第35話 決意
全くの予想外に俺含めて多くの冒険者は戸惑っていた。流石にこうなることが分かっていたのか攻撃は昼過ぎに開始とのことだが・・・
これ以上誰が主犯か調べても埒が明かないと判断したのだろうか。それにしても急ではある。
それともこちらに肝心の書類がないと気づかれたのか?あれからこちらは全く動いていないからその線も考えられる。とするとアヤに書類を渡されなかった時点でどうしようもないな・・・
「このまま攻めちゃうの?今までのことは無駄だったの?」
アヤが心配そうにこちらを見ている。俺だって考えているんだ。そう焦らせないでくれ。
(こんなことになるなら昨日模擬戦なんてやるんじゃなかった。でもそうなることが想定できたかと言えばそんなことはないし・・・いや、今そんなことを考えていても仕方ない。何かないのか)
テイラーやヨウヘイも何とか手がないか一緒に考えてくれてはいるがすぐに解決というようなものは難しいといった感じだ。
焦るばかりで時間だけが進んでいく。そしてついにその時が来てしまった。
「攻撃目標はゾツェの街、各自突撃」
この集団をまとめる者から号令が出される。冒険者達はあまり乗り気ではなかったが、表立って反抗する者はいないといった感じだ。
だが軍はそうではない。国を守るという使命の元士気は非常に高く、ついには街の中に籠る部隊との交戦が始まってしまった。
消極的な冒険者が多かったこともあってすぐに決着というわけではなかったが、それでも包囲されているという事実は変わらない。徐々に押されていき、そしてついに陥落してしまった。あの書類は処分されたかあるいはまたどこかに隠されるのだろう。ともかく、これで終わってしまったのだ。
ぼうっと煙の上がっている街を眺めていた。どこかで間違えたのかという思いがどこまでも続く。
俺は実際に街の中に入ったわけじゃないから分からないこともある。でも確かにこの状況をなんとかできる。その可能性はあった。
「おうおう、そんなに落ち込むな。お前はよくやったよ。そんなに落ち込んでいる姿を見ると協力した俺達までそう思っちまう。割り切れないかもしれないがこれが今のお前の現状だ。受け入れるしかねぇ」
「・・・そうだな、俺が何とかできたかもしれないってのが思い上がりだったのかもしれないな。俺が気付かなかっただけで見逃してきたことなんてごまんとあるはずだ。たまたま目についたものを咄嗟の判断で救おうとして失敗しただけ、そうなんだろうな」
「もしこれからこういうことを防ぎたいのなら、起きても最悪の事態が回避できるように力を、人望を蓄えなさい。私から言えることはこれくらいですかね。才能ですべてが決まってしまうのは何か納得いかないことがあるのは事実ですが結局それに頼ることが今見つかっている中では一番効率がいいということは結局覆せません」
そうだ、結局俺は才能に支配された世界をどうしたいんだ?才能値による差別などが仮に無くなったとしても結局才能値というものがある限りこの世界の本質は変わらない。
(何かもっと根本的な・・・いや、皆の方が正しいのか?才能値なんてものが仮に知る手段がないとしてもある程度一緒に行動していればその者がどれほどの実力かなんてわかってしまう。ある意味周りにとっても本人にとっても最初から分かっているということが幸せなのかもな)
「少し考えたいことがある」
「ゆっくり考えてみろ。お前自身の答えを見つけるんだ」
アヤとミサキの元へ向かい、今までの話と俺が今思っていることを一通り話す。色々思うことがあったのか2人共しばらく考え込んでいた。
「そんな弱気でいるんじゃ諦めたほうがいいわよ。最初から無理なことをしようとしてました。で終わりでもいいんじゃない?私はこのパーティーでやることが変わらないなら別にいいわ」
「コウキの言った通り結局は才能に行きつくのは仕方がないことだと思う。私みたいに例外があるとしても基本的にはどうやっても救えない人というのはいると思う。でも、今回みたいな不条理なことだけはなんとかしたい」
アヤの言うことが俺に響く。確かに、今回の一連の行動は不条理に対して何とかしたいという思いがあったからこうやって行動したのだ。結果として失敗してしまったからこうやって落ち込んでいるのだが・・・
「2人とも、ありがとう。これからも俺達のやることは変わらない。しばらくは経験と実績を積んでいく。しばらくしたらこの国を周って今回みたいなことが起きないよう、そして才能が無い者が不当に扱われていないか確認して必要とあらばその者のために戦いたい」
「ふーん、まぁいいんじゃない?ちょっとは見えてきたかしらね」
「そのためにまだまだ強くならないといけませんね。今からでも特訓です」
パーティーメンバーと話してすっきりした俺はテイラーとヨウヘイの元に向かい、先程のことを伝える。
「まぁその辺りしかできることはないでしょうね。道は険しいかもしれませんが頑張ってください。応援してますよ」
「いいじゃねぇか。俺も応援するぜ。それと今度会ったときはあの嬢ちゃんには負けねぇって伝えておいてくれ」
そして俺達は馬車に乗り、来た道を戻っていった。後で聞いた話だが、今回の暴動の首謀者は死刑となったらしい。それとさすがに今回の件才能値の低い者に対する税の引き上げはしばらく凍結になったそうだ。
(まぁしばらくは注目されそうだしあんまり下手なことはできないよな)
結局陽炎のメンバーにも会えなかったし今回の依頼で得たものは報酬だけ・・・だが道草と豪傑軍団と知り合えたことはこれからの助けになるかもしれないな。
「さて、また依頼を受けますか。俺達の未来のために」
今日も疾風怒濤は依頼を受ける。そして達成して戻ってくるだろう。
次に話が動くのは経験を積んだ疾風怒濤がこの街を出るところから。
自分にメリットのない外れスキルを持つ俺、才能がないと言われパーティーを追放された少女と出会った結果最強が誕生してしまいました takaoka @takaoke
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