1度だけの春

わらびもち

第1話 出会いはいつも桜の季節

鳥のさえずりが心地よい朝8時。


8時...?!


そう、高校生活初日から遅刻のピンチである。


身だしなみも程々に家を飛び出す。


朝ごはんは...別にいいし!

お腹すいてないし!

全然食べたくないし!

なんならダイエット中だし!!


空気を読まずに鳴るお腹に右フックを打ち込むと全速力で自転車を走らせる。


あれ、初日から迷子かも。

慌てふためく私に声をかけてくれた地元のおばあさんは道を教えてくれた。


「なんだか懐かしいね…。

これから沢山楽しいことがあるよ。」


「ありがとうございました!

私も楽しみです!!」


「いい高校生活になるといいね。」


そう言ってもう使わないからと桜色の栞をカバンから取りだし私の手に握らせた。



幸い高校まではそれほど遠くないため間に合いそうだ。




ホームルーム開始のチャイムと共に教室に滑り込む。


あぁ、、、間に合った...のか?


周りから向けられる視線


見慣れぬ顔


私の席は...あれ?



「ま、間違えましたー!!」



教室が違うのだから自分の席などあるわけがない。


昔の自分を思い出してか、にっこりと笑うおじさん先生。



「セーフ...」



チャイムがなり終わった15秒後程に本来行くべきであった教室に着く。


「アウトですよ。」


「え...」


「嘘です、今日は初日なので見逃します。」


担任の先生がその爽やかな笑顔を私に向ける。


「あ、ありがとうございます!!」


開いている窓から春風が吹きカーテンがなびく。

そこから見える景色は、校庭を囲むように植えられた満開の桜。



あの先生の担当の教科数学だっけ...。



人生に何度も訪れる春。



でもその人その人との出会いは人生に1度だけしかないのだ。

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1度だけの春 わらびもち @warabimochi5000

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