ラーメンを! 私のためにラーメンを作るのです!

 働いていた料理店が潰れ、困り果てていた“俺”は、人生で一度きり、特別な「スキル」を授かれるという儀式を受けるため教会を訪れる。どん底の人生を逆転できる強大なスキルが得られたら……その願いは、儀式の場へ降臨した“ラーメンの天使”に打ち砕かれた! 天使に強いられた彼は、ラーメンなる見知らぬ料理作りにかからせられる……。

 本作でまず注目したいものは発想。異世界×ラーメン、ノリだけでなくお話へ仕上げるために向き合うには難しいテーマですよね。なにせ中世欧州風異世界には存在しないものですから。

 で、それを実現するためのマクガフィンが天使さんですよ。理不尽に押し出しの強い彼女が物語を駆動させ、本来「パスタの達人」というスキルを得るはずだった“俺”さんの人生をねじ曲げてまでラーメンを顕現させる。単純にキャラが立っているというだけでなく、作品そのものの形を定めるギミックとして機能していることに、思わず唸らされましたよ。

 技は力の中にあり。その意味を思いきり味わえる異世界コメディーです。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)