8 聖女から見た聖女の話

 優秀な……人間、か。


 そういえば聖女を始めてからクロード以外の人ににそういう事を言われたのって初めてかもしれない。

 いや、かもしれないじゃない……初めてだ、うん。初めて。


 そしてどこか報われたような気分の私に視線を向けたまま、ユイは思考を巡らせるように間を空けてから言う。


「しっかし……アンタは聖女を辞めたんすよね? なんというか……良く辞められたっすね」


「聞いただけで意味わからねえ位にブラックな扱いみてえだからな。そんな扱いをしていた国家がこれだけの人材を手放すとは思えねえ。多分無理矢理にでも引き留めてくるだろ」


 これだけの人材……。

 なんだろう、一度に複数人からそんな事を言われると夢でも見てるんじゃないかなって思ってしまう。

 まあありがたい事に夢じゃないんだけどね。

 本当にありがたい事に……元居た国の人達とは全然違う。


「辞められたっていうか、辞めさせられたんだ。解任されて国外追放って感じ」


「辞めさせられた!? 国外追放……は? ちょっとどういう事っすか!?」


「し、失礼なのは重々承知だが、お前何かやったのか!?」


 驚く二人に私は言う。


「何かやったというか、やるべき事をやれていなかったんだ……私は無能扱いされてたから」


「無能扱いって……一人で聖結界を維持してたんすよね!?」


「だけど月に1匹2匹ペースで魔物が侵入してきて、少しだけ瘴気も沸いてたから」


「その程度の事っすよね!? それを無能って……」


 本当に驚いたように、理解できないようにそう言ったユイは立ち上がり歩み寄ってきて、私の両手を握って言う。

 言ってくれる。


「同じ……なんて言っていいかは分かんないっすけど、同じ聖女として言わせて欲しいっす! アンタは無能なんかじゃない! そんな訳の分からない所で使い潰されなくて本当に良かった!」


 ほんの少しだけ、涙を流して。

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規格外の先代聖女より少し弱いだけで無能認定され追放された聖女の私は、執事君に溺愛されながら幸せになります(リメイク版) 山外大河 @yamasototaiga

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