再開2

 しゃんしゃんと音が聞こえてくるのはどうやら裏の森のずっと奥のようだ。

 ひとつひとつじっくりと踏みしめて歩くのは、単に足場が悪いからだけではないのだろう。

 俺はこのどうしようもない胸のざわめきを抑える為に、胸ぐらを強く掴んだ。

 少し進むと、薄暗くなり、木漏れ日が所々から顔をのぞかせる。

 日差しが直接当たらないので、薄ら寒い雰囲気がする。

 そんな一本道を歩いていると、鈴の音の聞こえてくる方から透き通るような鼻歌が聞こえてきた。

 俺がよく知ってる子守唄だった。

 声に沿って行くと、一際ひときわ陽光が強く指している開けた場所へ出た。

 俺はそこをよく知っていた。

 木の葉が生い茂って周りの風景が変わってしまっているが、ここは昔、俺が幼馴染の子に連れられてよく遊びに来た来た二人だけの秘密の場所。

 ざわざわ、さわさわ。

 木々が揺れ、昼間なのに涼しい風が吹きつける。

 そのときピタリと鼻歌が止んだ。

 鈴の音が鳴り、同時に木の影から一人の少女が姿を表す。

 その女の子の正体はすぐに分かった。

 いや、そもそも鼻歌が聞こえたときから、もしくは胸騒ぎを覚え始めたあたりから気づいていたのかもしれない。

 しかし、俺の思考機能はその事実を強く否定していた。

 ふと声が漏れる。

「まさか…」

 少女が応答する。

「そのまさかだよ。」

 俺の前に、5年前に死んだはずの少女ー神崎朱莉が立っていた。

「久しぶり。」

 少女は優しく微笑んだ。

 手に持った鈴がしゃんと揺れた。


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神崎朱莉という少女 こあ @coa9

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