強欲な壺 後編

⌛数年後⌛


女子大生A

「ねぇねぇ知ってる?最近学生なのにポルシェで大学まできてる人がいるって」


女子大生B

「あーアタシも聞いたことある。全身ハイブランドでかためてる人でしょ。なんか親がメチャメチャ金持ちで南麻布のマンションに住んでるって噂聞いたわ」


女子大生A

「えーいいなぁ。アタシを彼女にしてくれないかしら」


(´・ω・`)

「ねぇそこの二人組、もしかして今俺の噂話してた?」キラキラ


女子大生A・B

「えぇーーーーーーウソーーーー本物?????」キャッキャッ


(´・ω・`)

「はははは、本物に決まってんじゃん。そういえば今度の週末、暇なら俺の家でBBQパーティーやりたいんだけどもしヒマだったらどう?」


女子大生A・B

「絶対行きますぅ!!」


(´・ω・`)

「これ俺のインスタだから登録しといて。じゃあね、講義あるから」スタスタ


女子大生A・B

「はいぃぃぃぃぃぃ」


(´・ω・`)

「・・・物に目が眩み勉強を疎かにした俺は当然いい大学に入ることができなかった。だがしかし、俺は強欲な壺のお陰で物欲を具現化することができるようになった」


(´・ω・`)

「欲しい物が容易に手に入る。幸せすぎるやんこんなん。何でも思うがままやん」


(´・ω・`)

「俺は人生を悟った。金のあるところに金が集まり、金のあるところに人が群がる。・・・つまり世界の中心は俺や。俺こそが世界や」


(´・ω・`)

「物欲主義って・・・素敵やん」


🏘家🏘


🏺

「好きな景色を差し出せ」


(´・ω・`)

「カラオケでオールした後に見る朝焼けとビジネスマンの流れに逆らって向かう駅!好きな景色や」


🏺

「幸福な時間を差し出せ」


(´・ω・`)

「冷房ガンガンのなか毛布にくるまって昼寝や」zzz


🏺

「ほっと一息つく瞬間を差し出せ」


(´・ω・`)

「こたつの中で食べるアイスクリーム」


🏺

「不愉快な音を差し出せ」


(´・ω・`)

「黒板を爪で引っ掻くやつや」ギイイイイイ


🏺

「悪夢を差し出せ」


(´・ω・`)

「めっちゃ早いエレベーターに乗れずにずっと硬直している夢や。今でもエレベーター乗る時は慎重になる」ウィーン


🏺

「恐怖を差し出せ」


(´・ω・`)

「子供の頃お寺の境内の下に忍び込んだ時に、真っ暗闇の中に猫の皮だけの死体があったんや。猫は死に様を見せないっていうけどホンマやったんやなって感慨深かったわ」


🏺

「・・・それは恐怖ではない」


🏺

「運がいいと感じる瞬間を差し出せ」


(´・ω・`)

「コンビニでの会計が777円!」チャリーン


🏺

「高校生の頃の楽しかった思い出を差し出せ」


(´・ω・`)

「酒のんで酔っ払って学校忍び込んでプールで泳いだことやな」スイ-


🏺

「頂戴した。受け取れ」


(´・ω・`)

「ふぉおおおおお!!!金銀ダイヤにプラチナ、ロレックスにウブロ!笑いがとまらんわ!!」


(´・ω・`)

「あっ、せやせや今日は実家に取りに行かなあかん物あったんや。悦に浸る前に取りに帰るか」


🏠実家🏠


(´・ω・`)

「ただいまー」


(*´ω`*)

「あら、お帰り。どうしたの?」


(´・ω・`)

「ちょっと必要な物があるんや。それとったら帰るで」


(*´ω`*)

「あら、そうなの?今日の夕飯は唐揚げにしたから食べていけば?よくつまみ食いしてたじゃない?」


(´・ω・`)

「・・・はっ?俺がつまみ食い?そんなはしたないことするわけないやん。変なの」タッタッタ-


(*´ω`*)

「あら?一体どうしちゃったのかしら?」


(´・ω・`)

「あったあった、これやこれ。んじゃ母さんまた帰ってくるわ!達者でな」バイバイ


(*´ω`*)

「あっちょっと。行ってもうたわ」


(´・ω・`)

「さてさて、はよ家帰ってひとっ風呂浴びながらシャンパンと洒落込むか」タッタラター


「あれ、おいおいめっちゃ久しぶりやん。元気しとん?」


(´・ω・`)

「・・・どちらさんですか?」


「いやいやそんなボケいらんから。俺やん俺。高校ぶりやから忘れるわけないやん」


(´・ω・`)

「いやぁ、人違いだと思いますよ。すみません急いでるんで」シュタタタ


「あっおい!なんやあいつ・・・」


(´・ω・`)

「なんや今の変な男は。も、もしかして俺の噂を聞きつけて金を奪いに来た強盗とかか!怖っ!警備会社と契約してセキュリティー強化しとこ」


🏺

「・・・・・・・・」


🏘家🏘


女子大生A

「えぇーなにこの家ーメチャメチャ広いですね。眺めも最高」


(´・ω・`)

「そうか?大したことないやろ」ドヤッ「おっ、そろそろ肉焼けるで」


女子大生B

「じゃあ早速、いただきまーす。何っ!!このお肉超やわらかーい」


(´・ω・`)

「それは松阪牛やな。最近ハマっとんねん。他にもアワビや伊勢海老もあるから好きなだけ食べてな」


女子大生A・B

「きゃあああああああ、ありがとうございまーす」ウットリ


(´・ω・`)

「た・・・たまらんこの感覚」ゾクゾク-「もっと俺をチヤホヤしてくれー」


女子大生A

「あれ、ねぇねぇここに高校の卒アルあるんだけど。見てもいいですかぁ?」


(´・ω・`)

「構わんよ!!」


女子大生B

「あっ、これ俺さんですか?これは何の写真なんですかぁ?」


(´・ω・`)

「あぁ、それは・・・なんやったっけ?ん?これホンマに俺か?」


女子大生A

「えぇー何ソレー新ギャグですか?」


(´・ω・`)

「・・・よ、酔っ払ってるからわからんわーー。そんなことよりはやく肉食べようや!!」


女子大生A・B

「あっはーーーーーい」


(´・ω・`)

「・・・・・・・・・・・・・」


女子大生A・B

「今日はありがとうございましたーお邪魔しましたー」タッタッタッ-


(´・ω・`)

「おぅ、気をつけて帰るんやで」


(´・ω・`)

「おい、強欲な壺」


🏺

「呼んだか?」


(´・ω・`)

「最近不可解なことが多いんや。知らん男が声かけてきたり、卒アル見ても何も思い出せん。写真に写ってる自分の状況が全くわからんのや。俺と一緒に写ってる奴らは一体誰なんや?」


(´・ω・`)

「これもしかしてお前のせいか?」


🏺

「否。欲するものの対価を自発的に差し出しているのは汝だ。我はそれを頂戴するのみ」


(´・ω・`)

「・・・今まで気にせんかったけど、頂戴するって具体的に何なんや?」


🏺

「文字通り汝の所有するそれを我が頂くということだ」


(´・ω・`)

「・・・ようするに俺の記憶や過去がお前のものになるってことか?」


🏺

「そういえば理解できるのか?そうだ」


(´・ω・`)

「・・・最悪やんそれ」


🏘家🏘


(´・ω・`)

「(欲しいと思うものは何でも手に入った。せやけどその代償に俺の過去が消えとる)」


(´・ω・`)

「(アルバム見ても誰かわからんやつがいっぱいおるし、スマホの電話帳見ても知らん名前ばっかや)」


(´・ω・`)

「・・・記憶も過去も経験したことも消滅したとして、果たしてそれは、それでも俺なんか?というかそもそも何をもって俺は俺なんや?」


(´・ω・`)

「あかん、不安なってきた」ガクブル


📞ヴーヴーヴーヴー📞


(´・ω・`)

「はいもしもし」


ナース

「あっもしもし、こちら〇〇病院です」


(´・ω・`)

「はぁ?」


🏥病院🏥


(*´ω`*)

「ごめんねぇ、大学で忙しい時に」


(´・ω・`)

「えっと、つまりウチの母が胸の痛みが数日引かんから病院来て検査受けたら、肺癌やったと・・・」


医者

「そのとおりです。只今入院の手続きをしております」


(´・ω・`)

「治るんですか?」


医者

「このケースから完治した患者さんを何人もみてきました。お母さん、一緒に頑張りましょう」


(´・ω・`)

「頑張るって・・・。あんたにとっては数いる患者の一人やろうけど、俺にとっては唯一の母親なんや。金ならナンボでもある。お願いやから助けてくれ」


医者

「最善は尽くします!」


(´・ω・`)

「(政治家か)」


🏘家🏘


(´・ω・`)

「おい、クソ壺」


🏺

「呼んだか?」


(´・ω・`)

「現代医学では100%完治する病気ではないんや、癌って」


🏺

「・・・・・・」


(´・ω・`)

「お前ならできるか?癌を完治する薬」


🏺

「これまでこの世に存在しないものを所望した輩はいない」


(´・ω・`)

「そらそうやろな」


🏺

「だが、試す価値はある。なぜなら欲望の可能性は無限大なのだから」


(´・ω・`)

「クソ壺っ!!!」ジーン


🏺

「代償として全てを差し出せ」


(´・ω・`)

「はっ?」


(´・ω・`)

「全てって俺の全部ってことか?そんなことをしたら俺は一体どうなってまうんや?」


🏺

「汝はもう汝である所以を忘れ何者でもなくなるだろう」


(´・ω・`)

「なんやねんそれ、母さんをとるか自分をとるかやん」


🏺

「強制はしない。選択しろ」


(´・ω・`)

「少し時間くれ・・・・・・」


🏥病院🏥


(*´ω`*)

スヤスヤzzzzzz


(´・ω・`)

「約束は果たしたからな」コトッ


ーーー今昔骨董品店ーーー


(ΦωΦ)

「いらっしゃいませ。おやっ、なんだいもう戻ってきたのかい?今回は早かったねぇ」


(´・ω・`)

「馬鹿は御しやすい。人格も財産も手に入った」


(ΦωΦ)

「ヒッヒッヒッ、ではそろそろ次の土地に移るとしようかね」


(ΦωΦ)

「欲望がなければ世界は発展しないだろう。欲望がなければ人類は進化しないかもしれない。欲望が身を滅ぼすこともあれば誰かを助けることもあるだろう」


(ΦωΦ)

「だが必然なこともある。欲望に喰われたものの末路はいつだって悲惨だってことさ」ヒヒヒ


ーー路上ーー


警察官

「(なんか挙動不審な輩がいるな)、そこの君!ちょっといいか」


(´・ω・`)

「・・・ん?俺のことか?」


警察官

「えらく顔色が悪いな。家は近いの?」


(´・ω・`)

「家?俺の家はどこや?近いんか?」


警察官

「名前は?」


(´・ω・`)

「俺の名前・・・わからん。あんたは俺の名前知っとんか?」


警察官

「・・・精神病患者が脱走したって話あったかなぁ?」


(´・ω・`)

「教えてくれ。俺は一体誰なんや」


   完

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(ΦωΦ)強欲な壺  FLOKI-Q @radio062233

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