第3話
スーパーで安酒をかごに詰めているときほど虚しいときはない。
これが誰かと飲むなら少しでもかっこつくものだろうが、かごに積まれたものはすべて自分のためだ。何かを飲まないとやってられないというか、何かを飲んで自分が生きていることも忘れてしまいたいというか。自分がそこにいる意味を感じ取れなくなったとき、自分を感じ取ってあげるために飲むというか。
自分が自分でないようなふわふわした心地に包まれれば自分の感情ごと魂が浮いて自分を自分で見てあげることができると思うから。
でも大抵の場合、自分を自分で見たときは自分がどれくらい愚かかをまざまざと見せつけられるだけで自分を救ってやることも抱き上げてあげることもできないんだ。殴って殴って傷つけて傷つけて。自分を傷つける自分がそこにいるだけなんだ。
価値観の違いで他人と争った時よりももっと傷つくことになる。自分がわかる自分は自分の思う自分の形をしていないから。確実に自分の心をえぐる爪をもっているし、魂を砕く顎を持っているから。
温かさなんて微塵も感じない。冷たさだけを浮かんだ自分から感じ取ることができる。酒をかごに詰めてるときは虚しい気持ちでいっぱいなのにそれを覆いつくすほど憎悪と憤怒に襲われる。
安酒をかごに詰めているときの虚しさはそれがわかっていても飲んでしまう自分の弱さをはっきりと感じてしまうからだ。
今日も自分は安酒をかごに詰めている。
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