Booing・ROOKIES

自由派chicken

Prologue

たちの「あれ?もしかして、【牛肉】じゃね?あの、『裸の無頼漢』の?」


牛肉「もしかしなくても牛肉やし、確信あって話しかけとるやろお前。」


ライマーとしては“同期”であり“同世代”であったが、活動地域の違いからあまり接触が無かった2人──。

仕事の都合から【たちの】が関西を訪れた時に偶然同じ飲食店で出くわした【牛肉】。

この“なんでもない偶然”から、物語は動き始めていた──。


たちの「懐かしいなあ!いつだっけ?会ったの?昔?昔だなたぶん!」


牛肉「ざっくりしすぎやろ・・・。」


たちの「良すぎ!?」


牛肉「いや何が!?」


しばらく互いの近況を話していた2人だったが、やはり【ライマー】という立場から話題は“そこ”に行き着く。


たちの「で?どーよ最近?韻踏んでる?」


牛肉「んー?まあ、踏んでるといえば踏んでるし、踏んでないといえば踏んでないな。」


たちの「どっちやねん!!」


牛肉「エセ関西弁やめーや!」


たちの「いや最近さあ・・・ハンドレ・・・って言ってもわかんねーか・・・まあいいや、ハンドレでの活動も刺激が欲しくてさぁ・・・」


牛肉「いや、こっちがわかんない体のまま話を進めんな?ハンドレ知ってるけども!」


たちの「なら、ええやん?」


牛肉「お前ホントええ加減にせえよ(笑)」


たちの「で、さ!こうして偶然会ったんだからなんかアイデアないかな、と。」


そう【牛肉】へ話しかけながら、【たちの】は皿の焼き鳥を頬張る。


牛肉「そうやなぁ・・・こっちはこっちで色々とやっとるけど、真新しいことはこれといってないなあ・・・結局は昔っからおるライマー同士でバトルしとる感じやな。」


たちの「ふーん・・・」


ふとテレビを見ると、慌ただしくキャスターが速報のニュースを読み上げている。


「ただいま入ってきたニュースです。大阪市内のビルにて立てこもり事件が発生。犯人の男は人質をとって『解放してほしければ自己紹介をしろ』、『自己紹介はまだか?』などと意味のわからない要求をしている模様です。続報が入り次第お知らせしたいと思います。」


たちの「物騒だな・・・大阪。」


牛肉「いや、こんなんよくあるで。」


二人の会話が途切れるようになり、テーブルの料理が無くなりそうになった頃──。

注文していないはずの料理が運ばれてきた。


???「お待たせいたしました。『ホークブリザードの山賊焼き』と『松坂牛の珍棒』、『ディープインパクトの馬刺し』になります。」


たちの「料理名無骨すぎ!?」


牛肉「そんなん頼むわけないやん・・・!!」


二人「あ!!」


料理を運んできた無精髭の男──。

それもまた二人と同期であるライマー、【たっと】であった。


たちの「知ってる!けど誰!?」


牛肉「思い出せたちの!俺はたぶんできんから頑張って思い出せ!」


たっと「失礼すぎるなあ!ココ俺の店だぞ!出禁にしてもいいんだぞ!?」


たちの「じゃあ牛肉、次行く?」


牛肉「せやな」


たっと「やめろ!!!」


偶然に次ぐ偶然。

それは必然だったのかもしれない。

だが当事者の三人にとって、この時点では『ラッキー』でもなければ『アンラッキー』でもない。


たちの「いやごめんごめん、どーせあれだろ?お前たっとだろ?」


たっと「どーせ!?」


牛肉「おお!さすがたちの!!思い出した!!で・・・これはサービスか?なら食べるが?つーか食べても金は払いたくないな!?」


たっと「俺の扱いの悪さ!の、良さ!」


牛肉「・・・いや、これ美味いやん普通に」


【たちの】と【牛肉】は出てきた料理に舌鼓を打ちながら、【たっと】に同じ話題を持ちかける。


たちの「たっと最近どう?出身は東北のほうだっけ?バトルとかやってんの?」


牛肉「たちの、東北なんてライムバトルとかよりリアルバトルが主流の世紀末みたいなとこやぞ?」


たっと「誰がモヒカン肩パッドだ!俺も現役だし若い奴らもバリバリやっとるわ!」


何気なく出た【たっと】のその言葉に、【たちの】が反応した。


たちの「『若い奴ら』?そうなの?」


その言葉に、【たっと】は腕組みをしながら応える。


たっと「そーよ。若い奴ら。なんつーか、俺らとはまたちょっと違う感性を持った奴らだな!あれはあれでアリだな!」


牛肉「たっとが『アリ』なら世間的には『ナシ』ってことか?」


たっと「なんでだよ!!」


そんなやりとりを見ながら、【たちの】は目の前のビールを勢い良く飲み干す。


たちの「おかわり。」


牛肉「お。どした?」


たっと「おーい!生2つ!あ、牛肉の分もか。3つ持ってきてー!」


数分も経たないうちに、テーブルにはキンキンに冷えたビールが3つ並ぶ。

それぞれが取っ手に手をかけた時、【たちの】が口を開いた。


たちの「閃いた。俺達が、俺達好みの若い奴らを選んで大会を開こう。そうだな・・・名前は・・・『ROOKIES Cup』。うん、シンプルにこれで。」


その発言を受け、ジョッキに手をかけたまま料理を食べる【牛肉】が続く。


牛肉「お前なぁ・・・そんな思いつきで・・・と、言いたいとこやが・・・賛成で。」


今にも乾杯しそうな二人を見ながら【たっと】は無言で頷き、ジョッキを掲げた。


たちの「よし、決まりだ。それぞれ知り合いのライマーに連絡したりして、ある程度の参加人数を確保できるようにしよう。」


牛肉「せやな。とりあえず【因幡うあ】、【Chicag023】あたりには声かけてみる。」


たっと「俺は【レジスタンス】とちょいちょい連絡とってるから、聞いてみるわ!」


三人が三人ともジョッキを握り、今まさにぶつけようとした時──。

それを遮るように【たちの】が言う。


たちの「つーか、若手達を推薦するライマーで大会開いても盛り上がるレベルだよな(笑)」


たっと「間違いない(笑)」


牛肉「それは言うなよ(笑)」



コンッ



水滴まみれのジョッキが3つ、ぶつかり合った音が店内に響く。

それは、新たな伝説への『始まりのゴング』であった──。



【ROOKIES Cup】開幕の時──。

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