名刺100枚もらったら…
milly@酒
名刺を持ってくるように
私こと
その中でも、営業では女性は最も少ない。
女性で働いているのは、事務が殆どだ。
私は車を売ってお給料をもらっている。外回りもする。
私の担当のお客様のうちの1人は、30代前半の女性だ。顔にハリツヤがあり、容姿は20代にしか見えない。
お客様の名前は
平川様はお母様と一緒に暮らしており、お母様は家具メーカーの社長だという。
平川様は多分、スキンケアをキチンとしているのだろう。色白で、顔全体にハリとツヤがある。できものは全くない。
思わず、その肌に触りたくなる。
会社での飲み会のネタは、平川さんの事が多い。
「あのハリツヤはどうしたら出来るんだろうね?私はシミが多いし」
同僚は男性ばかり。
唯一ここには事務に女性がいるけれども、早く帰ってしまう。
私によく絡んでくるのは、私の同僚の大宮。
「はいはい。上地はもう25歳でぴちぴちなんだから、平川さんには嫌みに聞こえるだろうな」
「毎回言ってる。明らかに私よりは綺麗でしょ」
「毎回嫌みを聞く平川さんは、ある意味天使だな。それより、スキンケア重視は程々で良いから彼氏作れよ」
「仕事が大変なの!女だって舐められるって事もあるし」
「何でディーラーに勤めているんだよ」
私はため息をつく。
「車が好きなの」
そう、私は車が好きだ。
父親が車のディーラーの営業だったから、その影響が強い。
免許を取ってすぐに、父が納車前の車に乗せてもらった。M菱は遠いところからも車の取り寄せが可能だった。
私はバイト代を貯金して、中古でランサーエボリューション2を買った。
スポーツカーだ。
ランサーエボリューションシリーズは10まで続く。
当時私が購入したランエボは機械式だった。
それで首都高を走ると、嫌な事は忘れてしまう。
峠にも行った。
…………………………………………………………………………
今日は外回りの日だ。
平川様は戸建てで暮らしている。
時々ガーデニングしているのを見かける。
平川様と初めてお会いしたのは、この家の庭先だった。真夏で酷く暑かった。頭がクラクラした。
ガレージに高級外車が1台とM菱のコルトが停められている。
「こんにちは。私は、M菱自動車販売の上地と申します。」
私は平川様に名刺を渡した。
「女性が車の営業やっているんだ…。珍しいね。」
「外に停まっているのは、ランドローバーのディフェンダーですね。この型は、5気筒で価値が落ちない車だったかと。部品もイギリスの軍用車だから困らないみたいですね」
平川様は驚いたようだった。
「よく知ってますね。女性で営業で食べていくのにはいろいろな車を知らないといけないのかしらね」
「いや〜、完全に趣味ですよ」
私は照れた。
「ちょっと待っててね」
平川様はご自宅の中へ行き、私にスポーツドリンクをくれた。
「あなた面白いから、毎日名刺を持ってきてよ。一定数名刺がたまったら、面白い事をするから」
それからというものの、私は真夏の暑い日、真冬の雪の日まで平川様の自宅へ通った。定休日も。
そして春先、コルトで平川様がディーラーにやってきた。平川様は私を担当に指名した。
平川様は私に手を振った。
「名刺が100枚たまったから、車を買いにきたの」
ディーラーの課長が驚いた。
「平川様、ありがとう御座います!」
私は一礼した。
「もう試乗したから問題ないしね」
平川様が選んだのは、アウトランダーPHEV。
ガソリンとEVを組み合わせたハイブリッド車で、航続距離も長い。そして、モーターの特徴で低速トルクが厚い
また、電源としても使えて、キャンプしたり災害時にも役に立つ。
元々のアウトランダーはSUVで、アウトランダーPHEVは派生車種だ。エコのため、国からある一定期間は免税だ。
係長から平川様へこう言った。
「新車が届くまで数ヶ月かかりますので」
「分かりました。ところで、これから上地さんを借りても良いですか?」
平川様は急に係長にねだる。
「上地はもう一名お客様の担当がありますから、その後はこき使ってやってください」
「お待ちしていますね。」
私は次のお客様の接客をした。
デリカD5の中古車の取り寄せだ。ミニバンだけども悪路も走れるいいとこ取りの車だ。
…………………………………………………………………………
私は平川様のご自宅へ連れていかれた。半ば拉致みたいなものだ。
平川様の横顔はとても綺麗で、美人だ。身長は160センチ位。黒髪のロングヘアで、ゆるふわのパーマがかけられている。それを後ろに縛る。
「平川様、お顔のハリツヤが素敵です。スキンケアは相当されているのでしょうか?」
「どんなに疲れていても湯船に浸かる事と、化粧水・乳液、保湿クリームを塗るくらいよ。後は日焼け対策で日中美容液を塗るくらい」
意外と普通だ。
ただ、私はシャワーだけで湯船には全く入らない。その違いだろうか。
平川様がコルトでご自宅へ着くと、車庫のシャッターが上がっていく。
スキンケアのネタで私は嬉しかった。
「本当にハリツヤ良いですね」
とまた言ってしまった。すると、車内で平川様は黙ってしまった。慇懃無礼だったかな?
「触ってみる?」
その言葉を聞いて、私は嬉しくて嬉しくて。
平川様の肌は触ったらつるんとしていて、もっと触りたくなった。
頬に触れると、ひんやり冷たくて。
そして、きめの細かい絹のような肌にうっとりする。頬の右側、左側、交互に触れる。
平川様は目を閉じた。
もしかして?
目を閉じたって事は、キス!?
私は男性が好きだ。平川様は対象にならないはず。そのはず。
すると、平川様は腹を抱えて大笑いした。
「あはは、からかっちゃってゴメンね」
私は何をやっているのだろう。
そう、車を売りに来たのだった。
「あなたから100枚名刺をもらったから車を買うことになったのよね。それ以上何かあるわけ?」
私はそれ以上言葉が出ない。
…………………………………………………………………………
月日は過ぎ…。
工場でお客様の車が完成し、ディーラーへ取りに来てもらうはずだった。
ところが、お客様は私が自宅へ運ぶように指示した。
ぶつけないように注意しなければ。
平川様がガレージに出向いていた。
「平川様、納車おめでとうございます!」
私は車から降り、平川様にお辞儀をした。
平川様は自らガレージに車を停めた。
「アウトランダーPHEV、素敵な車ですね」
私は感動した。名刺100枚の賜物だ。
「家でお茶でも飲んで行って」
平川様は何気なく誘った。
「いえ…、私は会社に戻らなければいけないので」
「お茶の時間はディーラーからもらっているわよ」
私は顔を曇らせた。
お客様のご自宅に入ろうものなら、平川様を諦めきれなくなる。また肌に触れたくなる。
「私はひとのお宅に入ることはしません。
仕事は仕事でプライベートはプライベートなんです。だから...」
言葉に詰まる。
私の目は涙でいっぱいだった。こぼさないようにするのは大変だった。
胸がギューと締め付けられた。
平川様は私の体をそっと抱きしめた。
「縁側でお茶でも飲みましょう」
私は頷いた。
縁側へ移動すると、お日様でポカポカしていた。
緑茶と和菓子をお盆に乗せた初老の女性が現れた。
「あなたが上地さんね」
「お母さん、余計な事は言わないでね」
平川様のお母様は、私の顔を見て笑顔でこう言った
「うちの娘ったら、上地さんの事を良く話していてね。可愛い、可愛いってね」
普段の平川様からは想像もつかない。
ドライなイメージがあったから。
「名刺100枚も、よほど上地さんに会いたかったからだろうね。今まで散々いじめて。今日は上地さん、泣いた後があるじゃない」
「……」
「平川様には良くしてもらっています。感極まって思わず涙が出たみたいで」
お母様は真剣な顔をして私にこう言った。
「この子は男性不信なの。今は女性としかお付き合い出来ないのよ。」
「何言っているのお母さん!上地さんが気持ち悪いと思うでしょう」
「あら私、そろそろ会社に戻らないと」
平川様のお母様は、いきなり娘をカミングアウトして去っていった。
気まずい空気が流れる。
平川様は私の手を取った。
「あなた、手の甲がとても綺麗ね。つやつやして。」
そして、私の手を平川様の唇に持っていった。私の手の甲をキスする。色々な角度で試すようにキスをして…。
「あっ…」
変な声が出る。
「やっ、やめてください」
平川様は残念そうな顔をする。
「嫌?」
私は急に思い出した。
夜のおかずを。
私は首を横に振った。
「私に触れてくれる?」
私は平川様のハリツヤのある絹のよう頬に触れた。そして、平川様の左頬にキスをした。
私はハッと我に帰った。
「会社に戻らないと!」
「またおいで」
平川様は私の手に口づけをした。
「はい」
そういえば、帰りの手段がない。
電車と徒歩で戻るか。
「私の車でディーラーへ戻りましょう」
「ありがとう御座います」
平川様と私は、早速アウトランダーPHEVに乗り込んだ。私は助手席だ。その時はこうなると予測していなかった。
赤信号のたびに、平川様は私の太股を触った。
「……っ」
平川様の手が気持ちいい。
赤信号のたびに今度は、股の付け根に触れて、こする。
私は我慢することが出来なくなった。
平川様の腕を取り寄せ、私の陰部へこすった。
「……」
赤信号のたびに平川様は私のスカートに手を入れ、陰部に指を入れる。
信号が青になると指は抜かれ、赤になると入れられる。だんだん、クチュクチュと激しくなる。
もう私はいきそうだ。
「いいよ、いって」
私は絶頂に達した。
陰部からプシャーと何かが出て、私は仰け反った。
「すごいね、潮吹き。本当にあるんだ。上地さんがいった時、白目になってたよ」
私の反応を言われると罪悪感を感じる。
私はしばらくぐったりしていた。
そして、ハッとわれに帰った。
「今回ので平川様の助手席が少し汚れてしまっていると思います。私がクリーニングをしましょう」
「いらないよ、上地さん。それより、平川様より平川でいいよ。堅苦しいじゃない」
私はディーラーで降ろしてもらい、平川さんは車で帰っていった。
金曜恒例行事。
飲み会だ。
いつも通り、同僚の大宮が今度は警告して来た。
「平川には気をつけたたほうがいいよ。あいつは多分、上地が好きなんだよ」
私の胸が高鳴る。
「名刺100枚だろ。それで家に来させるんだろ、尋常じゃねえよ。それによ、平川がディーラーへ来る時は、お前の事を目で追ってるんだよ」
それには気がつかなかった。
「あのクールだかドライなすかした感じの平川が、上地と話をすると笑うんだよ。あり得ねえ」
私は大宮に一言し返した。
「大宮は私の事好きなの?だからそんなに絡んでくるの?」
「当たり前だろ…」
大宮は机に突っ伏した。飲み過ぎたらしい。
「大宮、落ちたね。男達で背負って帰るか!」
そうして、金曜日の飲み会は早く解散した。
名刺100枚もらったら… milly@酒 @millymilly
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます