超絶農民高校生

葉桜花蘭

第1話プロローグ


ック。 。 。 。ック。 。 。 ック。 。 ザクッ!


 土の香り、、、いや肥料。それも堆肥たいひの香り。土に向かって鋭い金属を突き立てる音。カラッと晴れた空。今日は、、、


「畑日和だな!!」バッ


 ここは静岡県の。畑の大きさはどれくらいだろう。かなり大きいけど、農家さんほど大きくはないような畑だ。

今はトマトを植えるための土作り中だ。


 1週間ほど前の冬の天気が一変し、青い空と暖かい日差しに見守れながら土をいじっている男は那須野 なすの あおい。春先から畑仕事をしている葱は脱サラした農家に見える。高い身長。長年畑で鍛えてきた筋肉による安定した体幹。ゆえに、落ち着いた印象を与える。大人っぽく見える。しかし、農家ではない。なら、社会人だろうか。いや、もちろん違う。彼は高校生だ。



 「トマト。トマト。とまとっとっと。とまとっとっとっと!」

 意味のわからない言葉をくわを降るリズムに合わせて口ずさむ。肉体を使う作業はこれくらい脳みそを殺すのが丁度いい。


「葱!昼ごはんだよ!」

 母さんから昼ごはんの呼び出しだ。朝9時ころから畑をいじり始めたはずなのに、気がついたら昼飯の時間らしい。畑の入口近くの水場にくわを置くためによってから、ご飯のために家に向かう。


 ガラララと音を鳴らしながら玄関の扉を開け、キッチンが隣接しているリビングヘ向かう。途中

「にぃちゃん!泥だらけだから着替えたほうがいいかも!..遅れるって母さんに言っとくからさ!」

 妹の那須野 水呼なすの みこに注意された。たしかにさっきまで畑にいたからな。

「わかった!よろしく!」


 二階の自分の部屋に駆け上がり、適当に服を出して着替える。来ていた服は汗をかき泥にまみれていて着る気がしないから洗濯にだしてしまう。終わりしだい下に駆ける。リビングに近づくにつれ、聞こえてくる母と妹の談笑が大きくなっていく。昼飯は俺待ちらしい。リビングの扉を開けると、美味しそうな香りと暖かなあかりが飛び込んできた。


両親も植物が好きなので、観葉植物に囲まれた木材を基調としたリビング。そこには大きい机とそれに付随する4つの椅子、テレビとテレビを見るためのソファあとは本棚がある。母さんと妹は椅子に座っていた。今日は平日だから父さんは仕事だから居ないらしい。


「はやく〜。お腹ぺこぺこだよ〜。」

「ご飯冷めちゃうから、早くしなさい。」

急かされながら椅子を引き、机を見る。そこには大きな皿に盛られた好物の塩焼きそばと、小分けにする用の小皿が用意されてあった。


「早く食べよっか!」

妹が先導して合掌し、俺と母が続いて合掌し

「「「いただきます」」」


美味しいご飯、楽しい会話。いい昼ごはんだった。午後の作業の活力になった。



ちなみにこの日中にトマトを植えることが出来た。





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超絶農民高校生 葉桜花蘭 @hazakura99

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