11把 あのときの味

「おお!」

しばらくして出来上がったうどんを取りに行くと、つる美は目をキラキラさせた。

黄金色に輝くだしにお揚げと焼きネギ、そして半熟卵がのっている。

「美味しい!」

一口食べればツルッとした麺が喉を通り、優しいおだしが口いっぱいに広がった。

いなりも彼女と同じように見様見真似で箸を使ってうどんを食べ始めるも、不思議そうに首を傾げる。


「でもなにか足りないような…」

「今まで食べてきた味と違う?」

「そうだね、何かが違う気がする。」

黙々と食べ進めていたつる美は、相手の呟く声を聞き箸を止めると尋ねた。

彼は考え込むような仕草をすれば、もう一口食べてみるも自分達が食べていたうどんではないと言う。

「オリジナルうどんだから、この学校用に作ったうどんなのかもしれないね。」

「そうだね、これもチヅさんが考えたものだから勉強させてもらおう。」

いなりは話を聞いて残念そうにするが、目の前にあるうどんで少しでも研究をしようと食べ始める。

つる美も彼の様子をみれば、一緒に頑張ると決めたのだからとだしの香りや麺の食感を持っていたノートにメモをし始めたのだった。


さて、昔のチヅさんの味にはいつ出会えるのだろうか。

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ツルッといこうよ、つる美さん 雪ウサギ @yukiusagi-839

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