第91話 コイツらは死んだ
ダンジョン探索を終えてベースキャンプへと戻ってきた私だ。相変わらずベースキャンプにいるのは美人とか美少女ばかり、そして装備は露出度高めのエロコスである。
眼福眼福、しかしそんな気分が良い私の元に不機嫌になる原因が現れた。
「アー……いやっ暗黒騎士殿、成果は上々ですか?」
「……まあボチボチです」
私の目の前には美人が立っている、しかしこの美人は偽物の美人だ。コイツは私が魔法で美女にしてやった就活軍団の一人である、名前とか覚えていいないけど。今は何食わぬ顔でチャイナドレスを装備している猛者だ。
コイツらは死んだ。
最早以前にあったこのダンジョンに就職して立身出世を目指そうとしていた野心はコイツら就活軍団には……ない。
理由は簡単である。コイツらは気付いてしまったのだ、就職して働くよりもダンジョンを探索して宝箱から手に入れたお宝を集めて金に換えた方がはるかに儲かる事実に。
当たり前だ、冒険者は安定性ゼロ、しかし実力さえあれば公務員レベルの年収なんて数日で稼げる夢のある職業である。
コイツらの元々の能力の程は興味もないので知らないが、ダンジョン産の強力な装備をして頭数を揃えてダンジョンに迎えばある程度の成果を出せるレベルではある。
大金を得ることが出来る目処が立ったコイツらに、最早就活する意志なんてないのだ。
この私が『プリンセスティアラ』なんてアイテムまで使って美少女に変身したのに、コイツらはTSドラゴンの心意気を踏み躙った。
だからもうコイツらの探索には力を貸さないと決めたのだ。後は好きに生きるがいい元就活軍団共め、ピンチになっても助けてなんてやらんからな。
プリプリおこおこドラゴンである。
パチもん美人とテキトーな話をした後は別れてベースキャンプにいる商人の元に向かった。
それなりに大きなテント、入口に木の板に『パルメーラ商店』と書かれている。
テントの中に入る。
「こんにちはパルメーラさん。ダンジョンから持ち帰ったお宝の鑑定をお願いします」
「あいよ! ってアージェンか、少し待っといてね~」
金髪のボブカット、そして緑色の瞳をした美人、それがパルメーラである。服装はダンジョンに向かう事もないので普通の商人スタイルである、しかし鑑定の技術は大した物でちゃんとした値段で買い取ってくれる。
彼女は大きな商団の商人で、この島の結界を越えてこのベースキャンプまで来た数少ない女性の商人である。買い取った装備品をまとめて数日に一度は島の沿岸部に停めてある商船へと荷物を運ぶ護衛依頼を受けた時に仲良くなったのだ。
別にお金に苦労してる訳ではないが、ベースキャンプは何かと小さなコミュニティなので一人だけ浮いた行動をするのも悪目立ちする、そこで一応は冒険者らしい事もしている私だ。
「おっこれは魔力が付与された水着だね、品質も悪くないね」
「思ったのですが、これって売れる物なんですか?」
「当然よ、魔力で守られた水着を着れば夏場の海の紫外線カットもしてくれるし、海水からのダメージから肌の艶も守ってくれるのよ? シーズン中なら金持ちが大金を出すわ」
なんとまあ。人間もそうだけど、モンスターも欲望が果てしないですな~~。
「モンスターの世界も金金金だね、まあお陰で商売で飯が食えるんだけど」
「こちらも命懸けで取ってきた物がお金に変わるから生活出来ていますからね」
「確かにね、ダンジョンは命懸け。くれぐれも無理はしないでよアージェン」
「はい、私もまだ死ぬつもりはありませんから」
「その若さで死んだらバチが当たるからね、全く……」
多分若くは……いやっ心の中は永遠に十代の若者ドラゴンである、パルメーラとたわいない会話をしてあぶない水着は無事に売却完了。
私はテントを出た。
今日はもう日も沈みかけである、ベースキャンプのテントで雑魚寝するか、魔法で作られた簡易的な居住区で金を払って個室で寝るか、それとも転移して飛行艇で休むか迷うな~。
「あっアージェンさんですん!」
「チワさん、こんにちは」
声のした方を見るとチワパーティーを発見した。相変わらず五人で仲良くダンジョン探索に励んでいる様子だ。
私は今のところ彼女達とは別にダンジョン探索をしている、まあ一応魔法で彼女達の無事を確認はしてるけど。
チワパーティーは堅実にダンジョンを攻略するタイプなのでやはりそこまでのスピードでは攻略は進まない。まあ無理して全滅とかされたら私としても残念な気分になるのでそれで良いと思う。
唯一の問題は飛行艇にお留守番をさせているエフェメットだ。流石にあまりのんびりし過ぎるとドラプリの件でまた小言の念話が飛んできそうである。
三日に一度は顔を出して宥めている私だ、まあまだ時間はあるんだし大丈夫だろう。
ダンジョンなんてドラゴンさんが本気になればチョチョイのチョイでクリア出来るのだ、今はこの探索の日々を楽しもうじゃないか。
チワと話をする、今日の冒険話をしたいと言ってきたので近くの食堂に向かい話をする事にした私だ。
前世が日本人だったアクが強いドラゴンのファンタジー職業体験記 どらいあい @driai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。前世が日本人だったアクが強いドラゴンのファンタジー職業体験記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます