいるみたいで……」


 月城が顔を俯いてごもる。


 「大丈夫だよ。俺は月城一筋やから。だからあんまそんなんに興味ないかな。俺は月城と入れるだけで幸せやし。」

 「そ、そうか……そうか……」


 俺の発言に月城は顔を赤らめて黙ってしまった。俺は俺で照れてる月城を見て、自分がかなり恥ずかしい言葉を言ったと思い顔が熱くなる。


 この状態で少々沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは月城だ。


 「あ、私こっちだ! またな! 須藤!」

 「あ、あぁ! また明日! 月城!」


 2人は自分の家の方向へと足と背を向ける。お互いわかれた二人だったが、2人の顔はまだ赤かった。決して夕陽のせいではない!





ーーーーー須藤 日向ーーーーー



 「ただいま我が家ぁぁぁぁぁ!!!」


 自分の家に到着して誰もいない家にただいまする。一人暮らしだから当然だ。

 俺は帰ってき次第、そのままシャワー室に直行。部活でかいた汗を流す。鼻歌を歌いながら。

 そして俺はシャワーを終えてすること。ズバリ!


 Twitterを開くことだ。


 は? と思った人もいるかもしれない。いや、大抵の人は思っただろう。

 だが、俺にとっては必ずしないといけないんだ。理由は簡単。


 「花・凛・の枠は……22時から! いつも通りだな!」


 推しの配信時間を確認するためだ。イリアムはTwitterと連携してるアプリだ。だから大抵のライバーはTwitterなどで配信時間を告知したり、イリアムに存在しないメール機能もTwitterのダイレクトメッセージで補ったりしている。


 そして、俺の一ノ瀬花凛はTwitterで配信時間を告知する。大抵は22時から始まるが、稀に18時などの夕方枠をやっていた時もあった。だから、毎日欠かさず確認をしているのだ。


 (夕方配信は俺が高校に入学したあと以降あまりしてないよな。ま、部活ある俺にとっては嬉しいことだが。)


 現在19時半。疲れた体に鞭打ってやること。料理だ。けど、そこまで苦に感じない。

 慣れというものなのだろうか? 両親共に共働きだったので、夜ご飯などは俺が用意していた。今では、母より料理の腕は上だ。


 俺は慣れた手つきで包丁で野菜などの切り、料理をしていく。15分ほどすれば夜ご飯はできていた。できたタイミングを見計らうように白ごはんも炊ける。

 あとは、出来上がった料理を机に持っていき……


 「いただきます!」


 それから30分ほどして完食。カップラーメンなどにすれば時間が空くのだが、流石にスポーツマンとして栄養はしっかりととらないといけない身。

 だから、大抵は自分で作って食べている。どうしても厳しい。そんな時だけコンビニで惣菜を買ったりしている。




 夜ご飯をいただいた後は学校の宿題だ。これを配信が始まる前に片付ける。

 帝高は超進学校というのも相まって、宿題の量がえげつない。

 スポーツ推薦での入学者は勉強面での配慮が存在する。宿題が少なくなったり、赤点の基準が下がったりなどだ。

 そういうスポーツ推薦の待遇を詳しく伝えるためにと俺と陸兎は校長室に呼ばれたりした。

 そこで説明を受けて俺も宿題が少なかったり、赤点基準が低くなったはずなんだが。

 中学の時毎回定期テストは学年一位をとり続けて、全国模試も上位に組み込むレベルの俺(自慢でない)を学校側が把握してないわけがなく……


 『はぁ……学面補助は陸兎だけかよ……』


 必然的にそうなってしまった。

 教師たちからは『君なら大学進学考えたほうがいい! 部活と勉強の両立頑張ってくれ! なんなら今からでも特待生として再入学の手続きしようか!!!!』とかならやばい事言う始末。

 陸兎からは『日向は頭いいもんな〜なんなら一般入試ではいるみたいな余裕発言してたもんなぁ〜』とだいぶ前に煽ったのが裏目に出る結果となった。


 「……ま、やることには変わらん。配信までに間に合わすぞ!」


 俺は推しのために天才的な速さで宿題を終わらしていく。

 途中式書く手間をなるべくなくすように暗算できるとこは暗算したりと今出せる限界を宿題に注ぎ込んだ。




 「ふぅ……終わった、やべギリギリだ」


 俺は21時20分に終わった。ギリギリでないと言いたいのだろうが、ギリギリやなのだ。


 「30分前から行ける準備しないとダメだからな」


 デートの待ち合わせも絶対30分前ぐらいから待つタイプである。一度もデートの経験ないけど、断言できる。


 それから30分間ずっとスマホと睨めっこ。


 ピコン!


 表示される一ノ瀬花凛の配信通知を速攻でタップ。


 これが俺が推しの配信が始まるまでの日常だ。




ーーーーー月城 凛ーーーーー



 「ただいま……」


 って言ったところで誰もいないが。


 「ふぅ……とりあえず【ツイート】しとくか。


 そう呟き、Twitterを開く。


 「宿題の量的に……22時でいけるな」


 彼女、月城凛はイリアムで一ノ瀬 花凛として配信をしているライバーである。

 月城がライバーになった訳、それは……やってみたかったからである。けど、軽い気持ちでやろうと決めたわけではない。

 少し、月城のライバーとなるきっかけを話そう。




 月城は誰もが認める美女である。だが、すごいモテる美女というわけではない。いや、モテるのだが……その対象は同性からである。

 男性声優顔負けの低音イケボ。キリッとカッコ良すぎる眼差し。逆に惚れるなっていうのが難しい。

 けど、月城はこれをコンプレックスに思っていた。無理もない。別に同性からモテたいわけではないからだ。カッコいいではなく可愛いと言われたいのが女の性だ。


 だからある時、自分のキャラを変えようと低音ボイスを捨てて可愛い声を出してみた。

 これは月城にとってかなり思い切った決断だった。月城は見た目と声などで王子様キャラとして定着していた。

 女というより男に近い扱いだった。

 それを変えたい! 自分は女だ! と示したかった。


 だが、結果は思った通りにはいかなかった。


 王子王子と慕う女子たちは。


 『お、王子様? なにその声?』

 『え、何でそんな声なの……』

 『じょ、冗談はやめてよ〜王子!笑笑 流石にそれはないって!笑笑』


 男子からは。


 『え? 王子が女声出してる!笑笑 マジでウケるんですけど笑笑』

 『けどおもろすぎ!笑笑 二週間ぐらいその声で言ったら?笑笑』

 『きついきついきつい!笑笑 顔とさっきの声とのギャップやばいやばい笑笑 イヒヒヒヒヒヒ』


 (……そうか、ダメなのか。そうか……)

 『なぁーに。ちょっとしたジョークだよ。驚かせてすまない』


 意の決して行動した結果は残酷なものだった。

 それを機に月城は諦めた。自分の意思を捨てた。私は王子という鎖に制限されながら生きていこうと。


 けどそんな日の帰り道だ。彼女と出会ったのは。


 『さっきのあなたの声……めっちゃ可愛かったわ! あなたってあんな声出せるのね?』


 この言葉が欲しかった。“可愛かった”この言葉が欲しくて勇気を振り絞ったんだ。


 『ちょ、泣かせるようなこと言った!?』

 『え?』


 月城の目からは涙が流れていた。月城は言われて自分のまぶたが熱いことに気づいた。


 『ち、違う……その……嬉しくて』


 必死に流れる涙を拭く。だが、一向に拭き終わらない。現在進行形で流しているからだ。


 『この後何も用事なかったら話さない? 私でよければ相手なるよ』


 これが私の親友【古手川梓こてがわ あずさ】の出会いだ。

 そしてこの出会いをきっかけに私はライバーになることを決めることになる。





 『たまたまトイレ行くときに月城さんのクラスの前通ったんだぁ! その時すごい可愛い声して見たら月城さんだったの! もっと聞きたかったんだけど、限界だったからすぐ通り過ぎちゃったけど! 可愛いすぎて放課後声かけちゃった!』

 『そっか。本当に嬉しいや』

 『あふ……尊い! こんな可愛い子をいじめるなんて……それに聞いたら向こうが勝手にキャラ付けしてるだけじゃん。自分勝手なクソ野郎たちだね』


 古手川さんには私の意思などを話した。古手川さんには話していいと思ったからだ。結果思った通りだった。

 古手川さんは自分の意思をしっかり持っている人だった。ちょっと激しい人ではあるけど、取り繕ったりせずに本心で話してくれる。私はそっちの方が性に合っていた。


 『……月城さんは可愛いと思われたいんだよね?』

 『そうだな。カッコいいも嬉しいのは嬉しいんだが、やっぱ女としても見てもらいたいな』


 月城の発言を聞き、古手川さんは深く考え込んだ。


 『……月城さん、配・信・者・になってみない?』

 『配信者? あのYouTubeとかでやってるVtuberみたいなやつか?』

 『ま、似たようなやつ。これ見て』


 古手川さんが月城の前にスマホの画面を見せた。


 『イリアム?』

 『そ、これ配信アプリなんだけど。イラストさえ用意すればスマホ一台で配信ができるんだ……月城さんこれで配信しない?』


 古手川が提示したのは配信者にならないか? という提案だった。


 『月城さんの可愛い声が受け入れられないのは、みんなが月城さんの低音に慣れちゃったからだと思うんだ。それをどうこうするのは無駄だと思うんだよね。だから新・し・い・月・城・さ・ん・を・創・る・。高城さんのな・り・た・い・も・う・一・人・を・創・る・ん・だ・。』


 “配信者”。古手川さんに言われて、自分の道がパッと輝きを増したように感じた。断る理由などなかった。


 『やる! やってみる!』

 『そうこなくっちゃ!』


 月城の返しに、満面な笑みを浮かべた古手川。


 『んじゃ、イラストはわたしがよういするわ! こう見えてかなり描き込んでるから、絶対月城さんの求める立ち絵用意したら!』

 『うん! 任せるよ古手川さん』

 『そういや、私のこと梓でいいよ。逆にそう呼んで欲しいし、私も月城さんを凛って呼びたい!』

 『! こちらこそ! よりしく! あ……あ、ずさ?』

 『うん! よろしくね! 凛!』


 この後一週間後。梓はイリアム配信用の立ち絵を完成させて、ほとんど勢いだったが私はライバーデビューを果たした。


 「……懐かしいな。そんな時もあったな」


 宿題を終えていた月城は少々昔のことを思い出していた。


 「!? やばい! もうすぐ22時だ! 配信準備しないと!」


 思い耽ってる間にかなりの時間が過ぎたようだ。月城は急いで配信準備を始めた。




ーーーーー****ーーーーー



 「!? 来た!?」


 俺はスマホのあ・る・通知を連打する。ある通知とは? 花凛の配信通知に決まってるだろ?


 10分前からスマホの前で待機していたので、当然の枠入場トップを飾った。


 《こんりん!》


 一ノ瀬 花凛の枠の挨拶は【こんりん】、退出時の挨拶は【おつりん】と決まっている。


 『おっ! 日向さんじゃぁ〜ん! こんりん! 今回も爆速でスター送ってくれてる! ほんとありがとう! 大好き!』


 「ぐはっ! ……尊すぎるぜ……花凛」


 実際には吐血してない。そんな漫画みたいなリアクションあるわけないだろ。けど、それほどの威力があった。

 ちなみにスターとはイリアムに付いている機能であり、無課金でもライバーのことを応援できる機能だ。ギフトよりか価値は落ちるが、ライバーからしたらスターも貴重なものなのである。

 このスターは何回も押せるが、最初のスターだけログに表示されるのだ。あとは、一千……二千……と上がっていくシステムである。


 俺が撃沈してる間にも花凛のことを慕う同士たちが入ってきた。

 この同志達は俺と同じく花凛を愛する者たちだ!(勝手に思ってるだけ)

 だが、同士が増えるまでに数々の試練があった。

 少し語ろう。今はフォロワー千越えの人気ライバーである一ノ瀬 花凛の軌跡を。




 本当にたまたまだ。俺は適当にデビュー一覧から暇を潰せる枠を探していた。

 下にスクロールを続けていくうちに誤タップしてしまった。そこで出会ったのだ。一ノ瀬花凛と。

 花凛は最初の頃はそこまで人気じゃなかった。勢いで始めたらしく、枠周りなどをしてなかったみたいだ。

 枠周りとは他の人の配信者の枠に行き、自分のデビューなどを宣伝することをいう。(ライバーとの信頼関係がないと不信に思うライバーもいる)

 普通のライバーはデビュー前に絶対することなんだが、花凛はそれをしていなかった。だから本当にゼロの状態から配信を始めたんだ。俺が初めて花凛の枠に訪れた時も俺がはじめてのリスナーだったという。

 だから、その時花凛に足りなかったのは人・気・ではなく認・知・だった。


 ギフトなどを投げてもらい、盛り上がりスコアというものを上げてもらう。上がれば上がるほど枠の表示が上にいくんだ。それによりいろんな人に見てもらえて認知されやすくなるんだ。


 だが、その時花凛を推しているのは俺だけだった。だったら俺がやるしかないだろ! 


 俺は今まで集めていた漫画やフィギュアのお金を全てイリアムに注ぎ入れた。いろんな人に花凛を知ってもらいたい。その一心で。

 「顔も知らないやつにようそんなことできるな」っていうやつもいるかもしれない。俺もそう思う。

 けどな、自分の好きなことを捨ててまで貢ごうと思える人に出会う。これほど幸せなことはないと思った。

 それにな……伝わってきたんだ。ギフトを投げるたび、フォロワーが増えていくたび、声だけでわかるんだ。本当に喜んでくれてるって。

 んで、だんだん花凛の人気も出てきて、俺と同じぐらいギフトを投げる人も増えてきた。

 それによりもっと花凛の認知度は上がっていった。俺の行動は間違ってなかったって実感できた。


 『日向〜今タロットカードでみんなの占いしてんだけどやるぅ〜?』


 昔のことを思い耽っていると、花凛から声をかけられた。どうやら今はタロット占いをしてるらしい。

 こうやって一人一人のリスナーへの配慮を忘れない花凛が最高すぎる!


 《アニキ〜やりやしょぜー》 《アニキ〜》 《兄貴作業中かな?》 《んじゃ、俺がアニキの代わりにもう一度受ける〜笑笑》 《あ、それなら俺も立候補www》 


 ちなみに俺は花凛公認のリスナーのまとめ役的存在である。俺は最古参の中の最古参だから他のリスナーたちが勝手にそう言い出した。

 こうやってリスナー同士の関係が良好なのも、枠主である花凛の力だろう。


 《何でしゃばってんだぁ〜オメェら〜笑笑 道の開けろ〜》


 《おっ! やっと来た!笑笑》《お前ら! アニキのお通りだ!》 《ははぁぁぁぁ〜》 《アニキのご降臨ダァー!》


 『待っていたぞぉ〜日向よぉ〜! 私の占いをとくとしんぜよぉ〜!』


 俺がコメントを打つなり、他の同士、リスナーが反応してくれる。花凛もノッてくれる。


 「こんな暖かい枠……どこを探しても見つからんな」


 《はっはっはっはっ! お前の占いとやらを見せてみろ!》


 そんなこんなで枠が盛り上がったのは言うまでもない。





 『それじゃ枠終わるよぉー! 現段階の生存確認します!』


 生存確認とはそのまんまの意味だ。枠にいることなってるけど、寝落ちしてる人もいるからそれを把握するためやつだ。


 《はーい! おつりん!》《おつりんなのだー》《余裕で生存。おつりー》《お疲れーおつりんー!》


 《明日の配信も楽しみしてる! おつりん!》


 『皆さんの生存把握で〜す! ではみんな〜いい夢みられますように! おつりん!』


 《ぐはっ!》 《ぐへぇぇ〜》 《ぐはっハッハッハッ〜》 《ぐはひふへほ〜》


 《ぐはっ……尊い……バタッ》


 花凛の枠では生存確認をし終え、花凛が「おつりん」と言ったらリスナーは吐血モーションでお別れする。(真面目にやってる奴おらんが)

 俺がよくしていたせいでこれが恒例化してしまった。

 そして花凛は俺たちの反応を見て、枠を閉じる。


 「はぁ……尊すぎる。学校の後、部活の練習試合っていうハードスケジュールやけど余裕だな」


 明日の活力を花凛によってもらった日向は無敵だ。試合前日に花凛の枠に行ったら絶対調子がいいらしい。

 ボールの回転、相手の場所、どこにボールを落とすか、そんなんが瞬時に降りてくるんだ。

 全国大会の時もそうだった。だから、言っちゃえば花凛のおかげで全国大会を価値上がれたんだと思ってる。

 それを言ったら、陸兎は「アホ言うな。実力や」と花凛は「そんなことないって〜! 日向の実力だよ! けど、私も日向の勝ちに貢献できたのなら……すごい嬉しいよ?」って……あぁ! 尊い! 誰が生み出したんだ!? この尊い存在は! って家で発狂したのを鮮明に覚えてる。





 俺は花凛の配信リザルトがツイートされるのを待っていた。これが寝る前にやることだ。

 花凛の配信リザルトを見ると、1日が終わったって感じるんだわ。


 「……あっ、そういや。気・に・な・っ・て・た・ツイートの思い出した!」


 俺は花凛のツイート画面を下にスクロールしていく。

 人間いろいろ忘れるし、変なとこで思い出す。ほんと奇妙な存在だなとつくづく思う。


 「あった……この写真のスマホケース……月・城・のに似・て・る・気・が・し・て・た・んだよな」


 俺が見ているツイートは花凛がママとエンカした時の写真だ。


 “ママ”は本当のママではなく、花凛の立ち絵を描いた人のことをでママと呼ぶ。

 “エンカ”は遭遇って意味があって、そのまんまなんだけど「その人と遭遇しました」みたいな意味を持つ。


 んで、Twitter上でエンカしたことをツイートするとき、それぞれのTwitterのプロフィール画面を映してその写真を撮って呟くんだ。(プロフ画面を見れば本人だと分かるからな)

 だから、必然的にスマホケースやそこについてるストラップなどが見えてしまう。それで俺は課題てしまった。


 「……スマホケース、スマホについてるストラップ……同じ?」


 俺と月城は帰り二人で帰る仲だ。当然連絡先も交換してる。だから月城のスマホは知っている。

 彼女の髪色と同じ美しい紫色の手帳型。そしてイリアムのマスコットキャラ。しらすくんのストラップ。


 「…………さ、流石にないよな。考えすぎだよなぁー笑笑 そうや! 月城の配信やってるらしいから行きたいな……明日聞くか! って明日学校の後試合や! 他校でやるしまた今度聞こっと!」


 明日は月城の帰えれない。けどこのことにホッとしてるいる俺。

 月城と出会って初めてそんなことを思った。




ーーーーー****ーーーーー


 「日向〜なんか今日調子悪かった?」

 「え? そんなことないぞ? 実際練習試合は負けなしだったやん」


 今日の戦績は5戦全勝だ。


 「いや、そういうやつじゃなくてな。なんかいつもより反応悪かったし、サーブのファーストも入ってなかったし。 花凛の配信でも見逃したか?」

 「いや、見たわ。反応って……それはようわからんけど、サーブのファーストはまぁ……ミスることぐらいあるだろ」

 「いや、お前ファースト外したの何・年・ぶ・り・だよ。全国の舞台でも一度も外したことねぇーじゃん」


 陸兎のいう通りだ。日向はサーブが取り柄で、狙ったところに落とすことができる、緩急のあるサーブもうてる、ましてやファーストは必ずはいることで有名だ。


 今までの対戦相手も日向のサーブを懸念して、レシーブが得意でもサーブを取るほどだった。


 「……ちょっと考え事しててな。集中してへんかった。悪い」

 「いや、責めるつもりでいったわけじゃなくてな。考え事なら相手なるぜ? ま、今日は先客いるから無理やけど! キラーん!」

 「キラーん! ってなんだよ!笑笑 ま、話したくなったら相手になってもらうよ」

 「おう! じゃあ、先行くわ! 待たせてるから」

 「おぉー? 女か?」

 「ち、ち、ち、ちげぇ〜し! 違うから! じゃな!」


 冗談で言ってみただけなんだが……怪しいな。陸兎は隠し事下手だからわかりやすすぎる。


 「ま、また今度でいっか。俺も帰……」

 「須藤ぉ〜!」


 後ろから声が聞こえる。この声は……まさか!


 「今帰りか? なんかテニス部は練習試合行ってるって聞いたから……来ちゃった」


 月城だ! そういや、連絡してなかったな。いや、マジか! 脳の処理が追いついてない! あと来ちゃったってなに!? 可愛すぎるぅぅぅぅ!!


 「須藤? まさか試合終わったのか!?」

 「お、終わったけどなんで来たの!?」

 「す、すまんな。須藤のテニスやってる姿を見たいと思ってなぁ……学校だと同じ学校の女子達がいるから……けど見たい気持ちは山々で……違う場所ならなら見れるんじゃって思って……」


 月城が少しもぞもぞしながら話す。あぁ……可愛い。月城は俺を殺す気かな? それにここ近場の大学って言っても月城の家からは逆方向だ。


 「こんな遠くまで来てくれたのに……試合見せれなくてごめんな」

 「何をいうんだ須藤! 私が勝手に来たのだ謝らないでくれ! それに試合はまた今度見るさ。こ、心の準備して私も普段の練習の時行くつもりだ!」


 可愛すぎる。一生そうやって葛藤し続けてほしい! ……けどやっぱり見てはもらいたいよな。アピールの場でもあるし。それに……単純にかっこいいところ見せたいからな。


 「ま、月城が行きたいって思ったらでいいからさ。俺は月城来るまでずっと勝ち続けとくからさ!」

 「そ、そうか! 待っといてく……いや! さっきの言い方だと私が来たら負けるみたいじゃないか!?」

 「そうだな〜月城が来ちゃうと月城の可愛さで試合中倒れちまうわ〜」

 「な! それはダメだ! ちゃんとしっかり勝ってもらわないといけないからな……」


 ちょっと揶揄うつもりで言っただけなんだが、たまに天然出す月城……ダメだ可愛すぎる。


 その時気づいた。周りからの目を。


 (こ、こいつら月城を狙ってやがるな! 早くここから出ないと!)


 「月城! 帰ろう!」

 「あ、あぁ……手……」


 俺は周りからの視線を感じ月城の手をひきそそくさと立ち去った。


 (((((((青春してんな〜)))))))






 「ふぅ……ここまで来たら大丈夫だろ……月城?」

 「あ、あぁ! そうだな!」


 少し顔が赤い? あ……手繋いじゃってる!?


 「ご、ごめん月城! 咄嗟で!」

 「ぜ、全然大丈夫だ! 全然……」


 二人の間に前回同様沈黙が走る。けど、分かれ道はまだまだですごい気まずい状態。


 (や、やばい! 話題を変えよう!)


 「つ、月城って確かイリアムで配信してたよな? ライバー名とか教えてや! 行きたい!」

 「は、配信してるが……ちょっと恥ずかしいな……」

 「そ、そっか……」


 少し残念だ。知ったら月城に会ってない時も月城の声が聞けると思ったのに……


 「……じ、自分のライバー名いうのは恥ずかしいからな……私をフォロワーを教えるのでどうだ? それでわ、私を見つけてくれないかぁ?」


 強烈な一撃をもらった。そんな上目遣いされたら全員落ちるわ! あかんて! 今日は限界やて!!


 「あ、あぁ! 絶対見つけてやるよ!」


 月城の提案はその教えてくれるフォロワーの人がフォローしてるライバーを片っ端から探してくれということだ。

 そんなの任せてくれ! 地球の裏側、時空を超えたとしても月城を見つけてやるよ!(……その教えてくれる人のフォロ数が千とか超えてたりしたら……考えんとこ)


 月城は俺の返事を聞いて嬉しそうにスマホを操作し始めた。……やっぱケースとストラップ……忘れかけていたことも同時に思い出す。

 余計なことを考えてると、月城が自分のスマホの画面を見せてくれた。そして同時に俺は絶句した。


 「この人だ! この人は私が辛い時もずっと支えてくれた人だ。私の枠に欠かせない人なんだ」


 その画面に映るアカウント。ユーザー名は……日・向・。そして、フォロー数1を示すアカウント。


 (俺・の・ア・カ・ウ・ン・ト・だ・)


 え、どういうことだ……なんで月城のフォロワーの中に俺のアカウントが……同姓同名!? いや、けど花凛の枠にくる人に俺以外の日向はいないはずだ! 


 パニックになってて理解できなかった。いや、パニックなどになってない。この事実に頭が……俺自身が受・け・入・れ・ら・れ・な・か・っ・た・。けど、はっきりと分かっている。


 (一之瀬花凛の正体は月城凛で俺が一目惚れした人がずっと推し続けていた配信者!?)


 「あ、ここでお別れだな! じゃあ来た時楽しみにしてるぞ!」 


  そう言い恥ずかしいのに嬉しそうな顔をして月城は駆け出していった。


 俺はというと、そこから動けなくなっていた。


 日向はリアルとイリアムをはっきりと分・け・て・い・た・。イリアムに推しはいるが、言っちゃ悪いが所詮は推し。あくまで自分の心の支えになってくれる存在、手の届かぬ存在と認識していた。

 だから、リアルで月城にガチ恋中だし。推しに尊いとは言うが、愛・し・て・い・る・とか言ったことがない。

 あくまで推し。そう思っていたのに……真実を知ってしまったことにより届かぬ存在だった《推しの花凛》が変わってしまった。

 そして俺のことを好きになってもらおうと頑張っていた《大好きな凛》は届・か・ぬ・存・在・にも思えてくる。


 要するに、異なる二人の存在を受け入れることができないのだ。相反する二人が同一人物だと頭が理解してくれない。


 (最近は俺のことを待っていたから、18時配信ができなかった……全て合点がいった………つ、月城は大好きやし、なんなら愛してるし! 花凛は俺の最強の推しだ! それは変わらないんだが……)


 「“推し”と“好き”はべつなんだよぉぉぉぉぉ!!」




 一方その頃月城は。


 『あ、あぁ! 絶対見つけてやるよ!』


 ……あぁぁぁぁぁぁぁ! なんでそんなこと言えるの!? もうかっこぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


 先程言った日向台詞を思い出しては悶えると言う行為を繰り返していた。


 はぁ……本当に私を女としてみてくれてる。イリアムでの可愛い私ではなく、ありのままの私を。


 「……オ・チ・て・る・な・……流石にわかる。私は須藤の方がもう好きだ。

 私から好きを伝えたいが……もう一度告白してくれって言ってしまったしな……」


 日向は月城と会った初日に告白をしており、最終的にはしっかり交流を重ねてお互いの至る所までしってもなお好きなら付き合おうと言うことになっている。


 「須藤はまだかなぁ……待つのってかなり堪えるものなのかぁ」




 日向は真実を受け入れられるのか!?

 今まで通り花凛の配信を視聴することができるのか!?

 日向は月城にもう一度告白することができるのか!?

 二人が恋人となる日は訪れるのか!?


 これは日向の月城に告白するために葛藤し続ける物語だ。




ーーーーーーー*****ーーーーーーーーー


 ご愛読ありがとうございました!!

 推しの正体が自分の好きな人だった。皆さんならどう思いますか? 教えてくれると嬉しいです!

 面白い! 主人公の葛藤見てぇーよ! ヒロインの可愛いとかもっと見てぇーぞ! って少しでも思ったら下から評価してくれると嬉しいです!

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推しだった配信者の正体は一目惚れしたクラスメイトでした。〜“推し”と“好き”はべつなんだよぉぉぉぉ〜 バベル @baveru10087

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