9把 初めての

「ここでうどんの知識を学ぶんだね。」

「うん、実技はまだ先で今日はうどんの歴史についての授業みたい。」

次の日、2人は講義室の席に座ると今日教わることについて話をしていた。

この大学ではまず見識を深めてから、うどん作りを教わるようだ。

「そういえばいなり文字書ける?」

「師匠に少しだけ教わったけれど、上手く書けなくてね…」

つる美はノートと筆箱を取り出せば、ふと講師から聞いた内容を書き写すことができるのか気になり相手へ問う。

するといなりは困ったように眉を下げ、試しに文字を書いては彼女へ見せる。

その字は全てひらがなでまるで子供が書いたような字であった。

「それなら私がノートをとるから、家に帰ったら一緒に復習しよっか!」

彼の書いたノートを見れば、やはり動物達の間では文字は使うことはないんだと思いながらいなりを励ます。

そもそも人間の言葉を理解し、こうして話ができているだけでも凄いことである。

「ありがとう、つる美さん。」

「いえいえお互い頑張ろうね!」

相手の提案に彼は大きく頷くと、安心したような表情をみせお礼をした。

どうやら彼女の言葉に力をもらえたようだ。

つる美もいなりの様子を見れば、普段通りに戻って良かったと思いながら明るく返事をした。

そんな話をしているうちに講師がやってくると、早速本日最初の授業が始まる。

外では2人の門出を祝うかのように満開の桜が咲き乱れていた。


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