第27話 エピローグ その2 一葉ちゃんのその後
「高橋さん」
私、後鳥羽一葉は、目の前のフェンスから飛び降りようとしている女子を呼び止めました。
「だれよっ! もうほっといてっ! 家でも学校でも上手くいかなくてもう死ぬしかないんだからっ!」
その高橋さんは、自分のセリフどおりに校舎の屋上から飛び降りようとしていました。
「私の気持ちなんか誰もわからないんだからっ! ほっといてっ!」
「そうですね。わかりませんけど……。異世界に生まれ変わってみませんか?」
「え?」
「異世界で全く別の人生を歩んでみませんか?」
「…………」
高橋さんは、意味が解らないという呆けた様子で……動きを止めていました。
◇◇◇◇◇◇
「マジマジマジマジ!!」
「マジです」
私は、森の中で並んで歩いている高橋さんに答えました。
「ここって、本当に異世界なのっ!! 家も学校もないっ!!」
「そうです。もとの世界とは別のセカイです」
「ヒャッハー!」
高橋さんは歓喜の奇声を上げると駆け出して、やがて見えなくなってしまいました。
◇◇◇◇◇◇
先輩と明日香さんがいなくなってから。
自分なりに気持ちを整理して、吹っ切っれたと思っていました。
でも。私の中で芽生え育っていた先輩への想いは、自分が考えていたより根深かくて、現実世界への執着を捨て去るには十分だったようです。
私は、私の足元をふらふらとついてきてるクロぼうさんに語りかけました。
「初めて貴方が私の前に現れた時は驚きましたけど、それもまた運命だったみたいですね」
よろけながらなんとか歩いているクロぼうさん。
このクロぼうさんは、高一郎さんに『呪い』をかけたあと私の元を訪れて、「チャンスだよ、今! 高一郎クン、明日香ちゃんとウマくいってないから!」と私を欺こうとしたのです。
「キミをけしかけて……高一郎クンに告白させたのは……悪手だったかも……」
「貴方は私と先輩と明日香さんを手玉にとっていたつもりだったのでしょうけど……」
「むぅ……」
クロぼうさんが、私のセリフでさらにダメージを受けたという様子でたおれそうになります。
「でも、女性二人のエッチでもOKなのは都合がよかったです。どうですか? 私がささやいたように二人分の仕事になりましたか?」
「不正じゃないって……運営がわかってくれなくてー(ノД`)」
「それはザンネンなことです。他人事ですが」
ふふっと私は胸中で満足の笑みをこぼします。
エッチのお相手は誰でもOKでした。だから、世界に絶望して飛び降りようとしている高橋さんだったのはたまたま。
クロぼうさんを呼び出して私と高橋さんに『呪い』をかけさせてエッチしました。結果、二人とも『呪い』の効果で異世界に転移です。
そうなのです。私は忘れる事の出来なかった先輩を追って、異世界にまでやってきたのです。
高一郎さん。私は、その……同性とはしてしまいましたが、殿方とはまだです。なんというか……『突っ込まれて』ません。カウント外です。なので、ぜひ高一郎さんに私の初めてのお相手をしてほしいと願っています。
――で。
「まずは近くの街を探しましょう。先輩たちを追わなくちゃ、ですね」
「むぅ。ボクはヒトを操るのが仕事なのに……『呪い』までヒトに都合よく利用されているのがーヽ(`Д´#)ノ ムキー!!」
クロぼうさんがもだえます。
「上から人を見下ろして侮っているからです。人を甘く見てはいけません」
「ボクはエリートなんだエリートなんだエリートなんだ……不正じゃないんだ資格停止はいやだランキングがぁぁぁーーー!!」
叫びを上げながら精神崩壊しているクロぼうさんを尻目に、私は空を見上げます。
雲一つない空が広々と広がっている、先輩探索日和の異世界……なのでした。
了
――――――――
お付き合い、ありがとうございました。
感謝。
m(_ _)m。
俺とエッチしたい彼女の我慢がもう限界な件 月白由紀人 @yukito_tukishiro
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