カクカクシカジカ

@13seconds

第1話 雨乞い筒

 古道具屋で見つけたのは長さ三十センチくらいの細い棒だった。

 立てると、ザーッと雨のような音がする。

 ひっくり返すとまた、雨のような音。

 中に入っているのは砂か、それとも木の実か。

 店主に尋ねると何処かの国の『雨乞い筒』なのだと言った。

「日照りの時に、それを鳴らして雨を呼ぶんだよ。中に入ってる物?雨の精、らしいよ。遠い昔に捕まえて、封じ込めたのさ。そいつが仲間を呼ぶんだと。」

 店主は悪戯っぽく笑った。

 つられて笑って、筒に耳を近づけた。

『……出して……』

 か細く弱々しい声が確かにした。

 慌てて筒を置き、逃げるように店を出た。


 二度とその店を訪れることは無かったから、あの筒がどうなったかは知らない。

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