第4話 渾身の一撃
カーテンに朝陽が当たる。ベッドで寝ていた光は寝返りの拍子に目を覚ました。
大きな生欠伸をする。片方の目を擦りながら上体を起こした。ぼんやりした目で何かを探すように周囲を見回す。
「やあ、おはよう。僕はついに手に入れたよ。本来の姿を」
「なに、それ?」
強い瞬きをして声の方を向く。カーテンの側にいた。途端に不審者を見るような鋭い眼付きとなった。
「あんた、誰よ」
「冗談はやめてよ。僕だよ。君が愛する拓馬だよ」
「はあ?」
拓馬を名乗った人物は腹が出ていた。ランニングシャツは肩の肉に食い込み、今にも切れそうな状態だった。
顔は何百回も平手打ちを受けたように膨らみ、頬で押された目は糸目となっていた。
「どこが拓馬なのよ」
「だって拓馬なんだから仕方ないじゃないか。仇名はクマさんだよ。前に言ったことあったよね?」
「クマさんって……包容力があって優しいからじゃないの?」
「違うよ。見た目のクマさんだよ」
大きな腹を揺すった。笑っているようだった。
「その声、確かに拓馬かも……」
「だから拓馬なんだよ」
「そう、よくわかったわ」
光は静かにベッドから降りる。拓馬に向かって歩きながら右の拳を固めた。
「わかってくれたんだね」
「悪霊退散!」
神々しい光に包まれた右拳を相手の腹部に叩き込む。断末魔を上げて吹き飛び、窓を突き抜けて消え去った。
「これでいいわね」
光は爽やかな笑顔を見せた。
キッチンでは母親が卵焼きを焼いていた。光の姿を見ると弾む声で言った。
「おはよう。今日もご飯はどんぶりに山盛りでいいのよね」
「なんでよ。普通の茶碗にして」
「具合でも悪い?」
「全然、そんなことないよ。逆に清々しい気分だね」
光は満面の笑みで席に着いた。
霊感少女は一撃で吹き飛ばす 黒羽カラス @fullswing
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