【あとがき――という名の簡単な解説】



 はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。

 吹井賢です。


 こちらの『読心探偵・鞍馬輪廻』は「5分で読書」短編小説コンテスト2022に応募する為に書いた作品なのですが……。作者としてはイマイチかな?という感じの短編です。もうちょっと面白くできたような気がするんですけど、どうすれば良いか分からなかったんですよね。

 なので、そうですね。「鞍馬輪廻・中学生編」くらいのノリで楽しんでいただければと思っています。


 こちらの『鞍馬輪廻』というキャラクターは、『僕のホームズ、紹介します!』のレギュラーキャラクターです。『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』でも断片的に触れられていますね。「人の心が読める」という特性を持っており、その能力を使って、犯人を逆算する形で当てるという、ミステリの犯人サイドからしたら堪ったもんじゃないキャラです。

 というか、人の心が読める奴なんて、バトルモノでも扱いに困りますし、事実として彼は一般人にあるまじき強さを持っています。主に、精神面で。そこが面白いんですけど。

 本人に言わせれば、「人の心が読める」は言い過ぎであって、「感受性が豊かなだけ」なんですが、相手がどんなに取り繕おうとも、どんな言葉を紡ごうとも、その感情を正確に感じ取れてしまう彼は、「人の心が読める」と言って過言ではないと思います。読み取りたくなくとも読み取ってしまうところが玉に瑕ですけどね。吹井賢が作品の中で一貫して書いている、「才能や強さは呪いに成り得る」の典型例です。


 ミステリ掌編なのでトリックの話をしようと思うのですが、実は今回の謎解きは、『僕のホームズ、紹介します!』の一遍、『固茹で卵には早過ぎる』の解答編も兼ねています。

 あちらの冒頭と終盤で、「鞍馬輪廻の同僚が手紙を預かったが、いつの間にか白紙になっていた」という話をしているのですが、結局、その謎は明かされないままなのです。ですから、こちらの作品の方が時系列的には過去なのですが、メタ的には、「過去作の謎の種明かし」の側面を持っています。ややこしいですね。

 元ネタは、『ミス・マープルシリーズ』の『動機対機会』という短編です。向こうでアルマが触れている作品も、こちらで輪廻が話している作品も、これを指しています。

 ぶっちゃけ、今回の謎は、「毒入りグラスを取らせたいのならばそういう指示をすればいい」「指示が証拠になるならば消えるものを使えばいい」という、ただそれだけのものです。真相を当てられた人も多かったんじゃないかな?

 なお、今回の謎のある部分は、『金田一少年の事件簿』のある事件を参考にして書いているので、ファンの人は余計にすぐ分かったかもしれませんね。その元ネタに当たる事件を知っていても、それだけでは解けないのですが。それはそう、アルマの言うところの、「物事の基本は応用」というやつです。


 最後に余談を。

 今回、登場した『御寺ソラ』という刑事ですが、鞍馬輪廻がかなり幼い頃からの付き合いです。というよりも、彼女の妹が輪廻の幼馴染です。なので、輪廻の側からすると、「幼馴染の姉」「近所のお姉ちゃん」くらいの関係性ですね。

 そして、彼女の妹がまた曲者で、輪廻との関係性も面白いのですが……。

 それはまた、いつかの機会に。


 この作品が、皆様の一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。

 それでは、吹井賢でした。


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読心探偵・鞍馬輪廻 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010

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