極北の頭
れなれな(水木レナ)
頭
機関銃の音。
無人機が破壊される。
かたっぱしから……。
「首相! じき、紛争地帯を抜けます!」
まだ若い秘書の声が耳元でした。
ラグビーで鍛え上げたガタイで腹から声をだす。
他のボディガードたちは役に立たなかった。
遠く、速く、煙の向こうから明確に殺戮の音が聞こえてくる。
「もうダメだ! 太陽!」
彼はわたしを蹴り上げた。
トライを決めるかのような、壮絶なキック。
瞬間、わたしの頭は宙を舞い、血煙の中へとおどった。
「まかせろ! 大地!」
わたしを受け止めた秘書が、またわたしを蹴る。
今度は視界が飛んだ。
遠のく意識の下、わたしの頭脳がボールのように弾む。
目が覚めたらまず、大地の体がふっとび、太陽の両肩が風に舞っていた。
彼らはもう、わたしの側には来られない――それを確かめる。
「ありがとう。諸君らの尊い犠牲は無駄にはしない。わが頭脳をもって、この宇宙に平和と、争いのない世界を築いてみせる……」
宇宙船を準備していた秘書の掌がそっとわたしの頭を抱く。
そしてそのまま、ハッチの方へと歩み、一番の上等な席にわたしを置いた。
「首相、お時間です」
「うむ」
これでよい。
頭さえ無事ならば。
「わたしはかならず、よみがえる……かならず」
わたしは大笑して、地球の星を見おろすのだった。
-完-
極北の頭 れなれな(水木レナ) @rena-rena
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