体に染み渡る酢
数分後、女性店員は両手に小皿を
「お待たせしましたー」
それから、二人の横のベンチにところてんを置いたら、再び店の奥に戻っていく。
ホノカとンベルはところてんが入った小皿を拾い、一緒についてきた箸を空いている手で持つ。
ホノカは箸を透明な細い食べ物の束に入れながら言葉を漏らす。
「美味しそうだねー」
ンベルも小さく頷き、微笑みながら箸でところてんをつつく。
「うん。透き通っていて綺麗だねー」
二人は薄黒く染まったところてんを箸で挟みこみ、口に運んでいった。
そして、すぐにホノカは明るい笑顔を作りながら言葉を投げかける。
「うん、やっぱり美味しい! 噛み応えがあって美味しい!」
「この弾力具合いいよね。そのうえ簡単に歯で切れるから、すぐ飲み込める」
二人はしばらくの間、ところてんを口に運ぶ作業を黙々と続けた。
すると、ホノカはンベルが持っているところてんを見つめながら呟く。
「ねぇ、ンベルの黒蜜ちょっと食べていい?」
「えっ、もちろんいいよー。……あ、ボクも酢醤油食べたいな」
「もちろん!」
ホノカはところてんを箸ですくい、小皿と一緒にンベルの口に近づけていった。
「はい、口開けて」
「えっ? ……あ、うん」
ンベルは目を見開きながら戸惑ったけど、すぐに大きな口を開け、可愛らしい犬歯を見せつける。
それから、ホノカはンベルの口の中に箸と一緒にところてんを突っ込ませた。
すると、ンベルは顔をしかめさせながら咳き込む。
「しゃごっ、しゃごっ!」
ホノカは眉尻を下げながらンベルの背中を優しく撫でていく。
「あ、大丈夫?」
「大丈夫! ちょっとむせただけだから! しゃごっ、しゃごっ!」
そして、ンベルは口を閉じると、小さく口を動かし始める。
「……あ、ちょっぴり酸味の
「うん。体が容易に受け入れてくれるよね」
一方、ンベルもところてんを箸で挟みこんだら、小皿を添えながらホノカの口元に近づけていく。
そして、小さな笑顔を作りながら大きく口を開けるホノカ。
ところてんを口で受け止めたら、すぐに口を閉じ、静かに口を動かしていく。
「……あっ、なんか違う食べ物みたい。なんだろ、おやつを食べている感覚になるね」
「薄い味のところてんが黒蜜の甘さを強く引き立ててるよね」
ホノカとンベルは笑顔を浮かべながら互いの口に自分のところてんをしばらくの間運び続けていった。
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