酒を飲んで忘れるか
空っぽの無能
第1話
酒を飲んで忘れるか。
今日生きてきた記憶も今日つらかったことも今日幸せだったことも。
辛さは幸せを引き立たせる。幸せは辛さを浮き彫りにする。
酒を飲んで忘れるか。
過去に犯した過ちを。これからの希望を。
過去の過ちは消えることもない。これからの希望は叶うかも分からない。無駄な希望はもたない。裏切られたような気持ちになるから。過ちは消えない。でも私を裏切らない。
どんなことも忘れてしまいたい。私が思ったこともこれから思うことも。
私の存在を消してしまいたい。死にたいわけでもなく。
今思う。私があそこにいなければ。
私があそこにいなければ、私に傷つけられた人は少なくともあそこで傷つくことはなかったし、私があそこにいなければ、私が壊したものは壊れずに今も残っているかもしれない。
たとえそれがどちらにせよ起こっていたことだとしても、私がいなければ、私がいなければ。
お酒を飲んで忘れてしまいたい。
私は過去を忘れてしまえば強くなれると希望的観測を抱いている。私は過去を想わなければ今を歩けると思っている。お酒を飲んでも彩られるのは過去ばかりであるというのに。
私の希望に花は咲かない。快は不快を身体に残すばかりで。今の私に残されるのは毒と吐瀉物。
お酒を飲んですべてを忘れてしまいたい。
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