ひぃおばあちゃんの宝物

@88chama

第1話

 僕はふわふわの白いうさぎ。かずお君の親友ナンバー1だった。

毎日楽しく遊んでいるところにひぃおばあちゃんが加わって、僕はナンバー2になっちゃった。

三人になってからはそりゃぁもう楽しさは倍増でとても賑やかだ。

すごろくをしたりお絵かきをしたり、トランプしたりおもちゃのピアノを弾いたり・・


 

 その中でひぃおばあちゃんの一番スゴイのがじゃんけんだ。何回やってもかずお君は勝てないから、ちょっぴりすねたりして抵抗している。「何でいつも負けちゃうの~」って叫び声になったりもする。

でも僕は知っているんだ。ひぃおばあちゃんの強さの秘密を。透視能力?心理の研究?

それもあるかも知れない。でももっと単純な正解は、ほんのちょっぴりのズル。かずお君が元気に手を振り上げた時に見える握った手の形を、超高速でチラ見する。それからあとはじゃんけんぽん、のぽんを微妙に遅く出したり、チョキからグーへ変えたい時の超高速での指の変更技がすごいのだ。




 僕は白いうさぎの筈なのに、この頃は二人にめっちゃめちゃに可愛がられて、

折角の自慢の毛はヨレヨレの薄茶色になってしまった。そのうえ僕は赤いリボンをつけられて、勝手にうさこちゃんって呼ばれてがっかりだったけど,我慢してやっと慣れたところだったのに、今度はひぃおばあちゃんったら何をしたと思います?

赤いリボンを自分の好きな紫色に代えて「猫ちゃん」って呼ぶようになったんだ。もう今度こそ本当にがっかりだ。僕はれっきとしたうさぎなんですからね。




 ひぃおばあちゃんはとてもお洒落さんだ。毎日しっかりきれいにお化粧している。中でも特に念入りなのが眉毛をかく時だ。とっても真剣に鏡とにらめっこ。ちょっとくらい声をかけたって「聞こえませ~ん。うん,よしっ」ってなるまで何分もかかるんだよ。


 でもお化粧に熱心なのはいいけど、僕にはかまわないで欲しいんだ。だって今日なんかひどいんだよ。濃く眉毛をかいてそれからほっぺを真っ赤に塗って、口紅まで付けて・・ トホホだ。

そしてお化粧がすんだらお絵かきの時間。ひぃおばあちゃんは紫のドレスを着たお姫様を書いたけど、けっこう上手なんだ。


 

 こうして楽しく遊んでいると、かずお君のママが入って来るなり

 「おばあちゃん、どうしたのその顔!」

 って叫んだから振り返って見ると、僕も本当にびっくりしてしまった。

 「おばあちゃん、顔とっても青いけど何を塗ったの。」

 お気に入りの紫のクレヨンと色鉛筆で念入りにかかれた眉毛は、残念ながらとても不気味で恐ろしいほどだった。

 「おばあちゃん、これは眉ずみじゃないよ。」

 と言ってママが取り上げようとすると、真剣に抵抗して宝物箱に隠してしまった。



 ひぃおばあちゃんの誕生日の日。ママは二つの箱をプレゼントしたんだ。一つはかずお君と同じおやつの入った箱。もう一つには五本の眉ずみがきれいに並んでいた。ひぃおばあちゃんはとっても喜んで、宝物箱に入れると大事そうにすぐ鏡台の引き出しにしまっちゃった。

でも僕は知っている。ひぃおばあちゃんがこっそり一日に何度も、引き出しの中の宝箱を覗いては、ホホホ、ホホホと笑っていることを。


    おわり

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