第4話

 次に目覚めたとき、僕は、彼女の病院のベッドの上でした。

 何故でしょう?

 僕は、人間でした。

 目覚める事のない彼氏さんの姿でした。


 懐かしい顔、発見!

 ルシフェル君が、枕元。

 死神さんは、ニッコリ笑顔。

 死神さんは、僕の手を取り、消えて行きました。

 ルシフェル君に、質問です。


「いったい僕は、どうしたの?」


「僕は、悪魔。その人間と取り引きしたのさ」


 ルシフェル君。

 彼氏さんと取り引きしました。

 これ以上、彼女が苦しむ前に肉体を手放せば、彼氏さんの生まれ変わりを優先します。

 そのかわり、肉体の残り時間、使わせて下さい。

 ルシフェル君。

 魂の取り引き、お仕事です。


 銀の矢が、産み出した僕の魂もどき。

 もちろん魂では、ありません。

 これは、彼女を思う僕の気持ち。

 父や母の僕を思う気持ち。

 ルシフェル君の友情。

 そして、彼女が僕を思う気持ち…少々。


 そして…。

 僕の初恋の塊。

 その塊が、魂のように、空に昇っていきました。


 昇天途中で、捕虫網キャッチ。

 幼い頃のルシフェル君。

 昆虫採集が、得意分野。

 僕たちの夏休みの思い出。

 懐かしい思い出。


 僕の身体に、魂不在。

 塊だけが、この身体の中に。

 僕は、人間に成りきれません。

 半分だけの吸血鬼。

 おかげさまで、病を外に、追い出す事が出来ました。

 

 もちろん、彼の肉体だけど、今は僕。

 担当しているのは、献血美人。

 僕は、死にきれなかった吸血鬼。

 半分人間、吸血鬼。

 彼女は、僕に抱きつきました。


「会いたかった、会いたかった。ようやく目覚めてくれたのね。ずっと待ってたわ」


 本当の事。

 彼女に言うべきでしょうか?

 僕は、迷いました。

 しかし、彼女は医療のプロ。

 そんな奇跡は起きない事を知っていました。


 僕も、彼女を騙せませんでした。

 

「分かりました」


 何を分かっていただけました?

 今度の分かりましたは、どの分かりましたでしょうか?

 僕の恋。

 片思いから、無事脱出?


 彼女の血?

 僕は、半分だけの吸血鬼。

 牙を無くした吸血鬼。

 首に噛み付く事が、出来ません。


 それでも空は恋しくて。

 黒いマントは、ヒラヒラ。

 お日さまの空をフワフワ。

 彼女の心をスイスイ。


 あなたの心の大空。

 明るく照らすお日さま。

 呼び戻す奇跡。

 僕の望む奇跡。

 叶える新しいパーツ。

 僕の心で、いかがでしょう?


 僕は、半分吸血鬼。

 三百歳の初恋です。

 とても、ドキドキ、プロポーズ。


 時々、献血お願いします。



       終わり

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吸血鬼にも献血を @ramia294

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