第3話

 吸血鬼は、損な役回り。

 ルシフェル君の言う通り。

 僕たちは昔から、人間に滅ぼされる存在。

 だから今回消えたって、僕はぜんぜん平気です。


 矢は、山の向こうの洞窟に。

 ドラゴンの鉄の爪と、炎の息吹で守られていました。

 もちろん、僕たちは人間ではないので、あっさりと矢を奪い、僕は町へ、ルシフェル君は地獄へ、帰っていきました。

 

 再び今宵は気持ちの良い、月夜。

 僕は、彼女に正直に打ち明けました。


 僕を人間に変えてください。

 そして、恋人に。

 あなたの大事なあの人は、もう助かりません。

 これ以上あなたの心が、壊れる前に新しい恋をあなたの中に。


 あなたの心の失ったパーツ。

 僕の心で、埋めましょう。

 あなたのこれからの人生、僕とご一緒に。


「分かりました」


 何を分かっていただけました?

 彼女からのお返事。

 オーケーですよね。

 まだまだウブな三百歳。

 これで、めでたく両想い。


 僕は彼女の手に矢を握らせて、自分の胸に突き立てました。

 あれ?

 間違いました?

 彼女の中の彼の思いを吸い取ってからの方が、良かったかな?


 僕の体は消えていきます。

 

 彼女の心のあの人への思い。

 そう簡単に消えない様です。


 彼女の分かりましたは…、分かりません。

 人間の心、複雑です。

 僕には、全然分かりません。

 だって、僕は吸血鬼。

 彼女の首に牙をたて、あの人の思い、吸い取りました。

 明日からの彼女。

 きっと幸せ訪れます。


 僕の体は消えていきます。

 それでは、皆さんさようなら。


 

 

 



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