第11話 夏休みの終わり

 順調に宿題を済ませた私は、最後の1週間もいつもと同じプール漬けの日々を送ってました。


 宿題も終わってるので、プールの後は図書館へ行くことにしました。

いつもは小学校の図書館ですが、夏休み期間中は図書館の担当先生がいないので、近所の5年生の友達に市の図書館まで連れてもらい、自転車で行きました。

この夏休みに補助輪を使わなくなった私の自転車は軽快に走ります。



 30分程で市立図書館に到着。自転車置き場に駐輪します。

 昔からある石造りの大きな図書館で、3階建てで中央が大きな吹き抜け。それを囲うように1・2階がこの字になり本棚が並んでます。一般の書物が並んでいて、特殊な物や価値が高い歴史的なものなどは3階に保存されており、開放されてませんでした。

 大勢の学生がいますが、声ひとつ立てない静かな空間で、一種独特の雰囲気でした。


 南側の壁には天井近くまで縦に細い窓があり、室内にスリットの様に光が差し掛かり、埃と言うか光の粒のようなのがキラキラしててとても綺麗だと思いました。


 市の図書館の使い方が分からず、借りるのはやめました。だって聞くのも恥ずかしかったからです。棚から取り出して、机で読む分には誰でもできるので読むだけにしました。


 小学校の図書館の本とはかなり違っていて、量も内容もすごいので高学年になったらしょっちゅう来ようと思ったくらいです。



 私の好きなガリバーもエルマーも、続編が沢山あるので良い所を見つけたと。休みが終わるまで毎日のように通いました。



 なので夏休み最終の一週間はプールと市の図書館で過ごしたので、親もどこに行ってるんだろう?と思ってたのかもしれません。それかプールで一日中いたと思ってたのかも。




 プールと図書館の行き来で、青い空と白い雲は変わらずとも、蝉の鳴く音が徐々に減ってきて、ある日から空に赤とんぼが見えるようになった時が夏の終わりを感じた瞬間です。


 ああ、夏が終わるな。と。



この夏休みでいくつも宝物ができました。

 

〇プール帽に書かれたラインが3本になったこと。

〇旅行で買って貰った名前と日付が刻印された「黄金風呂のデザインのメダル」。

〇海水浴で拾った「巻き貝ときれいな石」。

〇祖父からもらった「釣りの仕掛けと浮きのセット」。

〇絵日記とは別に「海水浴と花火とプールの絵が3枚」。

〇全部印鑑スタンプが押された「ラジオ体操カード」。

〇補助輪を外して「自転車が早くなった」こと。しかもすごく早くなった。



昭和40年頃、小学3年生の夏休みでした。



終わり。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昭和の夏の思い出 clipmac @clipmac

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ