第3話 イエスの教え


【律法について】(マタイ)

イエスは言われた「私が来たのは律法を廃止し、預言者を否定する為では無い。そうでは無く、寧ろ完成する為である。はっきり言っておくが、全てのことが実現し、天地が消え失せるその時まで、律法から、その文字の一画、一点さえ消えることは無い。だから、律法の最も小さな掟を一つでも破り、また、そうするように人を唆す者は、天の御国では最も小さい者と呼ばれる。しかし、律法の一つも疎かにせず、守る者は、天の御国で大いなる者と呼ばれる。言っておくが、あなた方の義が、律法学者やファイリサイ人たちの義に勝っていなければ、あなた方は決して天の御国に入ることはできない。」


【腹を立ててはならない】(マタイ)

「あなた方も知っている通り、古から『殺すな。人を殺した者は裁きを受ける』と命じられている。しかし、私は言っておく、兄弟に腹を立てる者も皆裁きを受ける。兄弟に対し『バカ』と言う者は、最高法院(サンヘドリン)へと引き渡され、『愚か者』と言う者は、火の地獄へと投げ込まれる。だから、あなたが祭壇に供え物を献げようとした時、兄弟の自分に対する反感を思い出したなら、先ず兄弟に会いに行き仲直りをしてから、供え物を献げなさい。あなたを訴える人と同じ道行きになったなら、裁判所へ着く前に和解しなさい。さもなければ、裁判官はあなたを下役に引き渡し、あなたは牢に投げ込まれるに違いない。はっきり言っておくが、最後の1クァドランス(※)を返済する迄、そこから出ることはできない。」

(※)クァドランスはローマ帝国の通貨単位で1デナリオンの64分の1。


【姦淫してはならない】(マタイ)実に耳が痛い。

「あなた方も聞いている通り、『姦淫するな』と命じれれている。しかし、私は言っておく。淫らな想いを持って他人の妻を見る者は、誰でも既に心の中でその女を犯したのである。もし、右目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。体の一部が無くなっても、全身が地獄に投げ込まれるよりはマシである。もし、右手があなたをつまずかせるなら、切り捨ててしまいなさい。体の一部が無くなったとしても、全身が地獄に落ちるよりマシである。」


【離婚してはならない】(マタイ)

「律法では『離婚する時は、離縁状を渡せ』と命じられている。しかし、私は言っておく。不法な婚姻で無い限り、離婚する者は誰でも姦淫の罪を犯すことになる。離婚した者と結婚する者もまた、姦通の罪を犯すことになる。」


【誓ってはならない】(マタイ)

「古から『偽りの誓いを立ててはならない。主に対して誓ったことは、必ず果たせ』と命じられている。しかし、私は言っておく。一切誓いを立ててはならない。天にかけて誓ってはならない、そこは神の玉座である。地にかけて誓ってはならない、そこは神の足台である。エルサレムにかけて誓ってはならない。そこは大王の都である。あなたの頭にかけて誓ってもならない。自分の髪の毛の一本すら、あなたは白くも黒くもできないからである。あなたがたは『然り、然り』『否、否』とだけ言いなさい。それ以外のことは悪い者の口からでるのである。」


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イエス言行録 福音12.0 @kakakeke

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