第11話-プロローグ編-

デルド帝国では割とお高く、そこそこ評判のいい宿“星のカケラ”に一晩お世話される事となった。きっかけは宿の看板に美味しそうなご飯の絵が描かれていたからである。


ノリと勢いって大事だと思うんだよね。


行き当たりばったりの一人旅。所持金はつい先程貰った5万円だけだけど、一晩ならお風呂、ご飯、寝床で5万円。この値段を安いと感じるか高いと感じるかは人それぞれだ。そういえば昔、って言っても前世の話だけど、フランス料理店に親が連れて行ってくれた事があったっけ。



確か料理代だけで5万円…だった様な。


緊張しすぎて何を食べたのかも曖昧だが、最後に出されたマフィンの美味しさだけは覚えてる。


浮かれて箸で食って親に軽く叱られたのは今となってはいい思い出だし、思い出すと胸がほっこり温かくなる。





そう言えば皆…元気にしてるかな。


思い出すのは前世で俺を育ててくれた親と、幼馴染の顔。そして、俺に料理を教えてくれたばぁちゃんの優しい笑顔。


ちゃんと考える事はなかったが、向こうの世界で俺は…命を落としたのだろう。前世の記憶ははっきりあるのに、どうして“ここ”に居るのかがわからない


もしかしたら何かの病気にかかり、病院で寝たきりの意識混濁状態でずっと夢を見ている。という可能性もあるにはあるが…、



ここでの生活が長いからそれは可能性として低い気がするんだよなぁ。それに、






頬をつねれば痛いし、怪我をすれば当たり前のように血がでる。人間の第三欲求だってあるわけで…


転生してこの世界の住人になった、


そう考えるのが妥当だろう。



『ぬぁあああ…何も考えたくないなぁ』


ついついゆっくりしてしまうと思考がマイナスへと転がり落ちてしまう。前世でこれを病む、なんて言っていたが。異世界来てまで病みたくない!!


せっかく素敵な宿でお泊りしてるんだし。




なんていったって、今!俺は!


あの露天風呂に浸かってるんだから病む暇なんて無いわけよ。



野外のお風呂さいっこう。上を見れば落ちてきそうなくらい綺麗な星と、月。湯船はちょっとばかり熱いが、水風呂もある。かいた汗を水で流す。


誰だよ考えた奴は天才か。


『にしても広いな…泳げそう』



夜の10時。

利用客がかなりいるだろうな、と思いながら入った風呂はがら空きで。露天風呂なんかは貸し切り状態。


あぁ遊園地とか人生一度くらい貸し切りたい、なんて考えていたが。これはこれでありだなぁ



若者、国の重鎮達がよく足を運ぶという宿







今日、この日。星のカケラにお客様が居なかった理由を俺は知るはずもない。



とある龍討伐の為、騎士団はダンジョンに潜り。国を支える有力者達は会議を開いていた事を。










同時刻。あるダンジョンの第二層にて。


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