第3話 行方
家に着くと様子がおかしい。
物音1つ聞こえない。
エナ「お母さん?お父さん?カル?リラ?」
何度名前を呼んでも何も聞こえない。
なにかが私の日常を盗んで消えてしまったような…
そんな感じがした…。
どれだけ探しても家の中にいつもの景色は無かった。
エナ「きっとリラが公園にでも行きたいと駄々をこねたんだわ。だからみんなで留守なのよね。」
自分自身に言い聞かせるよう声に出す。
いつもより少し早い足取りで
いつもより静かな家の中を歩く。
どうしてこんな時にひとりなの…
いつもみたいに優しく笑うお母さんに
抱きしめてほしい
いつもみたいに無口なお父さんに
何も言わずに撫でてほしい
いつもみたいにうるさいって
生意気なこと言ってほしい
いつもみたいにおねーちゃんって
後ろをついて来てほしい
どうして…どうして…どうして…どうして…
そんなことばかりが頭の中を埋め尽くす
すると家のドアを叩く音が聞こえた
溢れ出た涙を必死に拭い玄関へ向かう
女性「エナ。あなたどうしたの?」
エナ「デュランさん…」
デュランさんはお隣に夫婦で住んでいて
いつもとても良くしてもらっている。
デュラン「ねぇ、そういえばあなた達大丈夫なの?」
エナ「大丈夫です!もう済んだ事なので!」
必死に笑顔を作る
デュラン「そうなのね。ならよかったわ。なんとなく様子がおかしい気がしてたのよ…」
エナ「ご心配おかけしてすみません…」
デュラン「あの方達は知り合いだったということだものね。よかったわ。」
あの方達…?私を産んでくれた人たちのことかな?
デュラン「あなたのお父さんもお母さんもいつもと様子が違うように見えたから話しかけられなくて…。何も無いなら本当によかった。でもねぇ、家の前であんなに騒がなくてもいいのにねぇ…」
エナ「どういうことですか?」
デュラン「え?午前中に家の前で騒いでたじゃない?」
どういうこと?あの人たちが私の家に?
いや、来るわけが無い。
それに騒ぐ?あれだけの対応しておいてわざわざこちらまで出向き騒ぐのだろうか…
エナ「デュランさん。私午前中は出かけていて…。なにがあったのか教えてもらえませんか?」
デュランさんの話をまとめると
朝私が家を出た後、何者かよくわからない人達が訪ねてきており、家の中へと入っていった。
そしてしばらくすると外から言い争うような声が聞こえてきたらしい。
様子を見に外に出たが誰もいなかったとのこと。
エナ「実は、お父さんもお母さんもカルもリラもみんな居なくて…。私もついさっき帰ってきたところで何があったのかさっぱり…」
デュラン「そうだったの。それは心配ね。何も無ければ夜には戻るでしょうから少し待ってみるしかないわね。」
エナ「そうですね。待ってみます。ありがとうございました。」
色んな情報が頭の中をぐるぐると駆け回る。
とにかく今は待つことしか出来ない…
エナは家の中を片付けながら待つことにした。
生きると決めた日 碧海 架音 @Aomi_Kanon_
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