(ΦωΦ)強欲な壺 

FLOKI-Q

強欲な壺 前編

(´・ω・`)

「俺は塾通いに勤しむ高校三年生や。今日も塾の帰りにいつもの商店街をトボトボ歩いてる。足取りは勿論重いで」タメイキ-


(´・ω・`)

「年を重ねる毎に学力の重要さを痛感するなぁ。なんで小学生の頃からもっと頑張って勉強せんかったんやろ」トボトボ


(´・ω・`)

「そもそも勉強した先に何があるんやろ。いい大学入って、いい会社入って、それが何になるんや?・・・考えれば考えるほど鬱なるわ」テクテク


(´・ω・`)

「ん、記憶違いかな?ここは空き地やったはず・・・。こんな所にお店なんてあったっけ?何々、今昔こんじゃく骨董品店[あなたの欲しい物必ず見つかります]か。なんか興味湧くなぁ」


(´・ω・`)

「入ってみよ」ウィーン


(´・ω・`)

キョロキョロ「ふぅーん、武士の刀に鎧一式、香水に使い古したフライパン、潜水艦のおもちゃと昔のテレビ・・・全く規則性がないな」


(ΦωΦ)

「いらっしゃいませ」ヒョイ


(´・ω・`)

「わっ!びっくりした。おばあちゃん、おるなら言ってよ」


(ΦωΦ)

「申し訳ございません。お兄さんがあまりにも真剣に物色しておりましたから・・・」


(´・ω・`)

「まぁ確かにこういうお店入ったことなかったからマジマジと見てもたわ。ちなみにおばあちゃん、表の看板に書いてあった[あなたの欲しい物必ず見つかります]って何や?」


(ΦωΦ)

「はい、こちらの骨董品店ではお客様が欲しいものに必ずめぐり逢うのです。今まで来店されたお客様は皆様全員満足して帰られました」ペコリ


(´・ω・`)

「ホンマかいな」


(ΦωΦ)

「本当でございます。では早速ですがお客様、目を閉じて両手を前へ」


(´・ω・`)

「こうか?」


(ΦωΦ)

「よろしい。では初めに触れた物を掴んでください。それがあなたが今一番欲しい物でございます」


(´・ω・`)

「んーーーーー」ゴソゴソ「おっ今触れたこれやな。よっと」


(´・ω・`)

「これは壺か・・・。うーん、取手が片方しかついてないし、おまけになんやこれ表面に目と大きな口が描いてあるな。ニンマリ笑って不気味な壺やで」


(ΦωΦ)

「これはこれはお客様お目が高い。こちらは強欲な壺と申します。代々名のある大富豪の家庭を渡り歩いておりまして、この壺を持つものはありとあらゆる欲望が叶えられるという噂がございます」


(´・ω・`)

「ふーん。こんな気味悪い壺がね。でもなんか見慣れてきたらキモかわいいって感じやな」


(´・ω・`)

「気に入ったで。買うわ。いくらや」


(ΦωΦ)

「お代は結構でございます。そのままお持ち帰りくださいませ」ペコリ


(´・ω・`)

「えっ、なんでや」ビックリ


(ΦωΦ)

「この年老いた老い先短いババァめは善行を信じております。善を他者に施せば巡り巡って自らに還ってくる。こうして善を積めば天国にもいける手筈でございます」


(´・ω・`)

「朝早く道端のゴミを拾って歩いてるおっちゃんみたいな感じか・・・。俺にはマネできんで」


(´・ω・`)

「わかった。ありがたく頂戴するわ。タダはなんでもありがたいからな!!」


(ΦωΦ)

「ありがとうございます。またお越しくださいませ」ペコリ


🏠🏠🏠


(´・ω・`)

「ふぅ、やっぱ自分の部屋は落ち着くわ。母さんが飯の準備してくれとうからそれまで暇潰すか」


(´・ω・`)

「さてとスマホ、スマホと・・・」ゴロゴロ


(´・ω・`)

「えっ、エルデンリング世界累計出荷本数1200万本かよ!!すごいなぁ、えぇなぁ、PS5手に入らんから諦めとったけど、評価も高いしレビューもいいし、めっちゃ欲しいわ。けどそんなお金ないしなぁ」


🏺

「・・・差し出せ」


(´・ω・`)

「ん、なんや今の声がせんかったか?」キョロキョロ


🏺

「所望するならば対価を差し出せ」


(´・ω・`)

「ん?えっ、つ・・壺が喋っとる!!」ガクガクブルブル


🏺

「汝は何を欲する?」


(´・ω・`)

ガクガクブルブル


🏺

「・・・話を聞け!!」カッ!!


(´・ω・`)

「な・なんやお前は?」


🏺

「我は強欲な壺。汝の所望するものを吐き出す壺。ただし引き換えに対価を頂く」


(´・ω・`)

「・・・対価ってなんや?」


🏺

「自分が自分であることの証明を頂く。それは己が己たる所以ゆえん。存在意義や自我を形成してきたもの。それは記憶であり、思い出であり、経験である」


(´・ω・`)

「・・・なんのこっちゃわからんわ。ゴメンな学力なくて」


🏺

「・・・PS5とエルデンリングなるものが欲しいのであろう?」


(´・ω・`)

「めっちゃ欲しい」


🏺

「では汝が思うこの世で一番美味い食べ物を捧げろ。それで叶う」


(´・ω・`)

「一番美味いか・・・。何やろそれって寿司?天ぷら?お好み焼き?急にそんなこと言われたらムズいな」


(*´ω`*)

「そろそろご飯できるよー」


(´・ω・`)

「母さんが階下から叫んでるわ。あっ、そういえば今日のおかずはたしか・・」


(*´ω`*)

「今日も塾で頑張っているからできたての料理を用意するわよ。私に学力がないから息子には一流大学に行ってほしいわ。そのためにはまず何よりも栄養、栄養よ」


(´・ω・`)

「母さんの作る唐揚げのつまみ食いは最高やで」ヒョイパク


(´・ω・`)

「なんぼでもいける!これが俺の思う世界で一番美味い食べ物やでーーー。たまらんわ」パクパク


(*´ω`*)

「あっ、こら!!行儀が悪い!!」


(´・ω・`)

「へっへー、めんごめんごやで」タッタッタ-


(´・ω・`)

「つまみ食いで食べる唐揚げ。これが俺の思う世界で一番美味い食べ物や!!」


🏺

「・・・・・・。よかろう。一番美味い食べ物、つまみ食いの唐揚げ。確かに頂いた。では汝、壺の中に手を入れろ」


(´・ω・`)

「ん、こうか・・・」ゴソゴソ「あっ!!嘘やろ!!PS5とエルデンリングやん!!」


🏺

「等価交換が基本である。汝がそれと見合うものを差し出せば我は汝の所望するものを差し出す」


(´・ω・`)

「(これはひょっとしたらとんでもないものを手に入れたんやないか・・・)」


(´・ω・`)

「まぁええわ。早速プレイするでぇ。勉強なんかそっちのけや!!」


🏺

「・・・・・・」


続く



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