走馬灯のその先に
ボコっと音がし、左肩に痛みが走った。
その痛みで今直面している現実に戻らされた。
ゴブリンが左肩に棍棒を叩きつけている。
スキル解放の儀を行なっていたはずの神父は血まみれで倒れており、武器を持った兵士達の5倍以上のゴブリンが部屋にいた。
私の目の前にもゴブリンが2体いて、1体は左肩に棍棒を叩きつけ、もう一体は剣を私の顔に刺そうとしている。
なんとか顔を逸らしたがまた1体現れて蹴飛ばされた。
全身が酷く痛い、動いている兵士の数も少なくなってきた。
さっきまで親友と会っていたのに。
一体ここは何処なのか?
もしかして異世界に転生したのか?
そんなことばかり考えてしまう。
ダメだ、まずはここから逃げないと‼︎
そう思い、ボロボロの体をなんとか動かす、立ち上がり辺りを見回すと5台以上のゴブリンに囲まれてしまった。
ゴブリン達は奇声を上げながら私と一定の距離を保っている。
「ギャー!!」
一匹のゴブリンが叫ぶと一斉に襲いかかってくる。
咄嗟に落ちていた剣で顔を守る。
「ドン」っと何かがぶつかる音がする。
体に衝撃が来ない、恐る恐る目を開けるとゴブリンが私との間にある何かにぶつかっているようだ。
しかしそのものは透明で見えないがゴブリンのぶつかり方からすると私の周りに見えない壁のようなものがあるような感覚だ。
「ヤヌス神よ我らが同胞を守りたまえ!」
部屋の外から声が聞こえると、戦っている兵士の周りにも透明な壁ができたように感じた。
「そこから動かないで下さい‼︎
敵を一掃します‼︎」
透き通った女性の声が聞こえた、なにが起こるのか予想もつかない。
「風の神アイオロスよ、我に力を!」
その途端凄まじい風が透明の壁の外に吹き荒れる。
最初は踏ん張っていたゴブリン達だが、部屋そのものが壊れ、吹き飛ぶほどの突風に耐えきれずゴブリン達もどこかへ吹き飛んで行ってしまった。
「お前はいつもやりすぎなんだよ」
低い、渋い声が聞こえる、声のする方を向くと、高身長で体格のいい、髭の長い男性が立っていた。
横にはメガネをかけた黒髪の女性と、横に立つ男性と同じくらい背の高い金髪の女性がいる。
3人とも軍服のような服を着ているが、腕には王冠と剣を表すようなバッチをしている。
「大丈夫だったか?
私はギリス、このルーデン王国特別攻撃隊の隊長をしている。この金髪はマリン、黒髪の方はツムギだ。」
挨拶をしている間に周りから魔物が居なくなってきた、代わりにギリスと同じバッチをした兵士が増えてきた、その兵士たちは他の兵士達とは違い、なにか呪文のようなものを唱え、炎や氷などを出現させて戦っていた。
まるで魔法のようだった。
ツバサはギリスに尋ねた。
「ギリスさんここはどこなのですか?
あの魔物はなんですか?
元の世界に戻れますか?」
矢継ぎ早に質問を繰り出す私の顔をじっと見つめギリスは真剣な顔で答えた。
「君の疑問はもっともだよ。
質問に答えよう、ただ怪我もしていることだから治療しながら安全な場所に行こう。」
私は頷きギリス達についていく。
さあ中へ、そう言われてたどり着いた先は城だった。
異世界に転生したら親友が魔王の一人だった @zuch
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