第7話

 今日もまた授業を抜け出して校舎裏の空き地に来ていた。クロがそっと近づいてくる。僕はそっと頭を撫でてやる。静かな時間だけが流れていた。


 僕は心が痛んだ、本当はクロより茜さんを待っていたのかもしれな。すると、大柄な紅の鎧をまとった女性騎士が現れる。


「こんにちは、ネロサさん、いえ、左京さんでしたか」

「あなたは……」

「やはり、お忘れですか、私は魔族軍参謀総長のエリーです」


 僕はやはり魔族から転生した存在なのか……。


「それで、その参謀総長さんが僕に何用ですか?」

「神々が復活しようとしています、我らと神々は宿敵、戦は避けられません」


 そうかこれが茜さんの言っていた運命の歯車なのか、茜さんは天使の生まれ変わり……。


「詳しい説明よりも、ネロサとしての最後の記憶を見た方が早いかと」


そして……。

―――――


 それはまだ、神々が魔族と戦争をしていた頃の話である。神々の切り札である三大天使の一人、トワージュは一番槍のネロサと剣を交えようとしていた。ネロサは漆黒の鎧をまとい大剣でトワージュと戦いになる。トワージュもまた銀色の鎧に大剣で対抗していた。


「お前、綺麗だな、俺の女にならないか?」


 トワージュは目鼻立ちが凛としてそれは美しい天使であった。


「剣を交えてなお口説くか」


 お互いの大剣が火花を散らしぶつかり合う。まさに死闘であった。


「もし、転生でもして平和な世界ならよかろう」

「決まりだ。そして、俺はお前を倒す為の囮、もう直ぐここに大規模な砲撃が来る」

「そうか、ここで貴様と心中か……」


 トワージュは笑みを浮かべ安らかな表情に変わる。


「何か嬉しそうだな」

「幾多の争いの中で死に場所を探していたのかもしれない。最後に口説かれたしな」


 そして、辺りは砲撃と共に爆破する。


―――


はっ……。


「僕は幻でも見ていたのか?」

「左京さん、あなたの遠い過去のことです。まだ、神々と戦争をしていた頃のお話です」

「そんな過去の事を見せて僕に何用です?」

「さっきも言ったはず、神々が復活しようとしています」


 つまり、また、戦争が起こる言うことか。茜さんがトワージュなら僕はネロサなら結果は予想できた。


「大丈夫、まだ時間はあります。つかの間の平和を楽しんで下さい」


 そう言うとエリーは去って行った。それこそ大丈夫……戦争にならない方法もあるはず。


うん?


「にゃん」


クロの鳴き声だ。近づいて来るクロに、僕は心から強く生きる事を誓った。

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魔族の俺が普通の高校生に転生してたら、敵であった天使は最後はラブラブ 霜花 桔梗 @myosotis2

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