最終話

儀式は、無事終了した。

机は、長さ10メートルを超える大剣へと姿を変えた。重さも500㎏を超え、まさに神器というのにふさわしい。

「勇者をここへ。え~っと、ユウキだったか。彼を早く呼んでこい」

国王は、臣下に命令した。


「失礼します、勇者ユウキをお連れしました」

「うむ、入れ」

俺は国王の前へ向かった。

「陰上勇机、ただいま参上しました」

「さて、勇者ユウキよ。汝に、森の魔王討伐を命ずる。この神器を使い、森の魔王を倒すのだ」

「分かりました」

淡白な会話を交わし、俺は大剣を手にすると森へ向かった。





不思議なことに、大剣は俺の意思で大きさと重さを変えられるらしい。

その為、持ち運ぶ際には短剣並の大きさにしている。

そうこうしているうちに、森の魔王の住処と思われる洞穴にたどり着いていた。

寒気がする。頭が真っ白になり、思考も鈍くなる。

(ここに森の魔王がいるに違いない)

確信を持った。直後、背後から声が聞こえた。

「お主が勇者―」

「神器解放。周囲の敵全てを切れ」

周囲を見渡す。そこには、森ではなく荒野が広がっていた。

「やっちった」

俺は、王城へと戻った。




「陰上勇机、ただいま戻りました」

「帰ったか、勇者ユウキよ。早速で悪いのだが、再び森へ行ってくれんかね」

「それは何故でしょうか」

「決まっているであろう。汝のせいで森の大半が消えてしまったのだ。その責任として、汝には森の復興を命ずる」

国王は、早口に言った。

(あぁそうか、俺はもう用済みだったのか)

「勇者ユウキよ、何をしている。早く森へ向かえ」

「すぐ行きますよ」

俺は大剣を取りだし、国王へ向けた。

「神器解放。目前の敵を切り裂け」

瞬間、国王の身体は数えられぬほど細かく切り刻まれ、床には血海が広がった。


森へ着くと、王城を見る。

「さようなら」

呟き、大剣を空へ向ける。

「神器解放。目前の街にいる大人全てに裁きを」

王城を中心に、光の柱が降り注ぐ。光の柱はやがて街全体を覆い、周辺の川は段々と赤く染まっていった。


後に、勇者ユウキは魔王と呼ばれるようになっていった。



100年後。1人の老人が子供に話をしていた。

話の内容。それは、100年前に森の魔王を倒し、後に魔王と呼ばれるようになった勇者の物語。

「―。その結果、勇者は魔王と呼ばれたんじゃ」

「ユウキお爺さん、この勇者さんは悪者だったの」

「さて、どうだったかのぅ」

老人の腰には、短剣の形をした神器が刺さっていた。




更に100年後。

区越寮の一室には、幼い娘に読み聞かせをしている母親の姿があった。

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どこまでもずっと、机と共に U朔 @SsssssS0401

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