吸血鬼にも献血を

@ramia294

第1話

 僕は、吸血鬼。

 これでも、吸血鬼界の王子様。

 只今、人間界に社会勉強留学中。


 今夜も綺麗なお月様。

 今宵のディナーは、どなたでしょう?


 僕は、美味しそうな血液美人を探して、月夜の空へと飛び出しました。


 黒いマントが、ヒラヒラ。

 僕の身体は、フワフワ。

 夜空から、今夜のご馳走、物色中。


 心配なんて要りません。

 あなたの首筋から ほんの少しの血液。

 僕に分けていただきます。

 もちろん、ただ頂くとは、申しません。

 あなたの心も少しだけ、僕の中へと流れ込みます。

 あなたの悲しみも、少しだけ僕の物に…。

 頂いた血のお返しに、あなたの悲しみ少し、引き受けます。

 


 フワフワ、空から物色中。

 なかなか、今夜のご馳走、見当たりません。


 僕は、お腹が空いて目が回ります。

 飛んでる姿も、フラフラに。

 倒れる寸前、甘い香り…。


 きっと、優しい血液美人。

 僕は、彼女の背後に、フワリと着地…出来ませんでした。

 お腹がすいて、倒れました。

 身体に、力が入りません。

 彼女は、振り向き、驚きます。


「どうされました?」


 僕は口をパクパクしますが、お腹がすいて声になりません。


「分かりました」


 何を分かっていただけました?

 ひと言も話さず、僕の心が分かるとは。

 もしや、あなたは、運命の人?

 彼女は、救急車を呼びました。

 運ばれた僕は、病院へ。


 彼女は、病院のナースさん。

 ドクターの指示は、僕に輸血。

 僕は慌てて、断りました。

 僕が、欲しいのは血液美人の血。

 どこの誰の物とも分からない血液。

 人間は平気でも、僕たち吸血鬼は死んじゃいます。


 少し落ち着いた僕は、彼女に自己紹介。

 僕は、吸血鬼。

 あなたの血液を少しだけ、いただけるとそれだけでもう満足。


「分かりました」


 何を分かっていただけました?

 吸血鬼の僕に驚かない彼女。

 ナースの皆さん、こんなに冷静?

 彼女は、僕の隣のベッドに。

 いきなりですか?

 僕は、恋の経験ありません。

 意外とウブな三百歳。

 

 彼女から、僕に赤い糸。ではなくて輸血のチューブ。

 流れ込む血液は、赤い色。

 これは、まさかの運命の…。

 赤い…。

 赤い…。



 チューブ?






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