当てずっぽう探偵、今日も今日とて、推理をしない

棚からぼたもち

当てずっぽう探偵、はじめての事件

 私こと、カンナは昔からかんがいい。

 カッコよく言えば、第六感だいろっかん、またの名をシックスセンスってやつ!

 そのおかげ(?)なのか、私は地元の新聞で少しだけ有名!


『中学生の女の子!行方不明事件ゆくえふめいじけんをズバッと解決かいけつ!』


 このみかんちゃん行方不明事件が私が探偵たんていと呼ばれるはじまりの事件だった。


―――――――――――――――――――――


「あっつーい!」


 7月のはじめなのに、その日はすごいあつかったの。


「あ・・・ワンちゃんだ。」


 私のすぐ前をダルそうによたよたと歩いていくワンちゃん。

 学校に行く途中とちゅうだった私は、ワンちゃんが気になって、ついて行ってみることにした。


「バレないように・・・そーっと・・・」


 ワンちゃんもつかれているのか、ちょっとうしろからついてくる私に気づかない。

 最近さいきん、スパイものが流行はやってるから、尾行びこうとかやってみたかったんだよね!

 ワンちゃんにそのままついていくと、ワンちゃんは私がよく行く駄菓子屋だがしやさんに入っていった。

 駄菓子屋さんのおばさん優しいんだよねー。

 私、よく来るから、たまにサービスでアイスとかジュースとかもらえるんだよ!


「何してるだろう・・・?」


 もしかして、おばさんに何かもらってるのかな?

 こっそりのぞいてみると、ワンちゃんは中でおはなをひくひくさせながら、駄菓子屋さんの中をうろうろとしている。

 おばさんはイヤホンを耳に着けて、手元を見ているから、ワンちゃんが入ってるの気づいてないみたい。

 私はじーっとワンちゃんのことを見ていると、ワンちゃんは突然とつぜん、パクッとひくいところにあったお菓子かしを噛んで、駄菓子屋さんから走り去っていっちゃった!


「あっ!」


 おばさんも私の声に気づいて、顔を上げる。

 ワンちゃんが持って行っちゃったことに気づいてないのかも!


「あら、カンナちゃん。学校はどうしたの?」


「おばさん大変!ワンちゃんが今、勝手にお菓子持っていっちゃったよ!」


「あら・・・泥棒猫どろぼうねこならぬ、泥棒犬どろぼういぬちゃんね・・・そういえば、最近、お菓子の数があってないのはそのせいかしら?」


 教えてくれてありがとうね、今度から気を付けるわ、とおばさんは言って、アイスをくれた。

 やった!・・・あ、そうだ、学校行かないと!


「おばさん、アイスありがと!」


「気を付けてね~。」


 私はあわてて、学校に向かって走る。

 1時間目に間に合わなくて、先生にこっぴどくしかられちゃった、しくしく。


――――――――――――――――――――


 午前の授業も給食も午後の授業もぜ~んぶ終わって、放課後。

 帰りの会の時、先生が言ってた。

 昨日、小学生のみかんちゃんって女の子が行方不明になったんだって!

 何か知っていることがあったら教えてほしいって。

 私もみんなも、何も知らなかったみたいだけど!


「ふふ~ん。」


 私は1人で家に帰っていると、お巡りさんの格好をした人を見つけた。


「事件かな・・・?」


 私はお巡りさんの姿すがたが見えた家をこっそりとのぞく。

 すると、おまわりさんが女の人に何か聞いてるみたいだった。

 女の人はなんだか顔を青くして、心配そうにしている。

 どうしたんだろう?

 あ、そういえば、ここの家の表札ひょうさつに書いてある、行方不明になったみかんちゃんって子の苗字と同じだ!

 きっと、お巡りさんがみかんちゃんって子を見つけるために、色々と聞いてるんだ。


「あー!今日の朝にいたワンちゃん!」


「誰だ!?」


「あ!」


 私はお巡りさんと女の人がしゃべっている先に、今日の朝、お菓子を盗んでいったワンちゃんがいることに気づいて、大きな声をあげてしまった。

 お巡りさんが怖い顔で後ろに見る。

 びくっとなった私の姿を見ると、すぐにやさしい顔になった。


「なんだ・・・お嬢ちゃんどうしたんだい?」


「そこのワンちゃん、今日の朝、駄菓子を盗んでたの!」


「え!?」


 私の言葉を聞いて、顔を青くしてた女の人がもっと顔を青くする。


「こ、こら!タロー!物を盗んじゃダメでしょ!どこにやったの!?」


 女の人が慌てて、ワンちゃんを叱るけど、ワンちゃんは全然ぜんぜん聞いてないみたい。

 おっきな口をあけて、あくびをしてる。

 お菓子食べちゃったのかな?

 でも、袋とかはどこにやったんだろう・・・?


「あぁ・・・あのお嬢ちゃん?名前を聞いてもいいかな?」


「私、カンナ!そこの中学に通ってるの!」


「カンナちゃんね。情報ありがとう。ただ、人の家を勝手にのぞいたらだめだよ?」


「はーい。」


「それじゃあ、早く帰らないと。親御おやごさんが心配してると思うから。」


「はーい。」


 私はお巡りさんと別れた後、家へと向かう。

 帰り道の最中、なんだかピキーンッ!と勘に引っかかった。


(あれ・・・?ワンちゃんが走り去った方とこの家逆だよね?それにゴミも・・・も、もしかして!)


「みかんちゃんの場所、分かっちゃったかも!」


 私は慌てて、さっきの家まで走って戻る。

 私が戻ると、お巡りさん達がちょうど帰ろうとしているところだった。


「お巡りさん!」


「あれ?さっきの嬢ちゃん・・・カンナちゃんだったかな?」


「そう!」


「ほら、親御さんが心配するから早く帰らないと。」


「はーい・・・じゃなくて!みかんちゃんの場所、分かるかも!」


「なんだって!?」


 お巡りさんは私の言葉ことばにおどろく。


「そこのワンちゃんが知ってるはず!」


「え・・・?」


 お巡りさんがとまどっている間に、私はみかんちゃんの家の庭に入って、ワンちゃんの所に向かう。


「あ、こら!」


 勝手に人の家に入った私を、お巡りさんが慌てて追いかけてくる。

 だけど、そこまで広くないから私はすぐにワンちゃんのところにたどり着いた。


「ワンちゃん!ワンちゃん!みかんちゃんの場所知ってる?」


「ワン?」


「お菓子のところ!つれてって!」


 私はバックの中からいつも入れてるお菓子を取り出して、ワンちゃんの前に置く。

 ワンちゃんはそれを見ると、少し私を見た後、バクッとお菓子をくわえて、歩き出そうとした。

 けど、リードがワンちゃんの家に結んであったせいで、進めなかったの。

 私がそれをほどくと、ワンちゃんは勢いよく家の外に走り去っていた。


「待ってー!わぷっ!」


「え!?」


 お巡りさんの足元を通り抜けるワンちゃんを追いかけようとして、私はお巡りさんにぶつかっちゃった。


「お、お巡りさん!追いかけて!」


「え?」


「早く!」


 お巡りさんは私とワンちゃんが行っちゃった方をキョロキョロとみる。


「・・・よし!分かった!」


 お巡りさんは私の言うことに納得したのか、表にとめていた自転車に乗ると、慌てて、ワンちゃんを追いかけていった。


――――――――――――――――――――


 この後、ワンちゃんを追いかけたお巡りさんは近くにある山で弱っていたみかんちゃんを発見。

 みかんちゃんを見つける手助けをしたワンちゃんと私は、警察署けいさつしょ感謝状かんしゃじょうをもらったの。

 すごいうれしい!


「いいことしたわね!」


 と、お母さんにもいーっぱい褒められた。

 みかんちゃんのお母さんもすごい喜んで、おまんじゅうをもらえた。

 すごいおいしかった。


「みかんちゃーん!」


「かんなちゃーん!」


 みかんちゃんと私は友達ともだちになって、たまにあそんでる。

 みかんちゃんは1つ年下で小さいのに、私より足が速いの!

 かけっことかすると、負けちゃう!

 お母さんの言ってた年上のいげん?ってやつを見せないと!

 みかんちゃんに勝つために走る練習れんしゅうしてるんだよ。

 今日も少し走ってくる!


「かんなー!みかんちゃんからお電話でんわ来たわよ!」


「みかんちゃんから!?すぐ行く!」


 私はダダダッと走って、お母さんから電話を受け取る。


「もしもし、みかんちゃん?」


『あ、かんなちゃん!今日もあそぼ!』


「もちろん!今日はかけっこ負けないから!」


『私も負けないもん!』


 どうやら、練習の成果せいかを出すときが来たみたい。

 今度こそ、負けないぞー!

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