傷や血の、まるで身に迫るかのような生々しさ

 傷や血にまつわる変わった性的嗜好を持つ、とあるカップルのお話。

 いわゆる惚れた腫れたの恋愛劇ではなく、すでに成立したカップルの様子を描いた物語です。
 つまり内容そのものはいわゆる「いちゃラブ」的なもののはずなのですけれど、読んだ印象としては全然そんな気はしない……と、いうところがきっと本作最大の魅力。

 紹介文にある「グロ注意」の文言の通り、特殊な性的フェティシズムとその描写こそがこの作品の本体です。

 なにがすごいってその生々しさ。
 体に傷を残すことや、血を出したり飲んだりする行為への執着が、とにかく身に迫るような感覚で描写されています。

 自分ならきっとしないであろう行為で、そういう意味ではファンタジーであるはずなのに、でもそう感じさせてくれないこの現実味。
 行為そのものの実行可能性というか、「健康には良くなさそうだけど、実行不可能ではなくまた犯罪でもなさそうなので、やる分には誰でも普通にやれる」感が絶妙で、物語を他人事にさせてくれないところが本当に好きです。

 紹介文で示された数々の〝ヘキ〟に対して、どこまでも丁寧で手加減のないところが嬉しい作品でした。