第6話

しかし、デカイよな、茜さんの胸である。体育の時間に遠目に見ていると、茜さんが走るとその大きさが強調される。運命とか、転生など関係ない。その女性美の天使そのものであった。


いつの頃からか僕は茜さんを意識するようになっていた。


「何、許嫁がいるのに他の女子に興味があるの?」


僕が茜さんを目で追っている事に理恵が、気が付いたらしい。


「お前には関係無いだろ。大体、幼馴染だからって馴れ馴れしいだよ」

「私はただ……左京が遠くに行ってしまう様な気がして……」

「なんだそれ」

「女の感よ」


理恵は昔からそうだ、僕に干渉してきてこちらの都合を考えていない。再び茜さんの方に視線を向けるとクリスは相変わらず、茜さんに引っ付いているし、平和な毎日が続いていた。こんな事をしていても仕方ない、茜さんに話かけよう。と、思った瞬間に茜さんがこちらに来る。


「こんにちは」

「はい、こんにちは」


改めてこうして話すと緊張するな。しかし、理恵は茜さんを敵視するし、複雑な人間関係を感じる。そして、簡単な雑談を始める。明日の天気はどうだなど、あたりさわりのない会話が続くのであった。


***


 そんなある夜のことである。


「熱いなり!!!」


 また、クリスがシャワーの温度設定を間違えたか。そして、バスタオルを巻いた姿で僕の部屋に殴り込んで来る。


「私がお金を出すからシャワー直してよ」


 うーん、財源が不明なお金をもらう訳にもいかず。困ったものだ。


「あら、クリスちゃん、今日は焼肉よ。大人しく服を着てね」


 母さんが見かねたのかクリスに声をかける。


「ぬぬ、焼肉とな」


 クリスの目つきが変わる。飢えた野獣の目だ。しかし、口は完全に緩んでいる。要は嬉しいのね、分かりやすい奴だ。


「はい、今日のところはこれくらいで勘弁してやる」


クリスの機嫌が好転する焼肉の前にシャワーを浴びてくれたから助かった。



「焼肉、焼肉……」


 上機嫌のクリスはテーブルに付き、笑顔でいた。

しかし、母さんが出してくれたのは、鶏のささ身を焼いたものであった。

「おい、こら、焼肉と言えば、カルビとかタンを目の前でジュウジュウするものだそ」

「あら、クリスちゃん、何か不満があって?」

「おう、これは暴動ものだそ」

「それがね、最近、突然、家計が苦しくなったの」


 そうか、クリスが転がりこんで来てお金がかかるのか。謎の財源を家計に入れていないのか。


 うーん、しかし、焼肉が食べられないのは僕的にも残念だな。


 クリスはしょげてしまい。鶏のささ身を口にする。


「ささ身のおかわりはあるからどんどん食べてね」

「うん、私強く生きる」


 何だかな、あの会話である。僕も沢山食べよう。


「美味い、おかわり」


 クリスはささ身を大量に食べて満足したようである。

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