第12話

討伐依頼は出されているものの、依頼を受けられるものが居らず放置されていた雷神龍ナルハタタヒメの討伐。少し前まで雷神龍ナルハタタヒメが咆哮を上げるたび、近くの村は地震の様に家が揺れ


住民から早くどうにかしてくれ、と泣きつかれていた


それに繁殖時期も近いため住民達の不安は増すばかり。ダンジョンの中だけに留まっていればいいのだが、悲しいかなモンスターのレベルが上がれば上がるほど、外へと出やすくなっている。



ただ、ダンジョンを巣として認識しているためその場を長期離れるという事はないが…。あぁ、人が買えるペット(モンスター)みたいなのもいるにはいるが、




まぁ、それは追々話すとしようか。


「さて。ここまで来たが…静かすぎないか?」


小さく溢した言葉は、やけに静かすぎるダンジョン内で響いた。第5階層から第2階層まで何事もなく…というか、モンスターにすら会わずスムーズに下の階層まで来たわけだが、


ここまで何の気配も無いというのも、逆に緊張が走る



厳選し連れてきた奴らも普段見られる無駄口はなく。


寧ろいつでも戦闘に入れる様に態勢を取っているが…




「留守、か?…にしても、この匂いは、」


鼻を軽く抑える様にして、当たりを見渡す。


ダンジョン内の為、視界は正直悪く。松明に火をつけて前に進むが…ずっと感じている“違和感”。


2階層に来てからダンジョンでは不釣り合いな…、小腹が空く様な香りが漂っている。奥へ奥へと進めばそれは濃ゆくなる。


まるで誰かがここで…いや、まさかな。





導き出された答えをすぐさま否定し、一笑したのだが


その余裕な態度は直ぐ様、消える事となった。








第2層を歩く事、数十分。もう直ぐ1層へと差し掛かる時、事態が急変した。


「だ、団長!こっちへ来てください、見てほしいものが…」


「あぁ。今行く」



少し前を歩いていたら隊員が血相抱えて駆けてくる。


顔面蒼白、まさにこの言葉が当てはまり尋常では無いほどの量の汗をかいていた。


…人の死体でも見つけたか?



慌てながら道案内をする隊員の後を追い、そんな事を考えていた。…が、予想を遥かに上回る“それら”が地面へと転がっていた。




「はっ…はははっ!!…人間の死体の方がまだ笑えるぞ、」


声を上げ、笑う俺を見て隊員たちは引いていたが至って俺の反応は普通だ。寧ろ俺からすれば、俺の顔色を窺う隊員らの反応の方がよっぽど異常に見える。


なぜこの状況で通常通りの反応ができるのか、


「戻るぞ。全員直ぐ様撤収だ」


「え!?最下層まで行かなくて良いんですか!?」




ばさり、とマントを靡かせ踵を返す。さっさと帰って報告書を作成しなければ…、


あぁ、にしても一体誰が…


「雷神龍ナルハタタヒメは既に死んでいる。その転がっている核が証拠だ。で、おそらくだが…ふっ、」





思わず口角が上がったのは無理もない。


不要だったのか、はたまた置き忘れか。地面に捨て置かれた龍の第2の心臓は傷もなくただ落ちていた。


そう。弱点といわれる核は無傷のまま屠った誰かは…


第2層で雷神龍ナルハタタヒメを料理して食ったのだろう。でなければ、雷神龍ナルハタタヒメの削った鱗が地面に落ちている事は無かった筈だ。



そして、この肉を煮込んだ匂いと火を起こしたであろうマキ。全てが物語っていた。






龍は既に死に、


龍を秘密裏に処理した奴が此処にいた事を。

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最強?勇者?陰の支配者?何言ってんの唯の料理好きな一般人です。 しず。 @sizu06

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