花園

 食事処を出たホノカとンベルは、次にヒガシヤマ園に移動した。


 ヒガシヤマ園は辺り一面に様々な花が植えられていて、花々の間に人が五人並んで歩けるほどの道が伸びている。


 そして、ホノカとンベルは周囲に咲いている花を見渡しながら園内を進んでいた。


 それから、ホノカは明るい笑顔を作りながら手を額にかざす。


「うーん、お花が綺麗だねー」


「うぅ、お花の匂いが強くてふらふらしそう」


「えっ、大丈夫?」


「うん……。口呼吸でなんとかしのいでみる」 


「そっか。ムリそうなら言ってね。ちなみに、ンベルは何のお花が好きなの?」


「ヒマワリ!」


「ヒマワリ?」


 ホノカは腕を組みながら小首をかしげ、空を見つめる。

 そして、微笑みながら顔の近くで手を叩いた。


「……あっ、太陽に向いて咲くから、その明るそうな特徴が好きなのかな?」


「種を食べることができるから」


「えっ、そっち!?」


 目を見開いてたじろぐホノカ。


 一方、他の来園者はホノカとンベルの様子を横目で確認しながら通り過ぎていく。


(この子はなぜ猫人間キャヒュマンットと一緒に?)


 ホノカは小さなため息をつき、乾いた笑みを作りながら呟いた。


「まぁ、理由なんて人それぞれだからそれでいいんだけど。それより、この黄色い百合ゆり達の前で、一緒に写真撮らない?」


「うん、撮ろうー!」


 ホノカとンベルは花畑を背にし、密着するように横に並ぶ。

 それから、ホノカはペンダントに触れ、前方に映像を映し出し、つついていく。

 そして、ペンダントを軽く握り、ホノカとンベルの間の前方にかざすと、ホノカとンベルの上半身が映像に反映されていった。


「いくよー、表情はそのままでいい?」


「……あえて変顔する?」


「したいならそれでもいいけど」


「うーん……普通にいこう。笑顔で!」


「了解!」


 ホノカとンベルは口角を上げた表情を正面に向け続ける。

 それから、ペンダントから軽い電子音が流れ、撮影終了を告げた。


 また、ホノカがペンダント端末を手から離すとそのまま落下していき、胸の近くで揺れ続けていった。


「よっし、終わり!」


「……ボクと写真撮ってくれてありがとう」


「ん?」


 ンベルは首を高速で横に振り、笑顔をホノカに向ける。


「何でもない!」


「写真なんていくらでも撮るよ? いや、これからも一緒に撮ろうね?」


 ンベルは顔を少し赤く染めながら顔を歪め、大きな咳をした。


「……しゃごっ、しゃごっ!」


「あぁ、大丈夫?」


「大丈夫大丈夫!」


「ムリはしなくていいんだからね?」


「余裕だよー! 今回のは花粉でやられただけだから」


「うっ、まぎらわしい!」


「ごめんね。それより、もっと奥に行こう」


 ンベルはこぶしを突き上げながらホノカの手を強く握る。

 そして、園の中心に向かって手を引っ張っていった。


 一方、ホノカも顔をしかめながら咳き込む。


「ふぁごっ、ふぁごっ!」


「ん、大丈夫?」


「……もしかして、ンベルのがうつっちゃったかな?」


 ホノカとンベルは明るい笑顔を作りながら、色とりどりの花畑の中に突き進んでいった。

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仲良しとのお出かけは、とても楽しい !~よたみてい書 @kaitemitayo

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