第2話 君だけで十分

「あ、先輩だ」


そこには、1人で本を読みながら購買に売っている菓子パンを齧る先輩が居た。


「おーい、│幸祐こうすけ!何してるんだ!早く行くぞ!」


「へーい」


俺は先輩に話し掛けようとしたが、友達に呼ばれたので話し掛けずに行くことにした。



「先輩、先輩って友達いないんですか?」


「……喧嘩売ってる?」


先輩は本を読むのを辞め、こちらを睨む。


「売ってないです売ってないです。先輩を見かける時いつも1人で居るので」


すると先輩は、少し間を開けて


「別に友達くらい居る」


「え、でも先輩が誰かと一緒にいる所を見たことがないんですけど」


「…友達は居る。でも友達は選んで決めるタイプだから少ないだけ」


「へぇ、じゃあ誰と友達何ですか?」


俺がそう言うと、先輩は少し考え込んだ。


「…本屋の店員とか」


「他には?」


「駄菓子屋のおばちゃん」


「他には?」


「……カフェの店長」


「………学校の友達は?」


俺がそう聞くと、先輩は黙り込む。


「やっぱり居ないんですね。俺が言うのもあれですけど友達は作っておいた方が「…みが…る」え?」


「だ、だから君が…居る」


「……他には?」


「…私には君が居れば十分」


俺の頬がぶわっと一気に熱くなる。俺はそれを見られないように机に突っ伏せる。

いやいや、ダメだ。勘違いするな。先輩は舌足らずなだけだから。

俺は自分にそう言い聞かせ、心を静める。


「先輩、男の人にそんなこと言っちゃダメですからね…」


「?なんで」


「男は女の人が思っているよりチョロいので」


「?」


先輩は今日も無自覚に俺の心を暖かくしてくれる。

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先輩(女)は今日も無自覚 猫のストーカー @konohageeeee

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