課題提出遅滞のお知らせ~数学問題の(自称)文系的考察について~

清月香

序章 課題提出遅滞のお知らせ

 私の名前は、中川文香なかがわ ふみか。現在、高校1年生。好きな科目は現代文と漢文、それから英語。苦手な教科は、数学。そう、数学。私は数学ができない。決して嫌いなわけじゃない。いや、むしろ論理的に考えるのは好きなほうだ。だが、いくら論理的に考えることが好きでも、公式が理解できるとは限らないらしい。不思議だ。

 数学の授業には、AとBがあり(何が違うのか分からん)、授業の組み方の関係で、最低でも週に3日は授業がある。今日はその2日目なのだが、目の前の先生は私の回答を聞くなり、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。普段はニヒルな感じで、女子生徒から絶大な人気を誇るイケオジな先生が、今、すごくレアな顔をしていらっしゃる。これって結構すごいことなのでは?隣のクラスにいる友人がこのことを聞いたら、発狂するんだろうな。ずるいって言って詰め寄られるだろうか。うん、そうだ。………きっと、そう。黙っとこ。

「中川。俺の話ちゃんと聞いてたか?」

「はい、聞いてましたよ。そもそも、この三角形なんでこんなにぐるぐる回るんですか?」

「………。」

黙ってしまった。教室も静まり返っている。あれ、私なんか変なこと言ったかな?とのんきに考えていたら、終業のチャイムが鳴った。

「ここのところは、よく復習しておくように。中川は、もう一度教科書読んで、それでも分からなかったら質問しに来なさい。」

そう言うと、先生は教卓の上の荷物をまとめ、教室を出た。私はさっきまで書いていたノートを目の前に掲げ、うーんとひとつ唸ってみる。が、目の前の少し歪んだ単位円と三角形の組み合わせは、容易に答えを教えてくれそうにはなかった。


 ところで、私は数学ができない(2回目)。どれだけできないかというと、中学の応用レベルが怪しいくらい。割とできているのでは?と自分的には思っているが、先生から見るとそうじゃないらしい。ということで、私には先生監修の特別課題が通常の課題とは別に出されている。内容は、高校入試対策問題が少しと、高校入学から今まで習った範囲の問題らしい。有難いことだ。そして、何度も言うようで申し訳ない気もするが、私は数学が嫌いではない。むしろ好きなほうなのだ。だから、こういうかたちで課題を追加されることは嫌ではない。毎日ちゃんと時間を設けて取り組んでいる。しかし、それがちゃんと提出できるか否かは、また別の話である。

 

 私は、毎日21時に特別課題に取り組んでいる。ちゃんと毎日時間を守って始めているし(約15分前後することはたまにあるが)、特別課題をやっている間にスマホをいじったりはしない。ちゃんと筆記用具も、中学生・高校生用の参考書も机の上にそろえている。それでも、課題は進まない。寝ているんじゃないかって?いや、目は開けているし、しっかりと意識もある。じゃあ、なんで進まないのか。

―それは、私の文系的考察想像力があまりにもたくましいせいだ。

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