最終話

「じゃあ俺たちも始めるか。最後の話し合いを。」


「そうだね、お兄ちゃん。でもその前に、なんで私を幸せにしたら死ぬ予定だったのかまだ教えてもらってないんだけど?」


「だから俺なりの贖罪だっt『そういうのいいから。』……わかったよ。茜がいじめられてた時に何もしてやれなかった自分が恥ずかしくて……。」 


「お兄ちゃん。」


「なんだ?」


「あのですね。忘れてるかもだけど、私がいじめられてたの、嘘だからね。」


「……そうだったぁぁぁー‼︎俺ってばもしかして相当バカ?」 


「もしかしてじゃなくて確実にバカだね。」


「お前にだけは言われたくないわ‼︎」


「あはは、ごめんごめん。というか、私を助けられなかっただけで死のうとするなんてお兄ちゃん、私のこと好き過ぎるでしょ。」


「うっさい。茜と優美と春香さんしか近くにいなかったんだからしょうがないだろ。それに俺がお前のことが好きなのなんて今更だし。って茜、顔真っ赤だけど大丈夫か?」


「もう‼︎お兄ちゃんは、もう‼︎」


「そうかそうか。そんなに嬉しかったか。」


「ねぇ、私の照れ方がワンパターンな件について。」


「それはお前のキャラが薄いからで『んん〜?なんて〜?(怒りのオーラ)』申し訳ございませんでした‼︎」


「私のせいじゃないもん‼︎作者があんまり考えてないだけだもん‼︎」


「だからメタ発言禁止な、茜。」


「うん‼︎」


「いい返事でちゅね茜ちゃん。」


「いくらお兄ちゃんでも今のはキモイわよ。」


「知ってた〜。じゃなくて‼︎最後の話し合いするって言ってたよな‼︎しかもシリアス展開必至のやつ‼︎」


「あぁ〜そういえばそんなこともあったわね。」


「何が悲しくて漫才しなきゃならんのだ。」


「いいじゃん。これくらいの雰囲気の方が私たちには合ってるって。」


「まぁ、な。」


「じゃあ死ぬか死なないかサクッと決めちゃおっか。」


「嫌そんな明るい雰囲気で言われましても……ってまぁいっか。」


「お兄ちゃん、私と死んでくれませんか?」



 こんな真剣な茜は見たことがない気がする。

 だから俺は笑顔で、そして静かにこう口にする。



「やだ。」



 茜もまた硬直。

 さぁ睨み合い。

 見合って見合ってぇ〜。



「……なんでよ‼︎」


「俺はまだ死にたくねぇって言ってるだろ‼︎」


「だからなんでよ‼︎」


「仮にお前のいじめが偽装でも、俺が何もしなかったのは事実だからだよ‼︎」


「だから何よ‼︎」


「お前を幸せにできてない‼︎だから俺はまだ死ねないんだ‼︎」


「ぷっ。アハッアハハハハハハ、はぁ〜……クツクツクツクツ『笑いすぎだろ‼︎』ぷはぁ〜笑った笑ったこんなに笑ったのいつぶりだろ?」


「で、何がおかしかったんだ?」


「いやぁ〜だってお兄ちゃんは私が幸せじゃないと思ってるから死にたくないんでしょ?」


「まぁそうだけど。」


「お兄ちゃん、勘違いしてるよ。私ね、今すっごい幸せだよ。」


「は?そんなわけないだろ。ただ喧嘩してるだけだぞ。」


「も〜わかってないなぁ〜お兄ちゃんは。私達今までそういうのしてこなかったでしょ?だからこういうなんでもない普通の時間が幸せなんだよ。」


「茜……。」


「お兄ちゃん……。」


「死ぬか死なないかで喧嘩してるのは普通じゃないと思うぞ。」


「実は私もそれ思ってた。」


「「ぷっアハハハ、アハハハハハハ。」」



 美形の兄妹が夕日で照らされた芦ノ湖をバックに笑う。

 絶景かな絶景かな。



「ふぅ、お兄ちゃん。」


「なんだ、茜?」


「今幸せ?」


「今それ聞くか?」


「うん。じゃあせーので言おっか。」


「なんで?」


「なんでも。」


「まぁ、わかった。じゃあいくぞ、せーの。」


「「幸せぇ〜‼︎‼︎」」


「ふふふ。お兄ちゃん。」


「ん?」


「名前呼んでみただけ。」


「そっか。」


「お兄ちゃん。」


「なんだ?」


「そろそろ日も暮れるし、サクッと心中しよっか。」


「そうだな。」


「お、ということは?」


「いいよ。十分お前は幸せなんだな。」


「うん‼︎私はお兄ちゃんの妹になれた時からずっと幸せだよ。」


「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。」


「掛け声どうする?」


「せーので良くないか?」


「えぇ〜人生最後の掛け声だよ。」


「う〜ん。じゃあ『愛してるぅ〜』は?」


「ん〜及第点。」


「というか入水に掛け声いらなくね?」


「まさかの盲点。」


「じゃあ手、繋いで行くか。」


「そうだね。」


「やっぱ恋人繋ぎになるんだな。」


「だって私達恋人で兄妹だもん。」


「茜、俺はお前の恋人で、兄で、家族で本当に良かった。愛してるぞ。」


「うん。私もお兄ちゃんが、いや恋人だから下の名前で読んだ方がいいか。照、照、照兄……照兄だ。じゃあ改めて、照兄。照兄がお兄ちゃんで、彼氏で、いつもそばにいてくれてありがとう。愛してる。」


「うん。じゃあ行くか。」


「うん。私たちの未来へ。」


































 そして2人は芦ノ湖の水底へと溶けていった。






















        

















          <完>

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妹に何もしてやれなかった俺が今度こそ幸せにするまでは死ねない話 妹が欲しい不眠症 @fuminsyo

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