恋愛とは醜いものだ。質問は受け付けない。

私は毒瀬さざんか。普通じゃない中学一年生。

「おはよーさざんかちゃん!」


「おはよう。ゆりちゃん。」


「おはよう。毒瀬。」


「おはよう。新妻くん。」


こうやっておはようコール。一日約50回。同性異性問わずだ。おはようと声を掛けられすぎて朝の用意に送れてしまった。っていうのは今の学校での話だ。今の。じゃあ、特別に昔の話をしよう。あれは確か小学3年生の時のお話しだ。


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給食中


「さざんか、ご飯美味しい?」


年相応の高い声で挨拶してきたのはは幼馴染の未来だ。


「うん。まぁまぁかな。」


こうやって声をかけてくれるのは未来だけだ。だって朝は“大変”だから。こうやって休憩できるのは給食の時間だけなのだ。


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「いったー怪我しちゃったよ。」

「うわぁん。」


体育のハードル走。

泣くふりを派手にするあの子は幼馴染の姫野里依紗だ。ひざには特に何も悪い所は見当たらないが一応声をかける。


「大丈夫?里依紗?」


そしたら里依紗は私を睨んだ。


「うん、、。多分大丈夫だから。ありがとう。毒瀬さん。」


おそらくいや、100%嘘だ。こういうところは好きじゃない。昔のとは変ってしまった。


「それならよかった。里依紗気をつけてね。」


手を振り授業に戻ると女子の声援が聞こえてきた。


「ひなこくんがんばれー!」

「ひなこくんすごーい!」


怪我をしていた設定は消えたのか里依紗は立ち上がりひなこを応援している。


女子黄色い声援をもらうのは幼馴染の平松ひなこだ。小学3年生で身長は145㎝もありものすごくスタイルがいい。ひなこは昔から運動神経が良くみんなにモテモテだ。


「すごいよ。ひなこ。はい、水筒。」


汗をかいてくたくたになっているひなこに水筒を手渡した。


「ありがとう。毒瀬さん。」


ニッコリと笑う彼は日陰がある方へ向かっていった。


毒瀬さざんか

朝日未来

姫野里依紗

平松ひなこ

この四人で幼馴染なのだ。


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夜、夢を見た。四人での出来事。むかーしむかしのお話し。今はもう戻れないお話し。


「ねぇさざんか。あの虫捕まえてー!」


「おっけー。里依紗!三秒でとってきてやるよ。」


カブトムシをとるために木に登り素手で捕まえた。


「とったぞー!」


初めて取れたカブトムシにワクワクしていると遅れてひなこと未来がきた。


「さざんか、里依紗、アイス買ってきたよ。」


ビニール袋をぶっきらぼうに突き付けてくるのはひなこだ。


「本当、足早すぎでしょ。ひなこくん。」


息切れしながら走ってきたのは運動音痴な未来だ。


「ありがとう、ひなこ、未来。」


久しぶりの食べるアイスに興奮し、せいいっぱいの笑顔を向ける。


「まぁ当然でしょ。」


高貴に振舞う里依紗はすこし子供っぽさがあって同い年の私でも可愛く見える。


「てか、ひなこ俺の分のアイスは?」


「いや、未来遅いからもう食べた。」


「はーなんでやねん!ひなこ、食べんなってよー!」


なぞに入ってくる関西弁にじみにツボりながらも里依紗と私は未来をいじった。


「あはは、可哀想な未来くん。」


里依紗の笑い方が乾いていて1㎜もそんなこと思っていないことが伝わる。


「まぁ元気出せよ。」


背中をさすりよーしよしとやってやった。


「アイスを食べられるっていう未来だったんだよ、未来。」


大きな声でわざと聞こえるように言った。


「うわーーー!!!、天才少女ーーー!。さざんかちゃーん!。」


大袈裟に演技する里依紗は地味ににやけついていて性格の悪さがにじみ出ている。私は里依紗のこういうところが好きだ。


「じゃあ、明日は未来のために2個買ってくるから。」


どうせ嘘だと思うがこういう優しさがあるところがひなこの好きなところだ。


「もう、、、絶対だからな!ひなこ!」


泣き虫だけど友達を大切にしてくれる未来が好きだ。

こうやって4人で居られるところも大好きだ。


でもこういう時間も長くは続かなかった。


ある日の朝、


「どうしたの?さざんか?」


心配そうに里依紗が見ている。

ひなこもちらちらと私を見る。

未来は顔と顔がくっつくかギリギリ程度に見てくれる。

私は自分の手のひらを見た。

その白い手は鮮血に染まった手にしか私には見えなかった。


「ううん。なんでもないよ。」


三人とも不満そうな顔をし席へ戻った。帰り道が同じ未来は私の方を見てずっと背中をさすってくれた。でも内容は聞かないでいてくれた3人の優しさに甘えた。でもこんな時間も長くは続かなかった。


「ねぇ、さざんか。そんな暗い所で何しているの?」


気が付けばいつもの3人が私を見ている。でも私の顔は見ない。見ているのは私の手だ。


「なんで、死体なんて持ってるの?」


聞かれても私は答えられない。答えたくない。けど答えないといけない。


「3人とももうちょっと待って。明日家来て。そしたら全部伝えるから。」


震える手に涙が伝う。3人は歩いて行ってしまった。


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「来たよ、さざんか。」


重い扉を開け中へ向かい入れる。


「ねぇ、本当の話して。」

「さざんか、昨日持っていたのは死体だよね?」


人の心情も考えずに話の本題をするひなこのそういうところが好きだ。3人の目がぎらついている。全身に冷や汗をだらだらとかく。


「、、、そうだよ。ひなこ死体だよ。」


震える声で話すとその場が凍り付いた。


「なんでそういう経緯になったの、さざんか。」


里依紗の訴えは目で伝わる。息を大きく吸って吐いた。


「それはしょうがないことだったんだよ。家は貧乏だから。人を殺して金品を奪うことで生計を立てるしかなくて、、、。本当はもうじき引っ越す予定だったけど、引っ越す前にバレちゃったね。」


へらへらと笑う。傷ついていることがばれないように。


「なんでよ、、なんでそんなことしちゃうの。さざんか。困ってるなら私たちを頼ってよ。友達でしょ。」


ぽたぽたと涙がたれる。私は泣き虫だね。といつものように未来をいじることができなかった。そのとき、早く気づければよかったかもしれない。ひなこが携帯を持っていることに。


「プルルル…」


ひなこは警察に電話をかけていた。


「はぁ!?やめなよひなこくん!」


里依紗は慌てて携帯の電源を切る。


「なんでだよ。これは警察案件だろ!?」


「でもひなこくん、もっと話聞いてあげようよ!」

「人の心がないの!?」

「友達でしょ!?」


里依紗とひなこが言い合う。未来は慌てて止めようとしているけど全部無駄だ。もう私はみんなと一緒にいられない。


「もういいよ!いままでありがとう。私自首しに行くから。」

「さよなら」


まるで最後の挨拶みたいだ。

私は大きく足を動かすと未来が私を止めた。


「さざんかは俺たちの事好き?」


「、、、好きだよ。心の底から。」


みんなは私を止めようとはしなかった。


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二週間後、私は戻ってきた。


「おはよう、ひなこ、里依紗、未来。」


「おはよう、さざんか。」

「、、、はよ。」

「、、、、。」


未来は私に声をかけてくれたけど他の人たちは声をかけてくれなかった。

ひなこはかすれるような声で話してくれたが、里依紗は私を睨みそっぽを向いた。


どうやら私のうわさは広がっているらしい。みんな私を無視していく。


「ねぇ、その噂誰が広めたの?」


私は勇気を出してあまり話さないクラスメイトに聞いた。


「え?私は里依紗ちゃんから聞いたよ?」


まぁそうは感じていたが納得だ。という過去のようなことを去れるのは承知済みだ。その時私は気づけなかった。未来がこっちを見ていることに。



「里依紗、なんで広めたんだよ。」


俺、朝日未来は里依紗を授業後に呼び出した。


「だって、ひなこくんがそうするって言ったんだもん。」


「は!?二人が言わなかったらさざんかは普通の生活を送れてただろ。」


「でも、言えって言ったんだよ。ひなこくんが。」

「私従うしかなくて。」

「ひなこくんのこと、好きだから。」


恋愛とは醜いものだ。一気に関係が崩れる。俺が言えたことではないけども。


「ってことで。ばいばい未来。」


俺は何も返すことができなかった。



「里依紗なんで広めたんだよ。」


未来がこっちを睨んでいる。でもこっちにはこっちの事情があるわけでなんで私が責められないといけないのかが分からなった。


「だって、ひなこくんがそうするって言ったんだもん。」


~~~


『里依紗、さざんか流石にやばかったよな。』


未来とさざんかと別れた後ひなこくんとは道が同じ方向だったので二人で話していた。いつもだったらひなこくんと話せるとわくわくしていたのになぜか調子がのらない。


『うん。でもさざんかには事情があったもんね。』


『だとしても、やって良いことと悪いことはあるだろ。』

『殺人なんてもってのほか駄目だし。』

『俺たちはまだ年齢で守られているけど、大きくなったら一発アウトなんだぞ。』


『まぁ、そうだよね。でも秘密にしておかないと。』

『さざんかが可哀想。』

『そう思うよね、ひなこくん。』


『うん?なんで?』


しばらく考えている彼の事をじろじろみた。


『ああ、良いこと思いついたわ。』


次の瞬間、私は全身が凍り付いた。


『この話、みんなに広めるわ。』


『は?なんでよ。広めったって何の利益もないよ。』

『さざんかの今後の人生が可哀想。』


流石に好きだったひなこくんでもこの話には反抗した。


『でも俺、さざんかのこと好きだから。』


私の初恋はあっけなく散ってしまった。


『だって広めたらさ、俺の事絶対に嫌いになるだろ?だったらさ、あいつの思い出にもにじむしいいじゃん?』

『こうやって執着してくれるだけでものすごく嬉しいんだよね。』

『協力してくれるよね?里依紗。』


夕焼け空にキラキラと光るひなこくんの笑顔が気持ち悪かった。


『もちろん協力するよ。だって“友達”だもんね。』


これはひなこくんのことが好きで協力したいという気持ちもあったけど、なによりひなこくんがさざんかに奪われてしまったことが悔しくて仕方がなかった。



「ひなこが広めたの?」

「さざんかのこと。」


次の日、俺はひなこを問い詰めた。


「なんでって、俺さざんかのこと好きだから。」

「心から愛してるから。」

「それは、未来も同じだろう?」


そうだ。俺はさざんかの事が好きだ。小さい頃から幼稚園の事からずっと一緒。


「でも、このままだったら未来にとられるし。」

「未来の方がさざんかの思い出に残っているだろ?」

「長い間一緒にいたんだからさ。」


そうか。彼は自分の存在をさざんかの心臓に閉じ込めたかったのか。


「でも、本当に好きだったら、そんなに歪んたやり方しないだろ。」


「だから、嫌われてもいいんだって。」

「心の底から大嫌い、死んでほしい、そう思われたっていいの。」

「好きなんだもん。」

「さざんかの思い出が未来との思い出よりも強くなればそれでいいの。」


「そっか。分かったわ。」


俺はまたあいつらの事を止められなかった。



「へぇーめっちゃ広めたね。里依紗。」

「もうクラス超えて学年全員知ってるだろうね。」


俺は携帯をいじる。


「何人とつながってると思ってるの?」

「500人だからね。」


ちなみに俺は30人ほどしかいないため里依紗の存在はとてもありがたかった。


「でも、名前まではやりすぎだっての(笑)」


「え?やりすぎ?」


「だって、広めてほしいとは言ったけど名前まで言えなんて言ってないだろ?」


「え、、?でも、、、。」


「まぁまぁ、俺は里依紗の事せめてないよ。ありがとう。協力してくれて。」


俺は里依紗の事を慰める。やさしく、やさしく。でも決して好きとは言わない。


「じゃあね、里依紗。明日もよろしく。」


俺は里依紗と別れて家に入った。未来に言われた言葉。


『でも、本当に好きだったら、そんなに歪んたやり方しないだろ。』


それはあくまでも強いものが言えるだけで俺には到底言えない。そして自分で狂っていることも分かっている。本当に恋愛ってものは怖い。



俺は家で夕ご飯を食べていた。鮭のムニエルから出ている汁が血にしか見えない。


「ごちそうさまでした。」


「もう食べないの?未来。」

「今日のご飯美味しいよ?」


姉ちゃんがいいながらムニエルに手を付けていた。


「ごめん、今日食欲なくて。」

「部屋戻るね。」


姉ちゃんの止める声が聞こえたけど無視して階段を上がる。自分の部屋に閉じこもり天井の上を見上げた。里依紗にもひなこにも考えがある。その二つは俺がもしもその立場だったらやっていたかもしれない。関係ってたった一つの行為で崩れるものなんだな。あーあ、こんなことなるなら。


「「「さざんかがいなければよかったのに」」」


どこかで二人の声が聞こえた。



私はアスファルトの上に座っていた。この一つの事で仲良くなくなってしまった。悲しい。悲しい。でも私が悪いのだ。冷たいアスファルトは私を包んでくれはしなかった。



いままではさざんかのことを慕っていた彼らだったが、


「顔が気持ち悪い。」


「性格悪い。」


「両親に似ていない。」


「悲劇のヒロインぶってる感じやばい。」


「犯罪者は黙れ。」


だとか、散々ないじめを受けていた。加害者の里依紗とひなこは白々しい顔をしていた。俺はさざんかに毎日挨拶をしたけど何の効果も示さなかった。いつしか彼女にとって顔はコンプレックスになっていた。


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一か月後、さざんかはいなくなっていた。机と名前シールが一部はがされていないところだけは残っていた。それからぱたりとみんな、さざんかのことを話さなくなった。まるでいないものを扱うように。ひなこも里依紗も違う人と話して俺だけが4人での関係を引きずっている気がして虚しくなった。



私は転校した。いや、正確に言うと親がいなくなって孤児になったのだ。孤児院に入るために私は違う学校に行くことになった。ずっとそこにいたらきっと私のメンタルは傷ついて一生の傷を抱えるだろう。いや、抱えないといけない。でも、3人の事は大好きだった。今でも大好きだ。未来、里依紗、ひなこ。


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新しく入った小学校にはまだうわさが流れておらずみんな私の事をワクワクと見つめてくれた。よかった。私の事を知らない人がいて。これなら平穏な日常生活が送れるようだ。


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とある日突然呼び出された。


『私一学年上の人よろしくね。』


「誰ですか?」


『えっとねぇーあなたのうわさを聞いてきたのよ。』


噂とはあの話だ。あの話。


『そっか、名前名前!』


『名前はー“痲屡”』






















『これからよろしくね。さざんか。』


End



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ここまで読んでくださりありがとうございました!さざんかちゃんの過去を明かしたくて書きました。いつもヤンデレ書いてるやつが何言ってるんだ('Д')っていう題名だったと思いますがまぁ、こういうことだったんです。詰め込みすぎまが、、、、。本当に見てくれた皆様に感謝を!クッソどうでもいいかもしれないですけど、朝日未来君の名前は未来は「みらい」ではなく「みく」です。なんとなく名前がコンプレックス見ないな設定にしたかっただけなんです。許してください。ちなみにこの題名は未来くん視点で話しています。最初はヤンデレ要素取り入れないで話そうと思っていたんですけどまぁ、やっぱりいれるよな!?と思って入れました。次作もよろしくお願いします。



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