【後日談】リリスさん達の東京案内①


「マジかよ! すげえ速度で動いているぞ!」


「高い建物がたくさんありますわね!」


「どこもかしこも人でいっぱいだな!」


「目が回りそうだニャ!」


「他の人もいるから、みんなもう少し静かにね」


 ただでさえ目立つ集団だというのに、電車の中でこれだけ大声で話すものだから、さらに目立ってしまっている。今日はリリスさん達4人とこちらの世界へやってきて、電車に乗って移動している。


 ……いや、別に浮気とかじゃないからな! サーラさんとデートをした翌週、今日はリリスさん達にこちらの世界を案内しているのだ。


 こちらの世界と異世界を繋ぐ扉が閉じる前に、もしも扉がまた繋がったら、こちらの世界を案内するとみんなに約束していたからな。その約束を守っているというわけだ。


 ちゃんと婚約者であるサーラさんにも、今日リリスさん達をこちらの世界に案内することを伝えてある。下手に嘘をついて隠してしまうと、後々嘘がバレた時に大変になってしまう可能性が高いからな。


 ……いつかはサーラさんとリリスさん達が会う時が来るとは思うが、ちょっとどうなるか読めない気もする。


「次で降りますよ」


「おっ、おう!」


 普段は冒険者をしていて勇ましいみんなも、初めて乗る電車にはビビりまくっている。まあこれほどの速度の乗り物に乗るなんて初めての経験だろうからな。


「これが異世界か……」


「本当に世界が違うのですね……」


「マサヨシ兄さんの言っていた通り、本当に冒険者はひとりもいないのか……」


「人が多過ぎて怖いニャ……」


 リリスさん達を連れてやって来たのは秋葉原駅である。というのも、リリスさん達からのリクエストで、俺の国の王都へ行きたいと言われた。


 日本の首都である東京都。最初は東京駅を案内しようと思ったのだが、東京駅付近ってあんまり見るところがない……歴史のあるレンガ造りの東京駅はリリスさん達にとって、あまり珍しいものではないからな。


 というわけで、いろいろと見るものがある秋葉原へ来たわけだ。最近では外国人も東京といえば秋葉原を指すことも多いらしい。


「ではまず神田明神に行きましょう。人が多いのではぐれないように気を付けてくださいね」


「お、おう!」


「き、気をつけますわ!」


 神田明神といえば1300年以上も昔から歴史のある場所だ。縁結びや商売繁盛などのご利益がある由緒正しき神社である。アニメの舞台になったり、アキバということでITのお守りという珍しいものもある。


 ちなみにリリスさん達の服装は、こちらの世界の服であるが、その立派なネコミミと尻尾は外に出ているが、他の人に注目されていない。これはアンデが作ってくれた見た目を偽装する魔道具のおかげである。


 アンデも材料さえあれば、大抵の魔道具は作れるというから驚きだ。なんだが青い某ネコ型ロボットみたいである……いやまあ全然違うんだけど。


 それにアキバならメイドさんもいるし、コスプレをしたりゴスロリを着ている人もいるので、たとえ魔道具がなくてもネコミミと尻尾なら許される気はする……


「この国だと神社で神様にお詣りするんだ。あとはお守りといって悪いものから身を守ってくれる縁起物もあるんだよ」


「なるほどな、俺達の世界の教会みたいなものか」


 言われてみると神社は教会みたいなものかもしれない。まあ祈る神様も違うし、厳密にいえば全然違うんだけど。


 みんなでお参りをして、お守りを授かった。ちなみにお守りは買うのではなく授かるものだ。数え方もひとつふたつではなく、1体2体と数える。これ豆な!


「秋葉原に来たらとりあえずお詣りしておくんだよね。それじゃあお昼にしようか」


 そしてやって来たのはラーメン屋である。……女性4人と一緒に出掛けているのにラーメンとか正気か? とも思うけれど、やっぱりこちらの世界に来たらラーメンは食べてもらわないとな!


 秋葉原はラーメンの激戦区でもある。いろんな種類のラーメン屋が存在している。他にもカレーや肉屋も激戦区である。というか食べ物全般が激戦区だな。


「すごい美味しそうですわね!」


「いい匂いだぜ!」


 やってきたのはとあるラーメン屋だ。このお店は醤油豚骨のラーメンを出している。


「熱いから気を付けてくださいね。ハシはこうやって使います」


「難しいニャ」


 そういえば向こうの世界にハシの文化はなかったな。とはいえ日本はハシ文化だし、少しずつ慣れてもらうとしよう。


「おわっ!? すごくうまいな!」


「同じ麺料理でも、私達の世界のものとは全然違いますね!」


「麺は弾力があるし、スープは濃厚な味だ! これならいくらでも食えるぞ!」


「上に乗っているお肉がとっても美味しいニャ!」


 みんなすごい勢いでラーメンを食べていく。確かに向こうの世界でも麺料理はあったが、パスタのスープや焼きそばみたいなものしかないので、こちらの世界のラーメンとは比べものにならなかった。


「マサヨシ兄さん、おかわりしてもいいか?」


「ああ、俺もだ!」


「あの……私もお願いします」


 ……3人とも大盛りでも足りなかったようだ。

 

「他のお店もここと同じくらい美味しいですし、他の食べ物もいっぱいあるから、夜はいろんな料理が食べれるお店に行ってみましょうか」

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