第23話 USB

「所で話しは変わりますか、私の事調べてたんですよね、何処まで調べたんですか?」


「それは……まぁ……色々」


先程まで流暢に話していたはずの守部がここに来て突然いい淀み始める。


「人のことを勝手に調べたんです。

この場合、こちらに捜査情報を開示しなければ…」


「あー、分かった分かった話すよ!

……これだから警察は」


「貴方も一緒でしょ」


さて、守部がどこまで俺を調べたのか、コレはこの先の行動に深く関わって来る事になる。


「お前、10年前に強盗の入った家で瀕死の状態で発見されたんだってな。

しかも、その犯人は未だ見つかってない」


「そんな過去まで調べたんですか……」


「悪いとは思ってるさ、だが捜査の為だ、分かるだろう?」


警察の常套句じょうとうくをまさか聴く側になる日が来るとは思ってなかった。


予想以上にこれは、かなり胸糞が悪いな。


「で、他に言いたいことは?」


「お前はその時の犯人を捕まえたくて、警察を目指したんじゃないのか?

考えが異様に偏っているのもその時のトラウマがきっかけで……」


「おめでたい頭ですねぇ、守部警部補。

私をそんな惨めで、か弱い人間にしたいんですか?」


現段階では、まだ俺を心配している程度の解釈かもしれないが、パーソナルスペースをこれ以上探られるのは我慢の限界だ。


「とにかく、私が無実だと分かったのなら、これ以上の詮索はやめてくださいね。

気分が悪くて、守部警部補を誤って手に掛けてしまいそうだ。

あまりサイコパスを怒らせないで下さい」


ソレだけをいい、立ち上がりテーブルに5千円を置く。


「何せ、私は守部警部補が言うにはサイコパスって人種らしいですからね。

あぁそうだ、おつりは要りませんよ、ではまた明日……まぁ、組織犯罪対策部が動いたんでコンビは解消でしょうけど」


ソレだけをいい残し、俺は守部の顔を見る事なく居酒屋を後にした。


守部は引き止めることなく俺を見送っていたが、アレは多分引き止める言葉が思いつかなかったのだろう。


俺は今回、何を期待していたのだろうか。


突如感じる謎の脱力感に、そのまま空を見上げると、都会の汚れきった空気の中、三日月が淡く空を照らしていた。


ポケットに手を突っ込むと、硬い何かかが手に当たり、それを取り出す。


今回の爆破事件で見つけたUSBメモリー。


帰ったら中身を確認しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

呼吸をするように殺人を 翻 輪可 @56483219

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ