【後日談】リリスさん達の東京案内②


「おお〜こいつは良い武器だ」


「初めて見る形をしていますね。真っすぐではなく刃が曲がっていますわ」


 目の前には展示されている日本刀が並んでいる。秋葉原から少し場所を移して、上野にある東京国立博物館へとやってきた。


 この東京国立博物館は日本最古の博物館で、国宝や重要文化財などが数多く展示されている。


 リリスさん達女性陣を連れて博物館というのも、これまたどうかとも思うが、ここならこっちの世界のいろんなことが学べるからな。


「これは日本刀といって、この国では歴史のある武器ですよ。切れ味だけじゃなくて、美しさも兼ね備えた武器なんですよね」


 縄文時代の土器などから始まり、大昔の美術品が展示されており、みんなに口頭で日本のこれまでの歴史について説明をしていく。


 そんな中でみんなが一番反応を示したのは、日本刀や鎧が展示されている場所であった。


「確かによく見ると、この刃は独特の紋様があって綺麗だな」


「それは刃文といって、日本刀の特徴のひとつなんですよ」


「こっちのは重そうだけど、とっても頑丈そうだニャ!」


「この鎧も日本特有のものですね。ええ〜と、なになに。兜も入れると20〜30kgにもなるみたいですよ」


 昔の人達はよくこんなに重い鎧を身につけて戦ったものだよ。日本刀も5kgはあるらしいし、身体を鍛えてこないとまともに動くこともできないのだろうな。


 他にも昔の美術品や絵画などを見てまわった。やはりみんなは昔の時代よりも江戸時代のあたりに一番興味を持っていたようだな。



 

「大きいニャ!」


「こりゃすげえな!」


 目の前には巨大な恐竜の全身の化石が展示してある。国立博物館を一通り回ったあとは場所を移して、すぐ隣にある国立科学博物館にやってきている。


 博物館に入ってすぐに出迎えてくれたのは大きな恐竜の全身の化石だ。俺も子どもの頃に遠足でここに来た時にはとても興奮した気がする。


 上野には東京国立博物館、国立科学博物館、東京美術館、国立西洋美術館に上野動物園などなど、観光スポットが山ほどある。さっきの東京国立博物館も本格的にすべて見てまわったら、相当な時間が掛かるだろうな。


「マサヨシ兄さん、こっちの世界に魔物はいないんじゃないのか?」


「これは魔物じゃなくて恐竜っていうんですよ。こっちの世界の1億年前には、人間はまだ存在しなくてこんな大きな生物がこの世界を支配していたらしいです」


「……マサヨシ様、今1と仰いましたか?」


「ええ。こちらの世界では研究がいろいろと進んでいて、大昔に生きていた生物の骨を掘り返して、だいたいどれくらい昔に生きていたのか分かるんですよ」


「1億年って……いやまあこちらの世界なら何があっても不思議じゃないのか……」


 改めて考えるとすごいことだよなあ。1億年も昔に生きていた恐竜の骨が現代で見つかって、当時の姿を再現したり、いつ頃生きていたのかがわかるなんて。


 そしてリリスさんの言葉は向こうの世界で魔法や魔道具を初めて見た時の俺の反応と似ているな。やはりお互いの世界でのカルチャーショックは大きいようだ。




「ここはさっきの場所とだいぶ違うみたいですね」


「ああ、マサヨシが話していた機械ってやつがたくさんあるな」


「ここは宇宙とか衛星とかを展示している場所ですね。宇宙っていうのは空よりも更に上空にある場所のことですよ。こっちの世界だと、今では乗り物に乗って空のさらに上まで行けるようになっています。まあ本当に一部の人しかいけないんですけどね」


「そ、空のさらに上!? 飛行魔法みたいなものがこっちの世界にもあるのか?」


「こっちの世界には魔法はないですよ。俺も詳しくはわからないけれど、燃料を一気に燃焼させてその勢いで上昇させるらしいですよ」


 ここに衛星を打ち上げるためのロケットの仕組みが書いてあるが、こっちの世界の人間である俺でも難しくてわからない。


 とりあえずロケットエンジンは燃料と推進剤というもので動いており、燃料は固形燃料と液体燃料に分かれているようだ。


「今でも結構な数のこの衛星というものが、宇宙を飛んでいて、この地球という星を観測しているんです」


「お、おう。よくわからねえけれど、とてつもなくすげえってことはわかった」


「お空からこっちを見ているのニャ?」


 どうだろうな。もう今の時代なら衛星によって個人を追えたりもするのかもしれない。地上から何百kmも離れているのにすごい技術である。




「うわっ、なんだここは!?」


「リリスさん、他のお客さんもいるから静かにね」


 この国立科学博物館にはシアター36◯という場所が地下にある。ここでは丸いドームの内側全てがスクリーンとなっており、360度全方位の映像を橋の上から楽しむことができるシアターがある。


 お客さんはブリッジの上から、宇宙や深海、大昔の日本などの大迫力の映像を楽しむことができる。ちなみに最後のはゼロではなくマルらしい。


「すごいな、マサヨシ兄さんの家にあったテレビみたいなやつか」


「そうですね、テレビのとても大きなやつと同じです」


 リリスさん達がこっちの世界に来た時にテレビを見てもらったのだが、案の定とても驚いていた。テレビを見たことがない人のリアルな反応ってあんな感じになるんだよな。


 みんなはこっちの世界の言葉は分からないけれど、これだけ迫力があれば、映像だけでも十分に楽しめるだろう。


 そのあとも国立科学博物館を見てまわった。どうやらみんな楽しんでくれたようで何よりだ。






「たたた、高いニャ……」


「こ、これは足がすくむな……」


「よ、よく他の人は普通に歩けますわね」


「べ、別にそこまで怖くはねえよ!」


「ははは……」


 そして上野をあとにして、東京といえばこれ、スカイツリーにやってきた。


 さすがにこれほど高いところに登った経験なんてみんなないだろう。一応事前にとても高いところに登っても大丈夫かと聞いた時は問題ないと言っていたが、実際にこれほど高い場所に登るのは初めてだろうし、足がすくんでしまっても仕方がない。


 リアルに初めて高い建物に登ったら、たぶんみんなのようにガラスに近づくこともできなくなるんだろうな。


「今日は天気がいいから景色が良く見えますね」


「……しかし本当にマサヨシの世界は建物ばかりなんだな。あの一つ一つが近付くと巨大な建物だと思うとなんつーか現実感がないぜ」


「確かに巨大な建物ばかりで驚いたよ。世界が違うっていうのがよくわかるな」


「東京は高い建物ばかりですからね。俺も初めて来た時は落ち着かなかったなあ」


 ここまで高いビルが多いのはすごく都会な感じがする。家の近くは駅前でもこんなに高いビルはないし、人は全然いないからな。


「お兄ちゃん、早く降りるニャ……」


「そうですね、一周回ったし、そろそろ降りましょうか」


 どうやらネネアさんは高い場所が怖いらしい。いくらなんでも高すぎたようだ。今度あちらの世界から誰かを案内する時はそれほど高くないビルを案内するとしよう。




「うん、どれもこれもうまいな!」


「どれもとっても美味しいニャ!」


 そして夕方になってやってきたのは、食べ放題のお店である。このお店は寿司、天ぷら、焼肉、デザートが食べ放題である。


 ここならいろんな料理を楽しめるし、なんならデザートまで選び放題だ。本当はお酒の飲み放題もつけてあげたいところだったが、当然身分証明書なんてないから、みんなには事情を説明してお酒は控えてもらっている。


「すごい、マサヨシ兄さんの料理と同じくらい美味しいな」


「昼に食べたラーメンというのも美味しかったですが、このお店の料理も美味しいですね! それにすごく多くの料理があるのですね」


「こっちの世界はいろんな料理がありますからね」


 お酒はないが、みんな楽しんでくれているようだ。……それにしてもみんなすごい勢いで食べているな。お金は守さんにあちらの世界の宝石や金貨を換金してもらったからたくさんあるが、食べ放題にしてよかった。


 ネネアさん以外はみんなよく食べるんだよなあ……下手をしたら3人分は店側の赤字になるかもしれない。


 そのあともみんなは食べ放題の料理を楽しみ、さらにはデザートまで堪能し尽くしたようだ。しかし、あれだけの量を食べたあとにデザートまであんなに食べられるとは思ってもいなかったな……




「今日はありがとうな、マサヨシ。とても楽しかったぞ!」


「マサヨシ様、とても楽しかったです!」


「久しぶりに最高に楽しめたよ!」


「とっても楽しかったニャ!」


「みんなが楽しめてよかったですよ」

 

 どうやら今日の東京観光ツアーにはある程度満足してくれたようだ。また機会があったら、こちらの世界を案内するとしよう。


 ……来週はこっちの世界のみんなを向こうの世界に案内する約束をしているからな。しばらく土日は忙しくなりそうだ。





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国立科学博物館ですが、今は3Dビューで館内を無料で公開しております。

ちょっとすごすぎて感動したので、みなさんも『かはくVR』で検索するか、下記のリンクからぜひ見てください∩^ω^∩


https://www.kahaku.go.jp/VR/

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【完】いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する タジリユウ@カクヨムコン8・9特別賞 @iwasetaku0613

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