10把 ランチタイム

「やっとお昼だね!っていなり大丈夫?」

昼を告げるチャイムが鳴り、食堂へ移動しようとつる美が彼に話しかけるも放心状態に陥っており反応しない。

どうやら聞き馴染みのないことばかり聞いたせいか、脳がオーバーヒートしてしまっているようだ。

「いなり!」

彼女は座ったまま思考停止した相手の前にくると、大きな声でまた名前を呼んだ。

すると、驚いたのかはっとしたようにつる美を見ては困ったように眉を下げる。


「つる美さん、僕何も分からなかったよ…」

「そうだよね、普段は話さないような言葉ばかりだったもん。とりあえず食堂に行ってご飯食べて元気だそ!」

その様子に彼女は大丈夫だよと肩をぽんぽんとすれば、相手の手を取り食堂へ向かった。

落ち込んでいてもしょうがないと思ったのだろう。


「いなりどれにする?」

「これは…」

「あ、この列は卒業された歴代の首席の人達が考えたオリジナルうどんみたいだね!」

いなりは彼女とともに一緒に食堂の券売機の前へ向かうと、ふと見覚えのある名前を見て驚いた。

そう、チヅさんのオリジナルうどんが販売していたのだ。

つる美も彼の表情をみて、券売機を見つめると同じオリジナルうどんの券を買い受付の人へ渡す。

「よし!これでいなりが目指してるうどんの研究できるね!」

「うん、ありがとうつる美さん。」

うどんができるまでの待ち時間、彼女は彼にどんなうどんだろうね?などと楽しく話す。

いなりはそんな彼女の姿を見て、より一層頑張ろうと決意したのだった。


さて、チヅさんのうどんは一体どんな味なのだろうか。

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