心を二つにしなければ

人と話すのが怖いんだ。


言葉はいつでも軽薄だから。

そんなつもりじゃなかったのに、

そんな気にさせてしまえるから。

どんなに目を見ていたって、

心のなかは覗けやしないもの。


緩い坂道に錆びたガードレールが寄り添って、

その向こうに枯れ草と松の荒地。

潮の匂い。


父が居なくなったのは、それはもう突然のことだった。

僕は中学二年生で、その日も、いつも通りに学校から帰ってきただけ。

そのとき僕がどんなだったか、不思議と思い出せないけれど、

母の咽び泣く声と、発砲スチロール箱に閉じ込めたみたいに、

静かで息苦しい空気だけ、覚えてる。


それ以来、僕の心というか頭というか、そんなところには、

なんだか変な穴が空いているような感じがする。


だからたぶん、僕は、心を二つに分けなくちゃ、

とても、耐えられなかったんだ。

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死にたいような、そうでもないような 不朽林檎 @forget_me_not

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